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その20 [めんつゆのススメ]

Y子

31歳。ものごとをあんまり深く考えていないのでストレスは少ない。自分の身に危険が迫ると恐怖のあまり脳がヒートしてしまい、笑い出してしまうクセがある。以前バンジージャンプをした時、飛び降りた瞬間からケラケラ笑っていた。お化け屋敷でも笑い出すので、お化けにビックリされてしまう。19歳でメイクアップアーティストに憧れて専門門学校へ。その後ファッションショーなどの現場で働くが、給料が安すぎて、家の電気、ガス、水道を止められる。それでもコンビニのトイレや銭湯に通いながら粘り強く続けるが、毎日ツナ缶だけで生活していたため、体重が40kgを切ってしまい最後は栄養失調で倒れてしまうという経験を持つ。彼氏ができると何よりも優先してしまうため友達はほぼいないという残念なタイプ。現在セカンドWHでシドニー滞在中。

これだけは手放せない

めんつゆ。この調味料は本当に素晴らしい。今までの生活でめんつゆが登場するのはその名のとおり、そうめんや蕎麦などの麺類を食す時だけだった。私の人生ではほぼ必要ないというカテゴリーに入っていた。しかし、あるときから私が作る料理の中には欠かせない調味料となるのだった。ブロッコリーニの現場責任者であるRさんと私は、同年代ということが発覚し、すっかり仲良くなってしまった。休みの日は互いの家を行き来し料理を作ったり、お酒を飲んで人生について語り合った。一番の楽しみは、彼女が持っているニンテンドーのWiiで最新のマリオゲームをプレイすることだった。彼女はオージーの旦那さんと結婚していて移住してから大分経つ。そのせいか日本で流行っていることや、芸能ネタなどの話しをすると楽しそうに聞いていた。数回しか会ったことはないが、優しそうな旦那様でいつもラブラブで幸せそうだった。しかしそんな仲睦まじい夫婦でも悩みはあるらしい。例えば食事。彼女は毎晩旦那様と自分の食事を別々に作るそうだ。旦那様には肉中心のメニュー、彼女は野菜を使った和食が中心。毎晩2種類の料理を作るのは大変で、そんなに手間隙もかけていられない。そんなときに発見したのが万能調味料“めんつゆ”だったらしい。通常の煮物料理は出汁、砂糖、塩、醤油、酒などを使って調理する。入れる順番や量を測ったりと手間がかかる。ところがめんつゆがあれば、すべての要素を持っているのでこれ一本で事足りてしまう。実際に私が作った料理は肉じゃが、豚の角煮、かぼちゃの煮物。元から味が調っているので失敗などなく本当に美味しく出来上がる。好みによって砂糖などを付け足せばOK。日本食材が仕入れにくい外国の田舎ならでは発想なのかもしれないが、めんつゆは知る人ぞ知る万能調味料なのだ。ガトンでは手に入れることができないので、車で1時間ほど離れたブリスベンまで買いに行ってしまうほど。国際結婚をしている夫婦をみて思うことは、自分が育った環境や文化から離れて生活するのは本当に大変ということ。愛があればどこでも生きていけるのかもしれない。しかし、母国を愛する気持ちは誰にでもあるはず。日本人なら正月には初詣に行きたいだろうし、神社やお寺などのスピリチュアルスポットに行くと心が洗われるような気持ちになり活力が沸いてきたりするもの。国際結婚をしたある友達は海外で暮らし始めてから演歌が好きになったと言っていた。言葉では表しきれない情緒や心情が間接的な言葉や比喩を用いて表現されている。そういう歯がゆいような部分に日本の文化を感じるらしい。外国のストレートな表現に少し疲れてしまったのだろうか…。外国に住むと日本の良さが見えてくると言うけど、本当にその通りだと思う。実際にここに来て間もない頃、私も暇さえあればYOU TUBEで歴史の番組を見たり、大河ドラマのDVDを一日中部屋に閉じこもって見ていたこともある。私の場合はまだまだ新参者なので、日本の文化にどっぷり浸かることはなく、シドニーやメルボルンなど観光したいところも山ほどある。車でラウンドする夢もまだ果たしていないのだ。当分の間は日本文化から離れても楽しめるだろう。ただ、どこへ行ってもめんつゆだけは手放さないだろう。

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