♦オーストラリアで見れないもの♦
先日、東京で雑誌の撮影が終了したあと、”オーストラリアでは見れないすごいものがありますので、ご案内します。“ と、プロダクションコーディネーターの山中さんがおっしゃっるので、私とアシスタントのアシュリーは観光気分で連れていただく事になった。
私達は、早速山中さんの車に乗り込み、早速現地に向かって出発した。
移動中の車内では、”オーストラリアで見れない、すごいものって一体何だろうねぇ? わくわくするねぇー。 でもメイドカフェだったらテレビで見たけど、山中さんががっかりするといけないから、そのときは知らない振りして、驚いたことにしたほうがいいかもね。” と、私とアシュリーは一応気を使うことにした。
“それにしても、何を見せてもらえるんでしょうねぇー、んーーっ・・・ お昼時だから、もしかしてタコの踊り食い大会か、納豆バイキングあたりかもね・・・ いひひひー・・・” 意地悪じいさんこと、私の発言である。
アシュリーは、大のタコ&納豆嫌いである。 テレビでタコの映像を見るだけでも、吐き気がすると言うのだから、余程嫌いなのであろう。 次回はぜひ大阪の、“大タコ焼き”にお連れしたいものである。
そんな意地悪じいさんに彼は、こう反撃した。
“いやぁー、きっとキュウリの惣菜バイキングですよー、世界中のキュウリがウヨウヨしていて、最後にはキュウリのモンスターからキスが貰えるツアーじゃないですか?”
当初アシスタントとしてお手伝いしていた彼だと、“ひぃぃぃーー、そ、そ、そんな事言わないで下さいよぉー・・・、もーカツさんは意地悪だなぁー・・・・”などと言うのだろうが、人というのは月日が経てばこんなもんである。
そうこうしている間に、“着きましたよー!”という山中さんの一声で館内の地下にある駐車場に車を停め、エレベーターで現場に向かった。
どうやら、ここは六本木付近のようである。 何だかハイソなパン屋さんや、高級そうな食器屋さん、私の服よりも高そうなペットの服屋さんなどが並び、そこの一角にその店はあった。
“ここです、ここにすごいものがあるんです。”
山中さんは、まるで私達を脅すかのように、ゆっくりと店内に入り、私とアシュリーも山中さんに続いた。
店内はまるで高級そうなホテルのロビーのように装飾され、お店の真ん中には大きな生け花が飾ってあって、店内を見渡すと、普段私が購入しているパディーズマーケットで購入している果物とは、似ても似つかないフルーツ様達が綺麗に陳列されていた。
まるで世界で1つの限定ベネチアグラスでも扱うように、丁寧にラッピングされているパパイヤ様や、テマリの様に大きく、鮮やかな朱色のリンゴ様、そして上品な糸目模様と立派な茎がT字になったマスクメロン様が、お坊様の座布団のようなものに乗せられ、ガラスのケースに入って、飾られていた。
いつものように、“パパイヤかー・・” とか、“メロンだ!”などと呼ぶにはあまりにも失礼な気品と風格のフルーツ様が綺麗に陳列されていて、その気品の良さに、うっかり一瞬手を合わせて、お辞儀をしそうになった程である。
“ひぃぃーーーっ!な、なんですか?このメロンはー? あんな座布団に座って、ガラスのケース内で、スポットライトまで浴びてるじゃないですかー!”
シドニー生活が長いとはいえ、こんな気品の高いメロンを拝見したは初めてだったので、さすがの私も驚いた。 見た目は皇室の雅子様がメロンに変身されて、ガラスケースに収められたような風貌である。
“OH MY GOD!!と一声をあげたかと思うと、早速カメラを取り出したのは、アシュリーである。
“メロンなのにあんなクッションに座ってるなんてー! このメロンは、メロン業界のダライ・ラマですか? “ 彼はそう言って山中さんを困惑させた。 オージーらしいコメントである。
“ダライ・ラマかはわかりませんが、このお店の中にあるメロンの中で最高峰(級)のメロンで、7万円だそうです。“ 山中さんはあっさりそう言った。
“な、な、な、なな、7万えーーーーーーん!!!!!!! ひいいいぃぃぃぃぃいーーっ! そ、そ、そんなメロンあるんですかぁーーー???”
まるで高級雛人形かのように祭られたガラスケース内の高級メロン様には、”70,000円”と刻印された金色のプレートがおいてあって、いかにも高級そうに見えた。
こうして私とアシュリーは、山中さんに期待通りのリアクションを見せ、店員さんに”見込み客“でない事をお知らせして、店を出たのである。
“すごかったねぇー、あのメロン様! まるでメロン界の黄門様だねぇ、あんな座布団にすわってさー。 あんな風に祭られてるメロンを食べてしまったら、罰が当たりそうだから、食べない方がいいかもねぇ・・・。
私がそいういうと、山中さんもこう続けた。
“そ、そうですねぇ・・・。 あんな素敵なメロン様を食べるなんて、失礼かもしれないですねぇ。 見てるだけのほうが良いのかもしれないですね、きっと。”
そんな大人の私達に、アシュレーはこう言った。
“でも、もしあのメロン様を誰かにプレゼントされたら、どうですか?”
“へ・・・・・・・・・・・・・。”
一瞬にして私と山中さんの間で冷たい沈黙が流れ、自分の気持ちに嘘をつけない事を静かに確認したのだった。
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