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差別をなくすクリーンアップ

街を歩くと路上に座るホームレスの人を見かけます。昔に比べてかなり目につくようになりました。それだけ不況や経済格差が浸透してきているということでしょうか。

例えば、今ではすっかり再開発されて観光客も訪れるウールームールー地区は、昔はアボリジニや低所得者層の住宅が並び、塀には落書きが、路上にはゴミが散乱し、酔いつぶれた人が寝ているというような場所でした。

当然、人はそんな場所は避けて通ります。

キングスクロスもかつてはそんな感じでした。恐い、危ないというイメージがあり、裏通りには当然のごとく酔いつぶれた人が寝ていたり、注射器やらコンドームが散乱し、ある時は人が死んでいたりと、まあひどい状況でした。

今ではかなりきれいになってきて、夜はもちろん多くの人で賑わい、酔っぱらいもいますが、以前と比べて格段ときれいに整備されています。

汚い環境では、人は自然と、その場所を避けたり、あるいは無意識にゴミを捨てたりという行動をとります。すでに汚いからゴミも捨てやすいのでしょう。

興味深い社会的実験がありました。

オランダの駅で、クリーナーのストライキで駅構内が汚れた状態の時と、ストライキが解除されていつものきれいな状態とで、ある実験をしました。

参加者に、いくつもある構内のベンチに座ってもらうのですが、ひとつだけすでに人が座っています。そのベンチ以外どれでも好きなところに座るという実験です。ただし座っている人を、白人の場合と黒人の場合に代えて実験しました。

構内が汚れた状態の時は、人は黒人の座るベンチから離れたベンチに座る傾向がありました。きれいな状態ではそんなことはありませんでした。また、白人が座っている場合は、汚い状態もきれいな状態も、違いはありませんでした。

調査報告では、環境が汚れている場合、人はステレオタイプな行動を選択するということを示唆しています。この場合のステレオタイプな行動は、黒人差別ということです。

乱雑で汚い状態では、自然ときれいな整然としている状態を求めて行動し、その行動はこれまでに刷り込まれてきた、その他大勢と同様の行動で、それがステレオタイプな行動だというわけです。

そうなると、差別の解消には身近な周りをきれいにするクリーンアップ運動が効果があるということでしょうか。

また、環境がきれいに整備されていると、人は、移民やホームレスの人たちへのチャリティー活動により多く募金するということも明らかになっています。

ある地区が、住宅の窓は壊れ、落書きが一杯で、道路にはゴミが散乱しているという場合、単により汚くする行動を人にとらせるばかりではなく、ステレオタイプな行動や差別的な行動をとらせることになるようです。

確かに、きれいな出で立ちの人ばかり集まっている場所では、自分の身なりを考えてふさわしい洋服を選ぶものです。周りにラフで粗野な人がいれば自然とそんな振る舞いになるもの。これって「郷に入れば郷に従え」? ちょっと違いますね。

乱雑な状態は人に心理的な不安感をもたらし、なんとか整然とさせようとします。もしくは避けようとします。これがステレオタイプや差別的な行動につながります。反対に整然とした状態では人は心地よく、その状態を共有する人に対しても、同じ思いと感じて心を許す心理状態になります。

こうしてみると、何はともあれ、クリーンアップに心がけることが大切なんですね。

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