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独身男性の叩き売り

♦独身男性の叩き売り♦

今から10年以上前の話にはなるが、私がシドニーに来た当時は、まだ20代前半のピチピチ青年であった。

そんなピチピチな私であるのに、職業柄のイメージからか”ご結婚されているのですか?”などと尋ねられる事が多かったのを先日ふと思い出した。

そんな質問を受けた私は、一瞬の間もおかずに、”いえいえー、とーんでもありませーん!そんなのまだまだですよぉー!!”と、とても大げさに否定していたものである。

私にとっての結婚は、”大人の行事”だと思っていたので、20代前半の私にはとても受け入れる事が出来ず、”私は若いのですよ!”という私の主張でもあったといえよう。

そんな私は独身ライフがその後も10年以上が過ぎ、近頃例の質問をされなくなった事にふと気づき、油断をしていたある日の事である。

先日、日本人カップルのウェディング撮影をさせて頂いたのだが、新婦さんのご両親と日本から来られたゲストの方の車に同乗させて頂き、教会からレセプションパーティーに向かっている車中で、新婦さんのお母様にこう尋ねられた。

「Katsuさんは、何人お子様いらっしゃるのー? ハーフのお子さん可愛いでしょうねぇー”」

「へっ・・・・? はっ・・・ へ・・?” ”こ、こども、いないんですよぉ・・」 ”っていうか、結婚もしてないし、質問一個飛ばしてるし・・・”

「あらそぉーなのー?奥様はオーストラリアのかたぁー?」

”ひぃーーーっ!しつこい・・・” 「いいえぇ、まだ独身なんですよぉー」

「あらーーっ・・・・ オーストラリアじゃなかなか出会いがないのかしらねぇ・・ 人口少ないものねぇ・・・ うちのいとこの○○ちゃんはどうかしらー」

”ううぅーー、オーストラリアの人口比率と私の結婚はあまり関係が無さそうな・・・・ それもなんだか可愛そうな人と思われてるし・・・・・・”

「この仕事をしてると、逆に結婚に興味がなくなるのかも知れないですねぇー、ふふふー」 と、とりあえずその場をしのいだ私は丁度いいタイミングでパーティー会場に到着したので、車をおりた。

その瞬間、新婦のお母さんは大声でこう叫んだ。 「ちょっとぉー!○○ちゃーーーん!カメラマンのこの方ー 独身なんだってーーー!!!!ちょっとこっちおいでーー!」

”ひぃぃぃぃぃーーーーっ!” なんだかこれでは閉店間際のバナナの叩き売りである。 

まるで真っ黒でフニャフニャのバナナ気分な私は、「で、では撮影つづけますので・・・」と、とても複雑な気持ちで撮影を続けたのである。

なんだ姥捨て山に向かう老婆のような、または踏み絵を踏まされるキリスト教徒、それとも日曜日の夕方5時前のパディーズマーケットあたりで売られている真っ黒なエビのような気持ちになった私は、こうして歳を重ねる厳しさを身にしみたのである。(本ブログ記載内容はカップルからの同意を得て掲載しております。また写真の人物と本ブログは関わりがございませんのでご了承下さい)

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