今週月曜日の20日は「世界難民の日」(World Refugee Day)でした。国連総会で、毎年6月20日を「世界難民の日」とすると決議されて、この日は難民の保護と援助に対する関心を高め、国連やNGOによる活動に理解と支援を深めましょうということです。
そこで20日には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、「グローバル・トレンド 2010」という報告書を発表して、2010年末現在、紛争などで国を追われた難民や避難民は世界に約4,370万人いて、これは過去15年で最多となったと発表しました。
UNHCRでは、難民や避難民に対して、出身国や居住国以外の第三国への定住を進めていて、2009年には合計11万2,400人が世界19カ国で受け入れられています。受け入れ上位3カ国は、アメリカ(7万9,900人)、カナダ(1万2,500人)、オーストラリア(1万1,100人)です。
ご存知のようにオーストラリアは移民の国として、世界中から移民を受け入れていますが、政府の移民政策には2種類あって、ひとつは技術者や家族を呼び寄せる「移住者受入プログラム」(Migration Program)で、もうひとつが難民や避難民を受け入れる「人道支援プログラム」(Humanitarian Program)です。2010/11年度は、前者が16万8,700人を、後者が1万3,750人を受け入れる予定です。
この「人道支援プログラム」でオーストラリアに入国した難民・避難民の出身国別の人数は、以下の通りです。(2009/10年度)
国名 |
ビザ発給数 |
ビルマ |
1959 |
イラク |
1688 |
ブータン |
1144 |
アフガニスタン |
951 |
コンゴ |
584 |
エチオピア |
392 |
ソマリア |
317 |
スーダン |
298 |
リベリア |
258 |
シエラレオネ |
237 |
オーストラリアは毎年、約1万4,000人近くの難民を受け入れているのですが、いわゆるボートピープルということで、難民を乗せた船がオーストラリア近海に来ると、「これ以上受け入れるな」「正規の手続きで移住してこい」という声と、「迫害から逃れてきた難民を保護しよう」「人道的な観点から受け入れるべきだ」という声がわき起こり、国民を二分する論争にまでなっています。
政府は国民の反対意見を考慮してか、難民に対する特別ビザの発給を抑えています。例えばボートピープルに対するビザ発給数は、2009/10年度、アフガニスタン人は申請者全体の約78%が、イラク人は59%が、イラン人は53%がビザを取得しています。それが2010/11年度(上半期)で、アフガニスタン人は24%が、イラク人は25%が、イラン人は10%と、大幅に発給数が減少しています。
この数字を見ると、政府は難民に対して厳しい態度で臨んでいるのだなということが分かりますが、実はトリックがあって、通常、ビザ申請が移民局で拒否された場合は、再審査を求めることができます。難民の場合も、最初に拒否されても再審査を求めて、その結果ビザがおりる場合があります。
ですから最初のビザ申請の発給割合だけを見て判断してはならず、最終的にどのくらいの難民にビザが発給されたのかを比較する必要があります。オーストラリアには数多くの難民出身者がすでに移民として暮らしていて、その、いわば難民先住者たちの支援を受けて、多くの難民がボートピープルとしてオーストラリアを目指してやって来ます。
すでに難民受け入れのシステム、国際ネットワークが出来上がっていて、オーストラリア国内の支援グループとボートピープルとが連絡を取り合い、最終的にオーストラリアに定住を図っているわけですね。
オーストラリアにとって難民問題は大きな政治課題です。収容所を国内ではなくパプア・ニューギニアに設置しようとしたり、マレーシアと難民を交換しようとしたり、政府はあの手この手で国民の不満を解消しようとしています。
小手先の人気取り政策をいろいろ考案するよりは、本質的な問題を国民全体が考えるようにするのが、遠回りなようでいて、結局、難民問題解決への早道だと思うのですが。
今週は難民週間だそうですので、明日、シドニーで開催される映画祭に出かけてみて、難民問題を考えるというのもよいかもしれませんね。
第5回難民映画フェスティバル
5th Annual Refugee Film Festival
日時:6月23日6:30pm-9:00pm
場所:Waverley Community and Seniors' Centre(31-33 Spring Street, Bondi Junction)
難民問題を取り上げた世界の短編映画の上映会。
入場無料(ただし、入場時に寄付金徴収)
問い合せ:(02) 9386-7923
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