シドニー日本人会文化委員会主催によるRoger Palvers氏文化講演会が、2009年8月7日(金)、シドニー市内の
国際交流基金シドニー文化センターにて開催された。
ロジャー・パルバース氏は、映画『戦場のメリークリスマス』の助監督を務めたことでも知られ、作家・劇作家・演出家
として日米豪で活躍。現在、東京工業大学世界文明センター長を務め、東京とシドニーを行き来されている。
ロジャーさんは日本人以上に日本語・日本文学に通じており、特に宮澤賢治の研究では第18回宮沢賢治賞を受賞
しているほど。今回の講演会では、宮澤賢治の世界について、もちろん日本語で語った。講演会場には50人ほどの
日本文学愛好者、宮沢賢治のファンらが集まり、熱心にロジャーさんの話しに耳を傾けていた。
宮澤賢治が亡くなったのは1933年9月21日。没後75周年にあたる2008年9月21日、ロジャーさんは宮沢賢治賞
の授賞式出席のため、岩手県花巻市にいた。死亡時刻の1時30分に始まった授賞式でロジャーさんは、「その瞬間、
風が吹き抜けた」のを感じた…、こんなエピソードで講演を始めたロジャーさんは、1967年、日本文学研究のため
初めて日本に渡った。そこで「一番美しい日本語を書いた作家」として宮沢賢治を知る。
宮沢賢治の作品に流れる自然と人間の関係、「身土不二」の思想、「自然を殺すと自分も殺される」という考え方、
そして作品の中にでてくる重要な言葉として「光・風・水・空気」を挙げて、ロジャーさんは、19世紀に生まれた宮澤
賢治は決して19世紀の作家ではなく、21世紀の作家環境問題に真正面から取り組み、先駆けてテーマとした「21
世紀の作家」であると強調した。
予定の時間を過ぎてもロジャーさんの話しは終わらず、いつまでも宮澤賢治について熱く語る姿勢から、その強い
思い入れを会場の皆が感じた。最後の質疑でもロジャーさんは熱心に、質問者はもちろん、会場の皆さんに向かって
興味深いエピソードを交えながら語ってくれた。
(左から)司会の佐々木日本人会事務局長、来賓の粗(ほぼ)総領事、ロジャー・パルバース氏
質問に丁寧に答えるロジャーさん
作品を手にする(左から)日本人会文化委員会の藤田委員長、ロジャーさん、ジャパンファウン
デーション・シドニーの清田所長
Roger Pulvers氏プロフィール
1944年ニューヨーク生まれ。作家、劇作家、演出家。UCLAおよびハーバード大学大学院で学ぶ。
ワルシャワ、パリに留学ののち、67年に初来日。著書に『日めくり現代英語帳』[上・下](日本経済新聞出版社)、
『ほんとうの英語がわかる 51の処方箋』『新ほんとうの英語がわかる ネイティヴに「こころ」を伝えたい』
『ほんとうの英会話がわかる ストーリーで学ぶ口語表現』(ともに新潮選書)、『キュート・デビルの魔法の英語
The Cute Devil and the Twelve Lands』(研究社)、『旅する帽子 小説ラフカディオ・ハーン』『ライス』(ともに講談社)、
『日本ひとめぼれ』(岩波同時代ライブラリー)など。訳書に井上ひさし『父と暮せば 英文対訳』(こまつ座)、
宮沢賢治『英語で読む 銀河鉄道の夜』、坂口安吾『英語で読む 桜の森の満開の下』(ちくま文庫)などがある。
映画『戦場のメリークリスマス』の助監督を務め、『スパイ・ゾルゲ』にも出演。
現在、東京工業大学世界文明センター長。東京とPymbleの自宅を行き来する生活を送っている。
参考:「宮澤賢治は日本人に生まれて損をしたのか」(http://www17.ocn.ne.jp/~h-uesugi/kenjitodai.htm)
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