美容/健康

私たちの健康にも繋がるプラスチックフリーな取り組みを特集

個人のプラスチック廃棄量が世界でも2番目(※1)に多いとされる日本。スーパーマーケットを歩くと小さな果物でさえも綺麗にプラスチックで包装されている。最近、日本の大手メーカーも脱プラスチックを宣言し動き出したが(※2)、世界的にみると未だに環境保全後進国だ。

一方ここオーストラリアは、世界で初めてボトル入りの飲料水の販売を禁止する取り組みを行うなど(※1)、環境保全先進国の1つである。

そんなオーストラリアでは、ハチのみつろうを使用して作った「みつろうエコラップ」が大人気。ほのかに香る優しいハチミツの香りがするラップは、プラスチックフリーなだけではなく、何度も使い回すことができるエコ商品だ。

みつろうエコラップを販売する「KoKeBee」での活動を通して「プラスチックによって引き起こされる悪影響で私たちが苦しめられている」という事実を伝えたいと語る楳村さん。自身もアレルギー体質の改善をきっかけに、プラスチックフリーな生活を始めた1人だった。

今回は、日本の抱える環境産業の問題点を交えながら、楳村さんが自らの経験を通して気づいた「プラスチックフリーな生活の重要性」を紐解いていきます。

※1::環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」
※2:朝日新聞「キットカット、紙包装に プラスチック年380トン削減」

KoKeBeeを通して届けたい思い

中学生の頃からアレルギー体質でした。肌に薬を塗る生活が当たり前になっていたのですが、40代になったときに、薬だけでは綺麗に治らないと感じてきたんです。その際に「一般的にステロイドは体に良くないと聞くけれど実際はどうなんだろう」と疑問に思い、独学で勉強してみたら「こんなものを何十年も使っていたのか!」とショックを受けました。

それを機に、お薬を使わずに治す方法がないか探していたところ、ケミカルフリーな生活にたどり着きました。ケミカルフリーな生活をしていくと「環境ホルモン」(※3)という言葉を知るようになりました。

環境ホルモンは、空気中だけではなく直接食品に触れるプラスチックにも含まれています。そのようなプラスチックで食品を包むと、環境ホルモンが食品に染み込んでいくのです。それが原因でアレルギーになってしまう人もいるほど。

環境ホルモンは、現代病の原因の1つとも言われています。そんな環境ホルモンを体に入れないことが、結果的に健康に繋がると、自分の身体をもって体験しました。

自分の健康のためにプラスチックを使用しないことが、結果的に地球環境を良くすることにも繋がっていきます。

(※3):人や野生生物の体の成長や生殖などを乱す可能性のある化学物質。ダイオキシンや塗料、合成洗剤、農薬、殺虫剤などに使われている。

プラスチック大国、日本


※日本のスーパーマーケット

25年以上オーストラリアに住んでいるので、日本の状況があまりわかっていなかったのですが、今回KoKeBeeの仕事で2週間ほど日本に滞在したときに、日本とオーストラリアの大きなギャップを感じました。

オーストラリアでは環境産業の市場ができあがっています。スーパーマーケットへ行ってもプラスチックに包まれていない野菜を買うことができますし、ヘルシーフードショップとか週末のマーケットに行けばプラスチックフリーの買い物ができる場所が整っているんです。  

一方で日本のスーパーマーケットでは、何でもかんでもプラスチックに包まれていて、オーストラリアのようにプラスチックフリーなマーケットはありません。日本滞在中にオーガニックを謳う八百屋さんに行きましたが、そこでもすべての商品がプラスチックに包まれていて残念な気持ちになりました。

日本には包む文化があるとワークショップで参加者に言われたときに、確かにそうだなとも思ったのですが、別にプラスチックじゃなくてもいいですよね昔は風呂敷とかで包んでいたわけですし。世の中が便利になっているから、安くすませる方へと流れているのではないかと思います。

消費者だけでは変えられない、企業も努力を

オーストラリアではプラスチックフリーの商品を買える環境が整っているため、消費者の意識を変えるだけでよかったのですが、日本では人々の気持ちを盛り上げても、プラスチックフリーの商品を買える場所がないんです。なので、私たちが「プラスチックフリーのコーナーを設けてみませんか」とお店側に提案するような活動をして、企業にも働きかける必要があるとひしひしと感じました。

しかし、日本側の企業努力の姿勢に疑問を感じる節もあります。

日本のテレビ番組でプラスチック特集が放映されたときに「プラスチックフリーを求める意見を消費者が言ってくれないと」と企業の広報担当者が言っていたのをみて残念な気持ちになりました。

もちろん消費者側から声をあげることも大事ですが、思っていても実際に行動に移さない人が大半じゃないですか。

でも、企業側が努力してプラスチックフリーの売り場を少しでも設けることができたら、プラスチックフリーの製品を買いたい人はそこに行って買えますよね。なので、企業側にも努力をしてほしいですね。

KoKeBeeの思いを日本へ

KoKeBeeでは、みつろうエコラップを実際に作るワークショップを開講しています。参加者は環境問題に興味があってみつろうエコラップを実際に使ったことがある人から、全然知らない人までさまざまです。

ワークショプでは環境ホルモンの話やプラスチックのせいで海の動物が苦しんでいるという話をするのですが、ショックを受ける方が多くいます。けれど最後には「今日からちょっとずつプラスチックフリーを意識して生活します」とみなさん言ってくれますし、なにより参加者の方がポジティブな気持ちで帰っていく姿をみると嬉しくなりますね。

ワークショップに参加された方に特に人気な「ビーズワックスシート」。実は開発に1年かかりました。ビーズワックスシートとは、みつろうブレンドワックスをシート状にしたもの。自分の好きな布を使って、ご自宅でもみつろうエコラップを作ることができます。

みつろうのブロックをおろし金でおろして、鉄板の上にパラパラと撒いてオーブンで焼くのがビーズワックスシートの主流な作り方なのですが、一度作るとおろし金も鉄板もみつろうだらけに。それを手作り好きな人も手軽に楽しめるようにしたいと思いました。

丸いビーズ状になっているみつろうを作りたいなと思ったので、オーブンシートの上や水の中にみつろうをポタポタたらしてみたのですが上手くいきませんでした。専用の機械がないとビーズ状のものはできないのかと思っていたなか、手作りでシートを作っている養蜂家の方を見つけて、これだったらできるかもしれないと思ったけれど失敗ばかり…。

シリコンの型を使ったら簡単にシートを作れることはわかっていたのですが、それは嫌だったんです。結果、木の板を敷いてビーズワックスシートを作り上げることに成功しました。簡単ではなかったので最初は私しか作れませんでしたが、今はみんな作れるようになりました。シート1枚1枚が手作りです。

「大切なものを守りたい」それが始まりでいい

どうしてもケミカルフリーとかプラスチックフリーな生活って質素でどこかダサいイメージがあるし、環境保全というと難しく聞こえてしまいますよね。ですが、電気をこまめに消したり印刷物を減らしたり、そういう簡単なことからできるものはいっぱいあるんです。もちろん、みつろうエコラップも使っていただいて(笑)

実はKoKeBeeも、みつろうエコラップに添えていた紙の説明書を廃止して、ウェブ上で閲覧できるPDFの説明書を使うようにしました。

環境問題について何か頑張ろうと意識することは大事なのですが、始まりは自分が楽しくなることや家族の健康を守りたいという思いをきっかけにしたものでいいと思うんです。

みなさん生活があって、家族がいて、それらを守りたいと思いながら生活していると思います。その中にKoKeBeeが1枚あるだけで循環が変わるのではないでしょうか。

例えば、お医者さんに行ってお薬をもらって家族の健康を支えているのであれば、お薬を飲まなくても家族の健康を守れる方法はあるのかなと意識的に考えてみるとか。そういう方向で自分にできることから始めてみるのがいいのかなと。なんせ楽しいのが一番ですからね。

私にも出来ることがある、本当に変えていける何かを

今回の日本視察で「百聞は一見にしかずだな」と強く感じました。なので、日本企業をオーストラリアに誘致して、実際にマーケットやヘルスフードを視察する機会を今後作っていきたいです。

ソープナッツを使ってお洗濯をしてみたり、オーガニックマーケットで買った食品で料理をしてみたりとケミカルフリーでプラスチックフリーな生活を何日間か合宿という形で体験してもらい、それを日本に持ち帰って自分たちのビジネスに生かしてもらう。そんなことができたらいいなと思っています。

それを成功させるのがまず第一歩かな。そしたら日本のマーケットも少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

そのほかにも、ケミカルフリーやプラスチックフリーな生活を紹介したエッセイ本を出版できたらいいですね。日本でもそういう本を書かれている方がいらっしゃるのですが、日本だと質素なイメージが強くて……。オーストラリアやアメリカで活躍されている方は、みんな凄くおしゃれなんです。なので私もおしゃれにやっていきたいです。

個人的な将来の夢としては、夫と2人で北の方にセルフビルドの家を立てて、半分自給自足の生活をしてみたいです。そういうことを考えるだけでももう幸せになってきます(笑)。

今こうしてオーストラリアの青い空を仰いで、太陽の光を浴びて風を感じているだけでも幸せを感じます。もうほかに何もいらないなと思いますね。

楳村 郁子

オーストラリアに25年在住。自身のアレルギーをきっかけにケミカルフリー、プラスチックフリーの生活をはじめる。15年働いた外資系金融業界でコーチングを務めた経験を元に、現在は「体質改善オーガニック食事療法コーチ」としてオンラインプログラムを開催、個別コーチングでも活躍中。

KoKeBee(こけびー)

みつろう、オーガニックホホバオイル、天然樹脂でできた食品保存用のみつろうエコラップなどを販売するブランド。日本らしい菊や亀の絵柄から、アボリジニのデザイナーが描いた美しく雄大なデザインまでさまざまな可愛らしいみつろうエコラップを取り揃えている。日本のこけしとハチを掛け合わせた「こけびー」ちゃんはおしゃべりの中から生まれたKoKeBeeのシンボルキャラクター。

KoKeBee ウェブサイト:https://www.kokebee.com

 

取材・文:佐藤 みずき 写真:濱田 紗衣

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