文面には挙式当日の流れが事細かく記載されていて、”朝ご飯はフルーツサラダのキウィ抜き”とまで書いてあった。

私はフォトグラファーではあるが、シェフでは無いのでキウィの話をされても困ってしまうのだが、挙式当日の時間割が１５分毎に記載されていて、”１０：１５分排便終了→１０時３０分下着着用完了”とご丁寧に下着装着完了時間まで記載されていたのには、さすがの私も驚いた。

そういった内容が夜中の１２時まで記載されていて、それにとどまることなく写真一枚とワードドキュメントが一つ添付してあった。

”とりあえず写真を見てみるか”と何気なく開けてみると、世界一の美女ともたたえられているスーパーモデルクローディアシファが、タイトなウェディングドレスをまとい、扇風機に吹かれてか長い髪は吹き乱れるように立ち上がっていて、そんな彼女が黒ヒョウの上に寝そべりながら悩ましい笑みを浮かべているのであった。

今まで数々のウェディングを撮影してきたけれども、動物が登場したのは白馬ぐらいで、黒ヒョウは未だにお目にかかったことがない私は、”あらまぁ、どうやって黒ヒョウさんを連れてくるのかねこの人は・・・”と一瞬呆然とした。

例え彼女のお父様がタロンガズーの社長さんであったとしても、ハンタバレーの教会に黒ヒョウさんが登場する事はないだろう事に気付いた大人の私は、胸をほっと撫で下ろした。

気を取り直して、今度はワードドキュメントを開いてみる事にした。

何だか嫌な予感はしたのだが、開けてみると４ページにもつながっているではないか。その瞬間に意気消沈した私は恐る恐る読んでみる事にした。

そこには"Katsu’s Schedule"と記載されていて、見覚えのある１５分毎のスケジュールが記載されているようであった。　その瞬間、気絶をしかけたが、かろうじて気を取り戻した私はよーく内容を見てみると、１５分どころか５分刻みになっていて、メール文面の彼女のスケジュールにあわせながら私が動けるように、対になった表が作成されていたのである。　

今度こそ気絶しかけたが、それでも何とか持ちなおし”恐怖の５分スケジュール攻撃”とにらめっこしていた。

彼女の５分攻撃によると、私がトイレに行く時間まで決められていて、万が一、私が大をもよをしてしまう可能性を察したのか、１１時間の撮影の中で、一回だけ１０分のトイレ時間が与えられていて、あとは全て５分なのには戸塚ヨットスクールの社長さんもビックリである。

他にも、夕方１７時４５分から５５分の間は、”Geting Changed"と記載されていて、どうやら私が朝から撮影して汗だくになっている可能性があることに気を使って頂いて、"お着替えタイム”まで儲けていただいた。　

私はダイアナロスや美川憲一ではないので、通常挙式当日にお着替えは催行しないのだが、その間にボーっとしていると”Oi! You gotta get changed now!!"などと罵声を飛ばされても嫌なので、一応着替えのティーシャツを持っていく事にした。

他にも、”私が食事をしているときは、右側からの横顔を取らないで欲しいの・・・”とまるでマライアキャリーかナオミキャンベルのような注意書きまで付けられていて、挙式当日に電話の受話器などで殴られては困るので、「出来るだけ頑張ります・・・・」とだけ書いて返信のボタンを押したのである。