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本当に「想定外」なんですか?

次の数字が何か分かりますか?

8.4  8.8  9.0

そうです、地震のマグニチュードです。気象庁は、3月11日の地震発生後、すぐにマグニチュードは8.4と発表しました。その後、8.8(暫定値)と修正し、最後には9.0だとしました。

時間が経つにつれ、さまざまなデータを総合して、より精度の高い数値が確定するとのことです。確かにご意見ごもっともですが、本当にそうなの?と疑ってしまう専門家もいます。

というのは、この数値の変化は、いままで発表していた「気象庁マグニチュード」から、専門家が使う「モーメント・マグニチュード」に、突然変更したというのです。なぜ数値を引き上げたのでしょう。日本式の数値から国際式の数値への変更は、何の説明もなく変えられました。

当然、数字が大きくなって、これで「史上最大規模の地震」となったのですが、そうする理由があったと言われても仕方がないような気がします。

想定外」を強調したかったのでしょうか。そこで、原発事故を引き起こした東京電力の責任を回避するため、今回の地震と津波は、まさに「想定外」のものだったので事故は仕方がなかった、との言い逃れのためではないかと穿った見方が出ているのです。

それは考え過ぎでは? という方もいますが、では本当に「想定外」の原発事故だったのでしょうか。例えば中部電力の浜岡原発はマグニチュード8.4に耐えられると言っていますので、今回の地震は「想定外」ではないことになります。また、2004年のスマトラ沖地震はマグニチュード9.3です。それを考えれば、なぜ「想定外」などとしきりに言い訳するのでしょうか。

例えば、停電になっても自家発電用のディーゼル発電機が作動することになっていますが、この発電機が津波のために全滅しました。その設置場所は、1号機から4号機まで13基の発電機すべてが同じ高さに設置されています。なぜ同じ高さにしていたのでしょう。いくつか高さを変えていれば、津波の影響を受けずに稼働した発電機があったかもしれません。このことは、中越沖地震で東京電力は体験済みなのですが、結果として安全面を見直すことをしていませんでした。

もう皆さん、毎日のニュースで、かなり原子力について専門家並みに知識を得ていることと思います。緊急時、まず大事なことは、

(1)停める

(2)冷やす

(3)封じ込める

この3つが重要で、(1)は確かに緊急停止して安全を確保したが、(2)に失敗して、(3)ができずに放射線が拡散したという状況でした。これらのことも、本当に「想定外」のことだったのでしょうか? 二重、三重の備えがあって初めて「安全」だとされるのに、どうやらそのあたりに不備があったということが次第に明らかになってきています。

今回の原発事故を受けた興味深い世論調査があります。

(1)今後、原子力発電所は、

運転しながら安全対策を強化していく(56.2%)

いったん止め、対応を検討する(25.2%)

やめて、別の発電方法をとる(14.1%)

(東京新聞3月19日・東京都内有権者対象)

(2)今後、原子力発電所は、

「減らしていくべきだ」と「直ちに廃止」(46.7%)

「増設」と「現状維持」(46.5%)

(共同通信社3月26・27日・全国電話世論調査)

二つの調査結果を見ると、このような事故を前にしても、半数は原発の存続を求めています。海外では原発廃止や新規建設反対の声が大きくなっていますが、海外の反応と日本人の反応に大きな違いがあるようですね。

ところで、原子力発電所の電力はそれほど大きな部分を占めているのでしょうか?

1960年代からの発電能力の推移を見ると、火力と水力と原子力発電の設備容量と最大電力の関係では、一度も原子力の電力を使うことなく、火力と水力発電の発電量で、最大電力がまかなえてきました。2001年が最大電力のピークで、それ以降、それを超えてはいません。今回の「電力不足」は火力発電所が被災して復旧していないことからのものです。以前、東京電力は、2003年に原発の欠陥データを改ざんしたとして非難され、一時的に福島と新潟の原発17基をすべて停止しましたが、もちろん電力不足は起きていません。

今回の計画停電も本当に必要なことなのでしょうか。数百万キロワット不足すると言っていますが、例えば、自動販売機の電力だけで100万キロワットあります。ネオンサインをすべて消すとかなりの電力節約になります。そんな対策をとらずに、なんだか、「原発がなければ停電など生活に支障が出ますよ」と言いたいのかと、これも勘ぐってしまいます。

今回の東京電力や政府の発表を見ていると、本当に情報をきちんと出しているのかなと疑ってしまいます。過去に東京電力は何年間も事故報告を隠し続けてきた前科があります。

現場では社員が懸命に働いていると言いますが、もちろん社員の方もいるでしょうが、多くは下請け、孫請けの会社の人たちではないのでしょうか。現場の最前線で不眠不休で懸命に作業されている方々には、本当に頭が下がりますが、そのことと、東京電力という会社の対応、これまでの安全策、今後の方針は、きちんと分けて、検証していかなければなりません。

原発の安全神話が崩れたいま、これからの日本が、原発のない安全・安心な社会に変わっていくのかどうか、エネルギーの過剰な消費を見直して、環境に配慮した持続可能な社会へと変えることができるのかどうか、今回の大災害を契機に考えないといけないのでしょうね。

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