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奴隷はいかが? パート3

♦奴隷はいかが? パート3♦

「こ、殺される・・・・」と瞬時に思ったらしいが、足に重りはつけられてはいないものの、パンツ一丁で手を後ろに縛られていた彼は、ナイトクラブのお立ち台のようなものに乗せられたかとおもうと、彼のパスポート多少の現金、そして彼の服と靴をお立ち台の前に投げ捨てられ、観衆による品定めが始まったというのだ。

彼の横では、すでにアジア系の男の子のセリがかけられていて、色々な色のふだを持った売人達が、セリ人に向かって大きな声で叫んでいるというのだ。 
その時に初めてM君”ストックマーケット”ならぬ”ヒューマンマーケット”のセリ物(者)として、連れて来られた事がわかったと言う。 どうやらセリ物(者)が若かったり、パスポートがあると高く売れるようで、M君より前に到着していたアジア系の若い男性は最高値で購入されたのか、セリ人の赤いふだが高々あがったと思うと、すぐさま足に重りとクサリをはめられ、いかにも金持ちで悪そうなおっさんに引き渡されたらしいのだ。 落札終了である。

そんな姿を真横に見た彼は、心臓が止まる思いで逃げ出す方法をいろいろと考えたが、そんな機会は全く無くM君のオークションが始まってしまった。
”ジャパニーズ!!ジャパニーズ!!””パスポート!!”と言う叫びが何度もセリ人から発され、売人達がまじまじとM君の顔や体つき、パスポート、衣類を品定めし始めた。

それから15分ほど経過し、「もうだめだ・・・・・・」とあきらめの念が入った彼だったが、厳しい売人の顔つきの中、セリ人の右手に緑の札が高々とあがり、細身で片目のオヤジが両手を高々と上げ、ヤッターのポーズをした。 どうやら落札してしまったようだった。

その瞬間、先程の6人の男M君をお立ち台から突き落とすように引き倒すと、片目のおやじはM君のパスポートと多少の現金、衣類と靴を抱え、M君にゆっくりと近寄って来たかと思うと、何か捨てゼリフを残して消えていったというのだ。

どうやら落札は、M君の所持品だけだったようで、M君は売れ残ってしまったというのだ。
とても不思議な気持ちではあるが、価値の無かった自分に感謝しながら、パンツ一丁で来た道を一時間以上ひたすら走り助けを求め、やっとのことで民家に逃げ込み、数時間してやっと警察官が一人自転車に乗ってやってきたというのだ。

”パンツ一丁の日本人が訳のわからないことを言ってる・・・”くらいにしか思われなかっただろうが、数時間後無事にホテルに到着し、一命を取り留めたというのだ。

後でわかった話だが、貧富の激しいスリランカでは人身売買が盛んらしく、マーケットで落札されたセリ物(者)は、金持ちスリランカ人宅の”奴隷”として、一生生涯を送る事になるというのが最も一般的だというのだから、これには私も驚いた。

こうしてM君は、なんとか無事に初フライトを終え、なんとかドバイに戻る事が出来たのだ。

現在彼はこのストーリーを基に執筆活動を始め、物書きの宝くじと言われている”印税生活”を狙っているという話を友人Jから聞いた。 自伝ではなくとも、彼のストーリーの全てをこの場で書き下ろしてしまった私を”盗作犯”としてマーケットに売り出さないことを祈るばかりである。 (完)

♦シドニークリエイティブフォトグラフィー♦
http://www.sydneyphoto.com.au/jp/

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