こちら、オーストラリアに住んでいると、バロッサ・ヴァレーのシラーズの迫力に驚いたり、魅力的なマーガレット・リヴァーのカベルネ・ソーヴィニヨンに出会ったり、はたまた、可憐な一輪の花を思い起こさせるようなタスマニアのリースリングだったりと、身近に様々なOZワインのその個性を堪能することが出来ます。
私自身、ホリデーで日本に帰ったときは違うワイン(オーストラリア、ニュージーランド以外のワイン)を飲もうというのは当然のごとく。日頃飲む機会が少ないヨーロッパのワインを飲みたい気持ちが山ほどありますが、それよりもなぜか(日本人だからなのか)日本酒や焼酎を飲みたいという気持ちの方がどんどん沸いて出てきて、結局飲みたいリストのワインは次回持ち越しとなるのです。
その選択は私にとってはいい事。なぜなら、今まで散々いろんなワインを飲んできたけれど、日本酒を飲む機会がほとんどなかったのです。日本人のソムリエだから日本酒は知ってるでしょ、みたいな質問を投げられた事も何度かありますし・・・。まだまだ、お酒の勉強は続きます。
そして、昨夜、新たな課題が私に生まれました。
“今度日本に帰ったら、日本酒や焼酎もいいけど、絶対日本のワインを飲もう”
と、そういう気持ちにさせられる機会に巡り合えたのです。
“Grace Wine”。
オペラ・ハウスを含めサーキュラ・キーを一望できる“Yuki’s”で、開かれたワイン・セミナーにはOZを代表するワイン・ライター、ディストリビューターをはじめ、日系企業の方々が招待されました。グレイス・ワイン(山梨県勝沼)のワイン・メーカー(醸造家)の三澤彩菜さんをホストに、ワイン・ライターのデニス・ギャスティン氏がワインのコメントや土壌の説明等を加えてテイスティング、そして我らが“料理とワインの会”のメンバーの古江氏がオーガナイザー。
心地よく酔えたのは言うまでもありません。
さて、テイスティング・・・、
2007 グレイス 甲州 Grace Koshu
ピュアーで透明感のあるワイン。シトラス、ライム、洋梨、夏みかん、そして清らかなエルダー・フラワーの香りに爽快感があります。整然としたミネラルとフレッシュでやさしい果実味は軽やかに仕上がっていて、すっきりと広がっていく余韻は魅力的。知的で細身の甲州かなぁ。
2007 グレイス 茅が岳 Grace Kayagatake
上質のミュスカデ(フランスのロワール地方の白ワイン)を思わせる生き生きとした力を持った魅力的なワイン。ミネラル、シトラス、エルダー・フラワー、フリージア、柿の葉の香りに心地よさを感じ、ヘーゼルナッツやヌガーの香りが厚みを与えてくれます。しっかりとしたミネラルが安定した味わいを形成していて、余韻も清潔で長い。
2007 甲州プライベート・リザーブ 鳥居平畑 Private Reserve Koshu Toriibira Vineyard
豊富なミネラルと透明感のあるきれいな酸、そしてややふっくらした印象。全体的なバランスがよく、複雑だけれど、上品にまとめられた味わいは、チャーミングにも感じられるのです。マンダリン、ミネラル、ビワの葉、フェンネル、ヴァニラの香りが特徴。
2007 グレイス・シャルドネ Grace Chardonnay
ミネラル、アーモンド、栗のタルト、黄桃のコンポート、ヴァニラ、アニスの複雑な香り。やわらかい質感で、深みがあります。同時に芯の部分に精密なミネラルの構造を感じられ、上品な酸と共に長いフィニッシュを迎えられるのです。
2008 グレイス 甲斐ノワール Grace Kai Noir
やまぶどう、赤スグリ、ザクロ、ブラック・ペッパー、ねずの実、甘草、板チョコ、なめし皮、獣臭の繊細で複雑な香り群。酸がきれいにすっきりと伸び、フレッシュな果実味とスパシーな味わいが好ましいバランス感を形成しています。そして長い余韻もぶれず、最後までそれらのフレーバーを楽しむことができるのです。
2006 グレイス メルロ Grace Merlot
なめらかでやさしい質感で、おいしいワイン。凝縮感のある甘い果実味が漂い、ソフトなタンニン、すっきりと伸びる酸が、その存在感をアピールします。プラム、カシス、ブラックベリー、アニス、ブラック・オリーブ、なめし皮、土、黒トリュフの香りがいい。完成度が高いワインです。
今回の料理は、
前菜5点盛り
タスマニア産の牡蠣、土佐酢のゼリー
栗南瓜の含煮
親子巻
海老しんじょのアーモンド揚げ
鯖の手綱寿司
茶碗蒸し
お造りの盛り合わせ
くえの昆布じめ、梅銀餡、茸添え
鴨のローストと風呂吹き大根、八丁味噌ソース
和牛のサーロインの網目焼き 柚子胡椒風味
白胡麻のブランマンジェ
このテイスティング・コース、ホント美味しく頂きました。Grace Wineと非常に良いマッチングだったのです。全体的に甲州プライベート・リザーブ鳥居平畑が今回の料理に合わせやすいワインでした。
個人的には、牡蠣と‘茅が岳’、クエの昆布じめと‘甲州’などのマッチングが好きだし、和牛サーロインだと、レモンと‘プライベート・リザーブ’、ガーリックと‘メルロ’、マレー・リヴァー・ソルトと‘シャルドネ’、大根おろしとポン酢で頂く‘茅が岳’など、同じ料理でも付けるソース等を変えて違う味わいのワインを楽しむことができました。
ちなみにこのテイスティング(デギュスタッション)・コースは予約のみ注文することができるそうなので、ぜひ、今度召し上がってみては。ワインと一緒に楽しんでみましょうよ。残念ながら、Grace Wineは無いですが・・・。
三澤彩菜さん本当にありがとうございました。改めて日本のワインを誇らしく思えました。デニス・ギャステンさん、日本のワインの知識に脱帽です。これからも日本のワインとの架け橋になってください。シェフの加藤さんはじめYuki’sのスタッフの方、素晴らしい料理とサーヴィスありがとう。そして古江さん、今回のセミナーのサポートご苦労様でした。
Grace Wineがオーストラリアの市場に出たときは、胸張ってお勧めしたいですね。
中央葡萄酒(グレイス・ワイン) www.grace-wine.jp