神奈川県がビジネスセミナー「Innovation in Japan」を開催
松沢知事自ら企業誘致のトップセールス
2010年11月24日(水)、シドニー市内のRadisson Plaza Hotelにて、「Innovation in Japan – Kanagawa Prefecture」と題する神奈川県ビジネスセミナーが催された。同ビジネスセミナーは、神奈川県とJETRO(ジェトロ=日本貿易振興機構)の主催によるもので、オーストラリアと日本のビジネス・パートナーシップの強化を目的に、投資先としての神奈川県の魅力や、日豪のR&D(研究開発)連携、およびオーストラリアの技術進出の促進を図るため、企業をはじめ、政府関係者を交えてのセミナーとなった。
会場には多くの企業関係者が参加し、投資先としての日本や神奈川県の魅力の紹介や、具体的なケーススタディに熱心に耳を傾けていた。
神奈川県は全国トップレベルのインセンティブ・パッケージである「インベスト神奈川」を推進し、これまでに多くの海外企業が実際に事業所を設置している。また「神奈川R&Dネットワーク構想」を展開し、大企業と県内の中小企業、県の研究施設、さらに大学などの研究・教育機関を結びつけて新たな産業の創出に力を入れている。
今回は松沢神奈川県知事自らセミナーに参加し、オーストラリア企業の誘致に向け、言わばトップセールスを行ったもので、ビジネスセミナーをきっかけに、今後、オーストラリア企業による日本への投資=神奈川県への事業進出が期待される。
ビジネスセミナーは2時〜5時まで3時間にわたり行われ、開会冒頭、主催者のJETROシドニー事務所の児山所長から、日豪の密接な経済関係を基盤に、今後はオーストラリアからの投資の増加を期待しているとの話しがあり、神奈川県は日本の人口では2番目の県であり、GDPも国内4位の規模である。日本政府はアジアの産業セクターとして日本を位置づけていて、神奈川県はその重要な位置を占めている、との話しがあった。
シドニー総領事の代理として挨拶された稲留在シドニー日本総領事館首席領事は、神奈川県は日本の自治体の中でも最も積極的な自治体であり、海外企業に対するさまざまな助成制度を用意している、神奈川県とニュー・サウス・ウエールズ州の発展が日豪関係の発展につながっていくとの期待をされた。
続いて、ニュー・サウス・ウエールズ州政府産業投資局のBarry Buffier次長からは、これまで州政府と日本との間では長期にわたり農産品や工業部品の貿易関係が続いているが、今後は新テクノロジーやR&D分野への進出を促進したいとの挨拶があった。
セミナーでは、田本JETROシドニー事務所次長が「Japanese Economy and JETRO's Activities to Promote Foreign Direct Investment into Japan」と題して、日本経済が落ち込む中、日本政府は貿易国から投資国への転換を図っており、FTAの締結などを推進している。また、日本はオーストラリアへの投資国としては3番目の規模を有している。今後、アジア市場への進出を狙う外国企業に対し、日本を積極的に活用してもらい、直接投資を増やしていきたいとの話しがあった。
次いで、松沢神奈川県知事による、海外企業の投資先、進出先、さらには観光地としての魅力を伝える講演「Kanagawa Overview: 'Business, Investment and Tourism in Kanagawa'」が行われ、さまざまな魅力に富む神奈川県の紹介がなされた。
休憩を挟み、再開されたセミナーでは、まず、神奈川R&D推進協議会座長でソニーの先端マテリアル研究所の熊谷所長から、「Challenge to Open Innovation: 'Call for! Innovative Technology & Partner'」と題して、ソニーの具体的な取り組みを基に、基礎研究から商品開発までおよそ10年〜20年ほどかかり、R&Dの投資には相当な時間と投資が必要だとの話しがあった。また、ソニーは神奈川県厚木市に工場を持ち、神奈川県のR&Dネットワークとの関わりを紹介、エコテクノロジーやバイオテクノロジー、ナノテクノロジーの展開をしているとし、オーストラリア政府もこれら新テクノロジーには力を入れているのでソニーも協力したいと話された。
セミナーではその後、2つのケーススタディの紹介があった。企業のケーススタディでは、次世代燃料電池を製造販売するCeramic Fuel Cells社が、またR&Dのケーススタディでは、ARC(Australian Research Council)のバイオテクノロジーやナノテクノロジーによる次世代エネルギーの展望が紹介された。
松沢神奈川県知事に聞く
今回の訪問は、相模湾沿岸とゴールドコースト海岸との友好提携20周年の記念事業への参加、及びシドニーでのビジネスセミナー出席ということですが、オーストラリアの印象は?
これまで国会議員時代に、キャンベラやメルボルンは訪問したことがあります。それにケアンズは家族旅行でグレート・バリア・リーフを訪れました。シドニーとゴールドコーストは初めてですが、非常に良いところですね。横浜に似ている部分もあり、親近感を持ちました。
ゴールドコーストでの20周年記念イベントはいかがでしたか?
もともとライフガードの人たちの交流がきっかけとなり、20年間、ライフセーバーの人たちの人的交流が続いています。ゴールドコースト市では、もっともっと日本人観光客に来ていただきたいということですが、今後の交流発展に向けて、お互いに協力していこうということで、25周年記念には日本庭園を寄贈する約束をしてきました。
また、海岸浸食という問題があるのですが、ゴールドコーストではサンドバイパス方式という対策を実施しています。相模湾沿岸でもこの方式を検討したいと考えています。
シドニーではビジネスセミナーということで、神奈川県をアピールされていました。
神奈川県では「インベスト神奈川」という政策を推進して、県内に積極的に産業を集積しようとしています。これは、大企業の研究開発機関と、県内中小企業の技術力、県の研究施設、さらに大学などの研究・教育機関を結びつける「神奈川R&Dネットワーク構想」の展開なんです。
県としては、企業の誘致については、助成金や融資制度、税の軽減措置などの経済的なインセンティブを用意しています。また、「ワンストップ・サービス」といって、新たに進出される企業に3カ月間無料でオフィススペースを提供したり、担当者をつけてさまざまな問い合せに対応したり、積極的に支援を行っています。これまでに44社の海外企業が県内に事業所を設置していますし、オーストラリア企業もあります。また、世界中からの問い合せはかなりなものです。
これらに対応するため、海外企業誘致ステーションを3カ所、シンガポール、ロンドン、アメリカに設置していますし、中国にはサテライトオフィスを持っています。オーストラリアはシンガポールの誘致ステーションが担当し、今後も積極的に活動を行っていきます。
県としては、かなり積極的な海外企業への誘致活動ですね。
国に頼っていては無理なんです。県として積極的に世界とつながっていかないといけません。オーストラリアでも同じです。州首相や県知事のトップセールスが必要なんです。
先頃のAPECは横浜市/神奈川県の大きなアピールになったのでは?
たしかにAPECは横浜を知ってもらう大きなイベントでした。神奈川県としては企業誘致もそうですが、もちろん観光にも力を入れています。県内には有数の観光名所がありますし、特に、羽田空港の国際化によって、世界との距離がグンと近づいてきました。
ところで、知事は民主党の国会議員から神奈川県知事に転進され、地方自治を先導してきました。地方分権の立場から最近の民主党政権をどう見られていますか。
当時の私の仲間が、いま政権を担っているのですが、非常に歯がゆいですね。とにかく1年のうちに首相がコロコロ代わるのは問題ですよ。サミットやAPECでは世界のリーダーに、次は誰が首相になって出てくるんだと言われてしまうわけですから。政治がリーダーシップをとっていかなければいけないのに、日本はオーストラリアや英国のようには議院内閣制がうまく機能していないですね。やはり地方から頑張っていかなければなりません。
【プロフィール】
松沢成文(まつざわ・しげふみ)
1958年4月2日 神奈川県川崎市生まれ 52歳
1982年 慶應義塾大学法学部卒業(在学中に米国グリーンリバー大学留学)
1982年 「松下政経塾」に入塾し、米国で米連邦下院議員のスタッフとして活動。
1987年 神奈川県議会議員に当時最年少で当選
1993年 衆議院議員(神奈川2区)に当選
2003年 神奈川県知事に就任
2008年 明治大学公共政策大学院客員教授に就任
現在、神奈川県知事2期目
【著書】
「混迷日本再生 二宮尊徳の破天荒力」(ぎょうせい)
「それでもタバコを吸いますか?—目指せ!煙のないスモークフリー社会」(幻冬舎)
「実践 マニフェスト改革」(東信堂)
「インベスト神奈川—企業誘致への果敢なる挑戦」(日刊工業新聞社)
「知事激走13万km!現地現場主義—対話から政策へ—」(ぎょうせい)
など多数。
【趣味】 スポーツ、映画鑑賞
【座右の銘】 「運と愛嬌」
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