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教育/留学/習い事

その18 [壮絶なレギュラー争い]

Y子

31歳。ものごとをあんまり深く考えていないのでストレスは少ない。自分の身に危険が迫ると恐怖のあまり脳がヒートしてしまい、笑い出してしまうクセがある。以前バンジージャンプをした時、飛び降りた瞬間からケラケラ笑っていた。お化け屋敷でも笑い出すので、お化けにビックリされてしまう。19歳でメイクアップアーティストに憧れて専門門学校へ。その後ファッションショーなどの現場で働くが、給料が安すぎて、家の電気、ガス、水道を止められる。それでもコンビニのトイレや銭湯に通いながら粘り強く続けるが、毎日ツナ缶だけで生活していたため、体重が40kgを切ってしまい最後は栄養失調で倒れてしまうという経験を持つ。彼氏ができると何よりも優先してしまうため友達はほぼいないという残念なタイプ。現在セカンドWHでシドニー滞在中。

ブロッコリーニを束ねる作業

結局外から手を施して得た美貌というものは、一瞬の輝きでしかないと思う。私個人の経験上、肌つやがよく綺麗で若々しい人に『どんなお手入れしてるの?』と聞くと、ほとんどの人は『何もしていない』と答える。じゃあなぜそんなに肌のキメが細かく、肌つやがいいのか…? 思うにそれは、遺伝、もしくは本当は影でこっそりと上質な化粧品を使用していたりエステに通っている、もしくは気がつかないうちに普段の生活習慣のなかで体や肌に良いことをしているかのどれかではないだろうか。全部があてはまる人もいるだろう。だが経験上、『何もしていない』という人たちの共通点はみんな食べ物だった。それは野菜が好きということ。たしかに食べるもので人間の細胞は作られているので、肌の内側から美しくなっていくのは自然の原理だ。 なぜ、突然美容の話しが出てきたのかというと、スタンソープ滞在中にブロッコリーニを1ヵ月間食べ続けた私の肌は、今までの人生の中で一番調子が良いと思えたから。さらにダイエットもしてないのに余分な脂肪が落ち体重も減っていた。美味しいし、健康になるし、美容にもいい! ここはひとつ、ブロッコリーニ推進委員会でも作ってみようか。そんな愛しいブロッコリーニに別れを告げ、ガトンに戻ってきた私に、なんとブロッコリーニの定番作業の話が舞い込んできた。これでまたブロッコリーニが食べ放題だ! A子ともいっしょに居られるようになり、すべてが順調で文句のつけようがなかった。いろいろあったけど、大魔人ありがとう。結構いいヤツじゃん(あくまで上から目線)! そしていよいよ初日の作業。ガトンのあの夜、大魔人はニヤリと笑って『定番は実力がないと認めない』と言っていたがスタンソープでの実績があるので、気持ちに余裕があった。経験者の私は束ねたブロッコリーニをカットする作業。初心者はやらせてもらえない作業なので心の中で『よし! 』と叫ぶ。だが作業を始めて数分後…、ん? なんだろう、何かがおかしい。作業場は妙な緊張感に包まれ、みんな一言も話さずひたすら作業をしている。手元をみると、みんな手の動きが映像を早送りしているのかと思うほどの速さ。束ねられたブロッコリーニは次々に私のところへ投げられ山のようになっていた。『ちょっと、みんな速すぎ…、こんなペースじゃカットが追いつかないよ…』心の中でつぶやく。するとブロッコリーニが頭に飛んで来た。突然のことで驚き手を止めると『ちょっとあんた! 』といきなり誰かに怒鳴られた。『やる気あんの? 作業が遅い。カット誰かと代わって』と怒られてしまった。ここのリーダーで日本人女性のRさんだった。こ、こわい…。とりあえず『すみませんっ』と謝ったが、そのあとはゴムで束ねる作業に異動させられてしまった。このゴムで束ねる作業は初心者の登竜門で、長時間やっているとけんしょう炎になったり、指の皮が剥がれてしまう。それでも、怒られたばかりなので必死にみんなのペースについていこうとした。。Rさんはすかさず私のところへやってくると『あんたの束ね方は汚い、速ければいいってもんじゃないのよ』とまた怒られた。続けて『ここでは私がいらないと思った子は二度と来させないから』撃沈だ…。ヤバイぞ、目をつけられてしまったのか。彼女はそのあとみんなに向かって叫んだ『みんな遅い! もっと速く』みんなも『はい! 』と声を揃えて答えている。何これ、部活? いや…軍隊のまねごと? スタンソープでまったく同じ作業をしていたのに、この違いはいったい…。地方から上京してきた田舎娘のようになって、オロオロしていた。ホームシックになりそうだ(涙)。でも、そんなことは言ってられない。ここでレギュラーを外されたら、残された道はきっとネギ抜きだけだ。それだけはどうにか避けたい。もう部活でも軍隊でもいい、郷に入っては郷に従えだ。やるしかないと腹を括った私は目をギラギラさせ、誰よりも大きな声で『はい!』と叫んでいた。

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