オーストラリアで生活していると、文化の違いをいろいろな場面で感じます。それはただ街中を歩いている時だったり、スーパーで買い物をしている時だったりもしますが、学校の友達やバスでたまたま隣に座ったオージーなど、現地の人と英語でコミュニケーションを取っている時に感じることが多いです。
現地の文化を背景に、英語的な発想の言い回しを聞くと、「ことば」は面白いものだなぁと思います。同時に、オーストラリアで生活することで日本語がいかに自分の文化に影響しているか肌で感じています。
言葉好きが高じて、最近日本語ラップにはまりました。きっかけはたまたま見た「高校生RAP選手権」だったのですが、それから日本語ラップや即興でラップの技術を競い合うフリースタイルラップバトルなどを動画でよく見るようになりました。
ヒップホップの発祥は1970年前半と比較的新しい文化(音楽)ですが、ここ数年で日本のヒップホップシーンはかなり盛り上がっているようですね。確かに、思想が濃く表れたヒップホップらしいメッセージ性の強いラップもカッコいいのですが、長い言葉で韻を踏んでいたり、ダブルミーニング、トリプルミーニングにしたりして歌う言葉遊び的要素が強いラップが私は好きです。特にフリースタイルでは、相手の言葉を受けて返す即興性や、言葉のチョイスに見られる知性に感心してしまいます。
そこで思い出したのが、語学学校で勉強していた時にオージーの先生から言われた「That’s easy peasy Japanesey!(そんなの超簡単だよ!)」ということば。授業のあと、何か質問しに行った時に言われたフレーズでした。「easy(イージー)」の部分で2回同じ韻を踏んでいるのですが、私が日本人だから「Japanesey」をつけたのかと思ったら特に意味は無いようで、「easy peasy Japanesey」でひとつの慣用句みたいなものなんだとか。
まぁ、確かに私は日本人だからダブルミーニングのようにもしたのかも。面白くなって「crazy…creepy…kiwi…」と、先生と一緒に「イージー」で韻が踏めるいろいろな単語を言い合ったのを覚えています。
英語でも日本語でも、韻を踏むのって楽しくて気持ちいいですよね。ラップバトルを見ていても、皮肉を込めたり、相手の言葉に意味をかぶせたり、自分のバックグラウンドを盛り込んだりしたパンチラインを聞くと、さらにワクワクしてしまいます。
ただ同じ母音の言葉を並べるだけだったらAIの方が得意なのかもしれませんが、文化と言葉が結びついて生まれるフレーズの美しさとか粋な感じは人間にしか出せないんじゃないでしょうか。オーストラリア人がこれを言うから盛り上がったり、日本人の私がこれを言うから意味があったり。
オーストラリアという英語圏で生活していると、言語的なディスアドバンテージから私はいいやと口をつぐんでしまったり、うまく前に出れないことがあります。でもオージーの文化を経験しながら英語が勉強できる環境で、私も自分の文化をもとに生まれる言葉でうまくコミュニケーションをしていきたいです。
まずは、あの早い英語のラップを聞き取れるようになるところから始めたいと思います。
文・村上紗英