日本では3.11以降、人と人とのつながりが一番だということが言われています。被災者同士、支援の人との結びつきなど、改めて人とのつながりの大切さを知ったというのです。
おそらく3.11を境に、人の幸せの意味が変わってくると思います。ともすればお金やGDPなど経済的指標で計られてきた人間の幸福度が、その生活の質や気持ちの充実度の大切さが注目されています。よく言われるのが、ブータンの「国民総幸福量」という指標ですね。
欧米ではこれまで、自己実現や物事の達成感、誇りなどに個人の幸福度を求めてきました。最近の日本では、家族や友人との結びつき、人とのつながりが、ここにきて大事だということが言われだしています。
さて、オーストラリアはどうなのでしょう? まずは客観的な数値でほかの国と比べてみて、一体、オーストラリアや日本はどのような位置にあるのか見てみましょう。
先月24日、OECD(経済協力開発機構)が発表した世界の主要34カ国を対象にした「Better Life Index」(より良い暮らし指標)という調査があります。それによると、オーストラリアはほとんどの項目で上位にあるんですって。
「より良い暮らし指標」と呼ばれるこの指標は、幸福と進歩を計測することを目指しています。指標は、暮らしの11の分野(住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医療、生活の満足度、安全、ワークライフバランス)について34カ国間の比較を可能にするもので、各分野にそれぞれ比重が置かれています。
さて、オーストラリアはどうなんでしょう。例えば一人当たりの居住スペースは2.4室と、カナダの2.5室に次ぐ2位。また平均寿命の81.5歳は日本、スイス、イタリアに次ぐ4位、生活の満足度はデンマーク、カナダ、ノルウェーに次ぐ4位、健康面でもニュージーランド、カナダ、米国に次いで4位と高数値です。ちなみに日本の生活満足度はエストニア、トルコ、ギリシャ、ポーランドに次ぐ、下から5番目の低さです。
安全度も5位となっています。そのほか、友人・知人とのつながりを示す指標も高く6位です。子どもたちの読解力も同じく6位。雇用指数は8位、家計の可処分所得は9位と、それぞれOECD諸国の平均を上回って高い数値を示しています。
ところで、オーストラリアが下位になった項目はというと、学歴(23位)と、余暇の時間と労働時間(ともに28位)です。週50時間以上働く人が多く、睡眠時間や余暇の時間が少ないというのです。これらの項目ではもちろん日本が最下位ですね。
【より良い暮らし指標】
指標項目 |
OECD平均 |
オーストラリア |
日本 |
部屋数(一人当たり) |
1.6 |
2.4 |
1.8 |
家計可処分所得(米ドル) |
22,284 |
27,039 |
23,210 |
平均家計資産(米ドル) |
36,808 |
28,745 |
70,003 |
就業率(15〜64歳) |
65% |
72% |
70% |
労働時間(年間) |
1,739時間 |
1,690時間 |
1,714時間 |
母親の就業率 |
66% |
71% |
66% |
学歴(高卒以上・24〜64歳) |
73% |
70% |
87% |
読解力(PISA学習到達度調査) |
493点 |
515点 |
520点 |
平均寿命 |
79歳 |
81.5歳 |
82.7歳 |
大気汚染度(PM10)(マイクログラム) |
22 |
14 |
27 |
頼れる知人がいる |
91% |
95% |
90% |
暴行被害(過去12カ月) |
4% |
2% |
2% |
不安感(暗い路上を歩く) |
26% |
27% |
35% |
国政選挙の投票率 |
72% |
95% |
67% |
生活満足度 |
59% |
75% |
40% |
食事・睡眠・余暇(時間) |
– |
15.1 |
14.3 |
総じてオーストラリアは上位に位置していますから、「より良い暮らし」が実現できているようですね。ということは国民の幸福度も高いということなのでしょうか。
このようにさまざまな指標で比較して、ほかの国より良いのだと満足するのはちょっと早計ですね。生活の質は少しは高いのかもしれませんが、それだけでは計れないものがあるのでしょうね。それが、3.11以降の日本人が実感したものなのでしょう。
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