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鬼の親に子を会わせる?

オーストラリアでは離婚家庭が多いと言われています。結婚カップルの3組に1組は離婚しています。あなたの周りを見ても、離婚された方が何人かいらっしゃるでしょう。せっかく結婚してもさまざまな理由で離婚にいたるということは、オーストラリアに限らず日本でも増えて来ています。

離婚で大きな問題になるのが子どものことです。どちらが引き取って養育するのかというのは悩むところです。日本では離婚すると親権をどちらにするか決めることになります。ところがオーストラリアでは親権は離婚しても両方の親に存続します。そこで、離婚後も子どもとの交流を両方の親に認めているわけですね。週末になると、片方の親のところに子どもが泊まりに行くなどというのは日常茶飯事です。

そこで国際結婚カップルが離婚した場合で、片方が子どもを連れて本国に戻ってしまった場合、ちょっと厄介になります。残された一方の親は子どもに自由に会えなくなりますから。

このほど日本政府が「ハーグ条約」に加盟すると発表しました。この条約の正式名称は「国際的な子の奪取についての民事面に関する条約」といい、現在84カ国が加盟しています。

要は、離婚や別居で一方の親が子を国外に連れ去り、残された親から申し立てがあった場合、加盟国は原則として元の居住国に子を返還する義務を負うというものです。子を返還するかどうかは申し立てを受けた加盟国の裁判所が判断します。

勝手に子どもを連れ去られてしまった方の親は、なんとか子どもを取り戻したい、子どもに会いたい、と願うのは当然ですね。

ここで問題になっているのが、子どもへの虐待が原因で離婚したカップルの場合の子どもへの面会です。例えば父親が子どもを虐待した場合、それが原因で離婚した父親に、離婚後も子どもに会う権利を認めるべきなのかどうか…。実際に子どもを国外に連れ去るのは母親の場合が圧倒的に多いんです。連れ去りの68%が母親でした。母親による連れ去りが多い理由は、夫から妻(母親)へのDV・子どもへの虐待などがあると考えられています。

その場合に母親から子どもを引き離して子どもだけ返還させることになれば、返還が子どもの最善の利益に反する結果が起こります。この問題を提起して、日本政府にハーグ条約への加盟を考え直させようという市民団体があります。→ハーグ条約の批准に慎重な検討を求める市民と法律家の会

さて、オーストラリアでも同様の問題の指摘がなされています。国際間というよりも国内でも問題があるのです。

現行のオーストラリア家族法(2006年)では、たとえ父親が子どもに虐待していたとしても、父親が子どもに会う権利を認めています。

あるケースでは、父親が13歳の娘(母親の連れ子)に性的虐待をして逮捕され、服役しました。その後父親は模範囚として保釈されましたが、一番下の息子に会いたいと言い出します。母親は、娘に手を出した時点で親としての資格を失ったのだから絶対に会わせないと言います。でも法律では元の夫で息子の父親に面会する権利を認めています。「子どもの人権を守るのか、父親の権利を認めるのか」…現実にはこのようなケースが多くあります。

最近のDV(家庭内暴力)や児童虐待のケースの増加を受けて、オーストラリア政府は家族法の改正に向けて公聴会を今月から始めました。

法律が現実的に対応する方向で改正されることになるのでしょうか。一番大切なのは、感受性の高い時期の子どもの人権を第一に守るということでしょう。政府の現実的な対応がなされるとよいですね。

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