♦ヒョウと紀州犬との出会い♦

先日友人のあゆみちゃんの誕生日パーティーに呼ばれた時である。

前夜に飲んだワインのおかげで、いつも以上に腫れぼったい目を

した私は、 “今起きました・・。” と言わんばかりの格好で参加させて頂いた。

友人の自宅が近いというのは、便利だけども危険なのだ。

そんな私を見慣れてか、あゆみちゃんは特に何のコメントも無く

ビールを差し出しながら、彼女の友人クラウディオさんを紹介

してくれた。

クラウディオさんは長身の男性で、イタリアでミラノコレクションなどをつとめるファッションモデルをやっているらしく、

イタリア在住のイタリア人だという。

まるでフォトショップで完全加工されたかのような綺麗なお顔とスタイルは、D&Gだかグッチだかの

香水のポスターからうっかり飛び出してきてしまったような容貌である。

“あらまぁーー、なんだかすごいねぇー　何がすごいんだかわからないけど、すごいねぇー　

何だか人じゃないみたいですねぇー”　

と南蛮人を始めてみた江戸職人のようにポッカリ口をあけて彼をみあげた私に、

あゆみちゃんはこう言った。

“んーー、そうねぇ。　人じゃないみたいかどうかはわからないけど、確かにあんたの横に立ったら、同じ人とは思えないかもねぇ・・。　まるでヒョウと紀州犬みたいねぇ・・”と、思ったままの事を私に

伝えてくれた。

彼女の長所が“正直者である”という事は以前から知っていたが、ヒョウと紀州犬なんて具体的な

例を案内された私も情けない。

それによく考えてみたら、ヒョウは猫科で紀州犬は犬じゃないか。

共通点は同じ動物くらいなもので、全く違う種類の動物で比べるなんて、ずるいじゃないか。　

私は“ぐぅーーっ・・・”とうなだれたが、確かにクラウデイォさんの小さな四角いお顔と、

綺麗に揃った真っ白な歯、そして体育座りが困難そうな長い足に、エメラルドような緑のお目目は、

異国人を超えて異星人にもみえたし、サバンナのヒョウがうっかり人に化けたようにも見えた。

そんな私達をよそに、あゆみちゃんは“Ｊａｐａｎｅｓｅ　Ｂｅａｎｓ”とクラウディオさんに枝豆差し出した。　

そんなクラウディオさんは、何も疑うことなく、枝豆を１つ手に取り、皮ごと口に放り込んだ。

“あっ！！！！”　

皆がそう思った時には既に遅し、彼は枝豆を吐き出し、“こんなの固くて食べれないよぉ・・・”　

みたいなことを言って、ペッペと吐き出した。

そんな彼は、間違って自分の尻尾を食べたヒョウの姿に似ていた。

“枝豆はですねぇ、こうして皮をむいて食べるんですよ”

私は得意な気分になって、彼に枝豆食事方のデモンストレーションを披露してみせた。

私の見せ場である。

こうして私は和やかに国際文化の輪を広め、”枝豆を知らない、イタリア人じゃなくて良かったなぁー、紀州犬はすげよなぁー”　と、自慢げに枝豆デモンストレーションを繰り返したのである。。

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