オージーの強さPART2 (PART1を見られてない方はこちらから)
「あっらー、大変だったわねぇ・・・ あなた大丈夫?」と、この会話を終了させるべく、何か別の話を切り出そうとしてみたが、「話はこれからなんだけどねー」と、あっさり切り替えされ、話は続けられた。
「おかげでさー、会社休んで、余計なシックリーブまで使うことになってさー、えらい損したわよー!責任取るべきだと思わないー?」と彼女の鼻息はますます荒さを増し、マフラーをギュッと絞めなおしながら私は「まぁねぇー・・・」と、とても中途半端に答えると 「それで文句言いに行ったのよ、この間Wにー、おたくのチキンで食中毒にあたって、ひどい目にあったってー!」
彼女に言わせると、最初はお店の人も「うちのチキンであたったって、ちゃんとクックしましたぁ・・・?」と悲観的だったらしいのだが、どうやら彼女の鼻息に負けたのか、「結局ねー、裏からハゲのお偉いさんが出てきて、謝ってくれたわー ふんっ!」とまるで勝ち誇った朝青龍のように胸を張って、グイッと勢い良く3杯目を飲み干した。
「それでねー・・・」 どうやらまだ続きがあるようだ。 ここまでくれば水溜りにはまるのもプールにはまるのも同じような勢いで、ふんふんと話を聞いてみると、彼女は変なチキンのおかげで”余計なシックリーブを使わなければいけなかった事”に納得できなかったらしく、Wのお偉いさんが彼女の職場にシックリーブ分の時給を支払い、彼女の職場に一日分のシックリーブ消化を取り消しにさせたというのだから、これまた驚かされた。
どのようなやりとりが、Wのお偉いさんと彼女の職場のボスとで交わされたのかは謎だが、「あっらー、お宅もやられましたか・・?「うちも彼女には何度もやられましてぇ・・・」あたりが妥当であろう。
”さ、さすがオージー・・・・ 強すぎっ・・・”などと感心している間もなく、カウンターでジェニーは「ちょっとこれ泡おおくなーい?もぉーーっ・・」とビールグラスの底をカウンターにガンガンとカウンターにたたきつけ、泡の量を減らそうとしていた。 そんな彼女の姿はまるで、”ビール発泡増量反対運動”でもしているプロテストのようだった。
ジェニーはそんな私をよそに巨大なステーキサンドイッチをぺロリと食いらげた。
彼女がたった数日前に起こしたのは食中毒だったのか、それとも今記事PART1で説明したような”食中毒=食欲旺盛でどうしようもない症状”なのか、ますます困惑させられたが、4杯目のビールまでもグイッといくと、さっさとビールカウンターに向かっていった。
まるで食中毒の毒素をビールで洗い流すように5杯目を喉に流し込むと、「じゃ、そろそろいく?私今日こっちから帰るわ」とジェニーはいつもとは逆の方向に指を指した。
”まさかビール5杯飲んだ後にデートはないだろう・・”とは思いながらも「まさか、デートでもあるんじゃないでしょーねー?」などと一応尋ねてみたら、「違うわよー!Wに行ってくるわ!この間の食中毒の件で、チキン代のリファウンドとただのチキン一個もらえるって約束したんだもーん!イェーーイ!バーイ!!だははははーーっ!」と豪快に笑いながら私の肩をバシッと叩き、Wの方向へとさっそうと向かっていった。
そんなジェニーの後姿は、来たときに比べて、こころなしかいつもより強く・たくましく見えた。 完
♦シドニークリエイティブフォトグラフィー♦
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