いまではほとんど聞きませんが、昔は日本人はオーストラリア人に怒りの目や冷たい目で見られ、差別されていました。ついこの間まで敵として戦っていた相手ですから、そりゃそうですね。
退役軍人のパレードが行われるアンザック・デーには、外に出られなかったと言いますし、パブにも行けなかったと聞きます。石を投げつけられた人もいます。
その後、日本人に限らず、アジアからの移民の増加に対して「アジア人帰れ!」の抗議の声が上がり、大きな反アジア運動が起きました。当然、日本人を含むアジアの人たちが差別を受けることになります。
人種差別はどの国にもあるもので、自己保身の裏返しの行動ですが、オーストラリアはそもそも国の始まりからして、差別の上に乗っかっていました。
アボリジニの人たちは「建国」以来、ずっと差別と戦ってきたわけですが、次第に政府の反差別政策により、保護を受けたり、人権が守られるようになってきました。
ところが、被差別者に対する擁護的な政策は、ほかの者に対する逆差別ではないか、という声もでてくることになります。
例えば米国の黒人差別に対して、大学が黒人擁護の方針を採用して(Affirmative action)、大学の入学者の一定数を黒人枠として、黒人学生を特別選抜制度で優先的に入学させるというものがあります。黒人差別の中、満足な教育を受けることができなかった黒人の子どもたちを、差別から解放して、優先的に教育の機会を与えてあげようというのは、確かに必要な制度だったと思います。
ところが次第に白人の間から、自分たちは黒人枠以外の通常の入学試験制度で受験しなければならず、たとえ黒人より高得点を得ても、不合格になる場合がある。これって逆差別でしょ、という声が上がります。
この大学の割当制による入学制度は、いくつかの大学を被告として最高裁まで争われ、その判決も、大学の割当制度を容認したり、あるいは否定したりと、最高裁の判事を二分するほどの難しい判断でした。
アファーマティブ・アクション(Affirmative action=積極的差別是正措置)とは、人種または性による差別を解消するために、人種や性を考慮して積極的に差別の撤廃を行うことを指しますが、よかれと思って行ったことが、逆に差別を生んでしまうという皮肉な結果につながってしまうんですね。
オーストラリアのアボリジニ政策でも、アボリジニの人たちは多額な補助金制度で守られて、一般のオーストラリア人は差別されているんじゃないの?という声があるのも確かです。日本の同和政策にもそういう批判の声がありました。
ところが、ある会社がアボリジニの人を積極的に雇用しようと、雇用条件に「indigenous heritage」という条件を付けて募集しました。採用を頼まれた人材紹介会社では何人も面接して、最終的に5人を選んだのですが、面接で非常に能力を買われ「パーフェクト」とまで言われた女性が、結果的に落ちてしまいました。
べつに、オーストラリア人が応募して、あなたはアボリジニではないから不採用と言われたわけではありません。正真正銘のアボリジニの女性が応募したのですが…。
理由は「見た目がアボリジニではない」というのです。写真を見ると、確かに一見普通のオージーというルックスです。母親は白人で、父親がアボリジニというこの女性は、「肌の色の条件だけで不採用は納得できないわ」と話しています。
人材紹介会社では、「だってイタリアン・パスタの宣伝にアジア人のモデルを使うのっておかしくない?」「アボリジニだから、やっぱりアボリジニに見られないとまずいでしょ」と話しています。
これって、もうひとつの逆差別かしら?
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