よく国際学力テストなどでオーストラリアの子どもたちの学力が話題になります。アジア諸国の子どもたちの学力が高くて、オーストラリアの子どもたちはそれに比べて低いというものです。
数学と科学の国際学力テストで高いレベルに達しているのは、オーストラリアの学生では25%しかなく、韓国・台湾・シンガポールの学生では70%が高レベルに達しています。
この数字が示しているのは、オーストラリアに移住してきたアジア系の子どもたちは、結局、優秀な子が多いということでもあります。事実、HSC(大学入学の指標となる統一試験)では、成績優秀者に中国やベトナムなどのアジア系の名前が並びます。
最近の日本はよく知りませんが、かつての日本や、中国、韓国など、受験競争の激しさはよく知られたところです。残念ながらオーストラリアではそんな状況はあまり耳にしません。もちろんアジア系移民の子どもたちが進学塾に通っているのは知っていますが、ノーテンキなオーストラリアの環境にはあまり似つかわしくありません。
最近の調査では、優秀な教師に教わった生徒と、そうではない教師に教わった生徒との比較では、両者の間に大きな差が出ることが明らかになりました。新米教師や指導にあまり熱心でない教師に教わった場合、その生徒の学力は2、3年の遅れが出てくるというのです。
優秀な教師は、常に生徒に質問を出すように仕向け、鋭い質問を考えさせようとします。こうすることで生徒はよく考え、何が理解できていて、何が分からないのか整理し、不明な点を質問して確実に理解するという行動を常にとるようになります。
ここで大きな問題が指摘されています。裕福な家庭が多い地域と、低所得者層の住む地域との差です。ここでもまた、所得差・地域差が学力に関係してきました。
教師が生徒にテキストの意味を説明するよう求める割合は、公立学校の約25%を占める低所得者層の地域の学校ではおよそ半分の生徒ですが、同様に約25%を占める高所得者層の地域の学校では70%の生徒が教師に質問されています。
この背景には、低所得者が多く住む地域の学校での教師の求人に応募するのはほとんどが新人教師ということがあります。そのため、経験豊富で指導力のある教師と、そうではない新人教師とでは、生徒の学力差に約2年の開きがでるというのです。
そんなこと言われても、教師は選べないので、困ってしまいます。
ニュー・サウス・ウェールズ州の高校生の31%が大学に進学していますが、彼・彼女らの親も大卒の学歴を持っているのはわずか13%です。また、都市に住んで娘を持つ両親の78%は、子どもが学位を取得することを望んでいますが、息子を持ち地方に住んでいる親は40%しか子どもが学位を取得することを望んでいません。
この、都市と地方とのギャップ、平均所得の差による地域差、さらに教師の力の差…、これらの要因が子どもたちの学力の差に影響してくるというのは、「一生懸命勉強すれば必ずよい結果につながる」という言葉が空しくなります。
子どもたちが選ぶことのできない条件の下、競わされているようで、なんだか可哀想ですが、でも、それでも勉強に興味を持てば能力は伸びるものです。そう信じて毎日学校に行くしかないのかな。
(水越)
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