オーストラリアの公共交通機関は、シドニーのような都市部を除けば、決して充実しているとは言いがたいものです。そんなオーストラリアでは、車が毎日の生活に欠くことのできない移動手段であることに異論はないでしょう。
車を運転するためには、運転免許を持っていなければならいないことは日本と同じですが、オーストラリア国内の中でも州ごとに車の運転免許の取得方法や許可条件、交通法規などが異なる場合があるので注意が必要です。
今回はオーストラリア生活において車の免許と運転について紹介します。
目次
オーストラリアで運転免許を取得するには、州内に居住してから6カ月後に申請ができます。満16歳以上であることと、最低36カ月の運転経験、4つの試験に合格することが必要です。
まず、オーストラリアの交通法規の解説書(Road Users’ Handbook)の日本語版をRoads and Maritime Services(以下RMS)のウェブサイトからダウンロードしておきましょう。その解説書でオーストラリアの交通法規を勉強して、学科試験に合格すると、仮免許が交付されます。
受験料:$45
学科試験は運転免許申請書(Licence Application)に必要事項を記入して申し込みますが、身分証の提示が必要になります。また、オーストラリアに滞在して1年以上経過している場合、1年以上の知り合いの免許所持者1名の署名も必要です。
仮免許期間に交通違反や事故を起こすと、免許停止や免許取得に必要な保持期間が無効になるので、十分に注意しましょう。
学科試験の合格後には、視力検査があります。裸眼視力でも、メガネ、コンタクトレンズによる矯正視力でも、両眼で規定の視力があれば問題ありません。色盲検査はありません。
仮免許は5年間有効です。制限速度は90km、車の前後に「L」マークを運転しなければならず、まだレンタカーは借りられません。
発行手数料:$24
NSW州では24歳以下の場合、正規免許保持者(現地運転経験3年以上)が同乗のもと、20時間の夜間運転を含む120時間の運転実習をします。この運転実習については、実習記録を仮免許と一緒にもらったログブック(Log book)に記録する必要があります。
25歳以上の場合、実技試験の受験に12カ月間や120時間の運転実習は必要ありません。
NSW州では24歳以下の場合、仮免許を保持してから12カ月後に実技試験が受けられます。25歳以上の場合、運転実習は必要ありません。
受験料:$56
運転技術を習得したら、試験官同乗のもと実技試験を受けます。受験の際に運転する車は持ち込みできるので、運転し慣れた車で受験しましょう。実技試験では運転技術はもちろん、オーストラリアの交通法規、標識、他車の方向指示を理解し、正しく判断しているかなどが、項目ごとにポイントで評価されます。実技試験中の危険行為や交通違反は、即不合格となります。
合格すると、赤色の初心者免許(P1)が交付されます。
実技試験のポイント
赤色の初心者免許(P1)は18カ月間有効です。制限速度は90km、車の前後に「P1」マークを運転しなければなならず、まだレンタカーは借りられません。
発行手数料:$57
赤色の初心者免許(P1)を所持してから12カ月後に受けられます。合格すると、緑色の初心者免許(P2)が交付されます。
緑色の初心者免許(P2)は30カ月間有効です。制限速度は100km、車の前後に「P2」マークを運転しなければならず、まだレンタカーは借りられません。
発行手数料:$89
緑色の初心者免許(P2)を所持してから24カ月後に受けられます。解説書(Driver Qualification Handbook)をRMSのウェブサイトからダウンロードしておきましょう。その解説書(日本語訳なし)でオーストラリアの交通法規を勉強して、合格すると晴れて正規の運転免許が交付されます。
受験料:$46
1年・3年・5年・10年と4種類の有効期限があります。10年の正規免許は21歳〜44歳に限ります。3年間に交通違反で合計13ポイント以上減点されると、免許停止になるので注意が必要です。
発行手数料:
1年 $56
3年 $134
5年 $180
10年 $334
オーストラリアの運転免許の取得でも、日本と同様、実技試験の合格への早道はドライビングスクールを利用します。インストラクターは実技試験のコースや重点項目をよく知っているので、合格率も高くなります。
ドライビングスクールは民間運営ですが、日本と異なり、予約をすることでインストラクターが教習車で迎えに来てくれます。車の少ない場所で指示通りに運転しながら、コツをつかみましょう。練習では実技試験に使われる道路を走るので、コースに慣れることができます。
また、受験のタイミングを教えてくれたり、当日も試験場まで付き添ってくれたり、運転し慣れた教習車で試験を受けることができたりするので安心です。
自動車と同様、州によって試験の種類、内容、合格基準、費用などが異なります。
学科試験と実技試験の他に、運転実習が必要な場合もあります。その場合、視力検査、学科試験に合格して仮免許を取得した後、さらに3〜6カ月以内の運転実習が課せられ、実技試験に合格して初めて初心者免許が交付されます。
オートバイにも「L」や「P」プレートの装着が義務づけられ、仮免許と初心者免許の期間中は排気量や速度、同乗者の制限があります。
オートバイの運転免許の種類
日本の運転免許を持っているオーストラリアの一時滞在者の場合、現地の運転免許を取得せずに州内を運転することは許されています。
NSW州では海外の運転免許所持者が住所を定めてから、3カ月以内に現地の運転免許の取得を義務づけています。NSW州でオーストラリアに3カ月以上滞在する場合、日本の免許をTemporary Overseas Visitor Licenseに切り換える必要があります。永住者の場合も、国際運転免許で運転ができるのは3カ月です。NSW州の各地にある、Service NSWの窓口で手続きをする必要があります。
①日本の運転免許で車を運転する(入国から3カ月まで)
有効な日本の運転免許
翻訳証明書(Service NSW)
パスポート
ビザ(コピー可)
②国際運転免許で車を運転する(入国から3カ月まで/レンタカーは最長1年まで)
有効な国際運転免許
有効な日本の運転免許
パスポート
ビザ(コピー可)
①日本の運転免許で車を運転する
有効な日本の運転免許
翻訳証明書(NATTIに依頼または自動車免許証抜粋証明を領事館にて申請)
②国際運転免許で運転
有効な国際運転免許
有効な日本の運転免許
パスポート
ビザ(コピー可)
①日本の運転免許で車を運転する
有効な日本の運転免許
NATTIによる日本の運転免許の翻訳
パスポート
ビザ(コピー可)
②国際運転免許で運転
有効な国際運転免許
有効な日本の運転免許
パスポート
ビザ(コピー可)
①日本の運転免許で車を運転する
有効な日本の運転免許
日本の運転免許の翻訳
パスポート
ビザ(コピー可)
②国際運転免許で運転
有効な国際運転免許
有効な日本の運転免許
パスポート
ビザ(コピー可)
永住者以外で、日本の運転免許を所持し、オーストラリアで同じ車両タイプの運転免許を取得する場合は、原則として、学科試験の後に仮免許なしで実技試験が受けられ、それに合格すると本免許が交付されます。オーストラリアのNSW州・WA州・SA州・ACTに3カ月以上滞在する長期滞在者や永住者の場合は、学科試験と実技試験も免除されます。
申請先はService NSWです。手続きをしたその場で免許用の写真を撮られ、申込後5日以内に申請した住所に運転免許が郵送されます。発行される運転免許の条件欄には「Q」が付き、「Evidence of permanent residency status not provided」との説明書きが記載されます。
NSW州の運転免許への切り換えに必要なもの
運転免許の車両タイプを日本とオーストラリアで変更する場合、初心者と同じ手続きになります。上記の「オーストラリア国内で運転免許を取得する」参照。
オーストラリア短期滞在者は、日本の有効な運転免許とパスポートを所持していれば運転可能ですが、何かあった時には証明が必要です。トラブルを防ぐためにも、オーストラリアで運転を考えている場合は、国際運転免許(国外運転免許)を取得しておきましょう。もしくは、英語の証明書は携帯しておいた方が安心でしょう。
オーストラリアで有効な国際運転免許(国外運転免許)を取得する場合は、日本の免許に基づいて住所地の公安委員会に申請しましょう。
国際運転免許は、発行から1年以内で日本の運転免許が有効期限内であれば、何回海外に行ってもそのたびに使用が可能です。ただし、国際運転免許の有効期間が短くなったので、新たに申請する場合は警察署または運転免許センターに必ず返納しないと、新しい国際運転免許証が交付できない場合があります。
また、本人がすでに国外にいる場合は代理人申請が可能です。仮に国際免許証の有効期限が切れた場合でも、帰国の必要なく延長手続きができます。
国際運転免許証の申請の際に必要な書類
申請場所や受付時間、手数料などの詳細は、各都道府県警察の運転免許センターなどに問い合わせておきましょう。
国際運転免許証の取り扱いについて
英訳記載事項証明書は、オーストラリアの各州の運転免許管理当局が指示する機関で発行してもらえます。
NSW州の場合、最寄りのService NSWに日本の運転免許とパスポートを持参するか、オンラインから予約して、定められた政府機関「Multicultural NSW」に翻訳を申請できます。
翻訳料金:
・14営業日以内:$77
・7営業日以内:$96
・1営業日以内:$117
・速達便:+$14
他州の場合、NATTIの資格を持つ翻訳家による翻訳証明もしくは各州の総領事館発行の翻訳証明書が必要です。以下の各州総領事館ウェブサイトより詳しい内容を確認してください。
各州の総領事館
オーストラリアで免許申請の際には、2種類の身分証明書(内ひとつは署名のあるもの)を提示します。パスポートの他に、クレジットカードや預金通帳、電気、ガス、賃貸料金の支払い通知書、学生証などのどれかひとつが必要です。ちなみに、国際運転免許は身分証明として使える場面がほとんどありません。
オーストラリア滞在中に運転免許を取得し、その後3カ月以上オーストラリアに滞在していたことが証明できれば、適性試験だけで日本の運転免許も取得できます。ただし、運転免許取得から1年未満の場合、日本の運転免許は初心者扱いとなります。
運転免許の取得先は、運転免許記載の住所地を管轄する日本の公安委員会、または自動車運転免許試験場です。
手続きに必要なもの
オーストラリアの運転免許の更新も、日本と同様、誕生日の1カ月前後の期間に申請することができます。
有効期限が1年間・3年間・5年間の運転免許を所持している優良ドライバーは、オンラインで更新申請ができます。
オンライン申請の条件
オンラインでの運転免許の更新に必要なもの
オンライン更新申請は、以下のサイトから可能です(要アカウント登録)。
https://www.service.nsw.gov.au/renew-driver-licence-login
オンラインでの申請完了後、運転免許レシート(Driver Licence Receipt)をプリントアウトして署名し、車を運転する際には常に古い運転免許と一緒に携帯しておきます。新しく更新された運転免許は、登録住所に10日間ほどで郵送されます。
有効期限が10年間の運転免許を所持している、もしくは申請条件に満たないドライバーは、Service NSWを訪問して更新申請を行う必要があります。
Service NSW窓口での運転免許の更新に必要なもの
Service NSWを訪問する場合、事前に運転免許更新申請書(Licence Renewal Application)をダウンロードして必要事項を記入しておきます。その後、上記の必要なものを持参して手続きを行います。
更新手数料:
・1年間 $56
・3年間 $134
・5年間 $180
・10年間 $334
オーストラリア滞在中に日本の運転免許が失効した場合は、失効6カ月以内ならやむを得ない失効による手続きが可能です。また、失効6カ月以上3年以内なら試験の一部を免除されて再取得できます。
失効した運転免許の手続き・再取得先は、運転免許記載の住所地を管轄する日本の公安委員会、または自動車運転免許試験場です。
適性試験(視力・聴力検査)だけで失効前と同じ運転免許を再取得できます。新しい運転免許は、手続きした日から3年後の誕生日まで有効。
手続きに必要なもの
日本帰国後の住所が確定してから1カ月以内に手続きすれば、学科試験および技能試験が免除されるので、やむを得ない失効による手続きと同様、適性試験(視力・聴力検査)だけで失効前と同じ運転免許を再取得できます。
失効3年以内でも、日本の住所確定から1カ月以上が経過した場合、学科・技能・適性試験のすべての試験を受けなければなりません。失効した運転免許の手続き・再取得先は、運転免許記載の住所地を管轄する日本の公安委員会、または自動車運転免許試験場です。
手続きに必要なもの
オーストラリア滞在中に日本の運転免許を紛失した場合、日本帰国後に再交付申請を行う必要があります。代理申請はできません。再交付申請先は、運転免許記載の住所地を管轄する日本の公安委員会、または自動車運転免許試験場です。
手続きに必要なもの
海外滞在中に日本の運転免許の有効期限が過ぎると、事前にわかっている場合は、運転免許の更新期間(誕生日を挟んだ2カ月間)に入っていなくても、特例更新手続きによって運転免許の更新ができます。
運転免許の更新先は、運転免許記載の住所地を管轄する日本の公安委員会、または自動車運転免許試験場です。
特例更新手続きに必要なもの
A. NSW州発行の運転免許証を取得する場合、翻訳証明書はシドニーのMulticultual NSWが発行したものでなければなりません。
A. 警察によりオーストラリア一時的滞在者の証明を求められる場合があるので、自分のオーストラリアでのビザを証明できるものを携帯しておく必要があります。また、オーストラリアで国際運転免許証を携帯して運転をする場合、パスポートにある入国日から3カ月以上オーストラリアに滞在しているかどうかを確認されます。
A. 日本の運転免許でオーストラリアでも運転する場合、日本の運転免許の有効期限分、運転が可能です。定期的な更新が必要なく、フルライセンスと同じ扱いを受けられます。しかし、身分を証明するために、パスポートなどを運転時に常に携帯しなければいけません。
A. オーストラリアの日本の領事館や大使館では、日本の運転免許の紛失といった問題への対応はしていません。国際運転免許または日本の運転免許証を発行した各機関まで問い合わせる必要があります。
日本の運転免許の取得制度と違い、さまざまな制限や長期間の運転時間が必要になるオーストラリア。日本の運転免許を持たずにオーストラリアに来るのは、永住予定がある人を除き、あまり現実的ではないかもしれません。短期滞在なら国際運転免許、長期滞在なら日本の運転免許から現地の運転免許に書き換えておくのが望ましいでしょう。