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教育/留学/習い事

その21 [セカンドゲット危うし]

Y子

31歳。ものごとをあんまり深く考えていないのでストレスは少ない。自分の身に危険が迫ると恐怖のあまり脳がヒートしてしまい、笑い出してしまうクセがある。以前バンジージャンプをした時、飛び降りた瞬間からケラケラ笑っていた。お化け屋敷でも笑い出すので、お化けにビックリされてしまう。19歳でメイクアップアーティストに憧れて専門門学校へ。その後ファッションショーなどの現場で働くが、給料が安すぎて、家の電気、ガス、水道を止められる。それでもコンビニのトイレや銭湯に通いながら粘り強く続けるが、毎日ツナ缶だけで生活していたため、体重が40kgを切ってしまい最後は栄養失調で倒れてしまうという経験を持つ。彼氏ができると何よりも優先してしまうため友達はほぼいないという残念なタイプ。現在セカンドWHでシドニー滞在中。

2年目はメルボルンでゆっくり過ごしたい…

ファーム生活も残すところあと1ヵ月ほど。ブロッコリーニの定番で落ち着いた私は、Rさんとも上手くやっていた。作業も楽しくなり、新しく来る人たちへ指導することも多くなっていた。このまま目立たないように大人しく誠実な態度で過ごしてやっていればきっと大丈夫。2年目もオーストラリアを満喫することができる。その頃私は、ファームが終わったらA子といっしょに車でメルボルンに行こうと計画していた。メルボルンは、昔イギリス領だった頃の面影を色濃く残し、郊外へ行くと建物は繊細な技術を用いた中世的なデザインのものが多いらしい。石畳やしゃれたアーケードなど、街並みも優雅な雰囲気らしい。シティには路面電車が走り、まるでヨーロッパへワープしたように感じると聞いていた。しかも大好きなワインのファームがたくさんあるので、しばらくそこにいればワインが樽で飲み放題できると信じていた。2年目はそんなところでゆっくり過ごそうと2人で計画していたのだ。しかしひとつ問題が…。私より1ヵ月ほど早くガトンに来ていたA子のファーム生活はすでに3ヵ月経とうとしていた。ワーホリは時間制限があるので、いかに有効に時間を過ごせるかが大切なポイント。少しでも無駄な時間は使っていられないということだ。A子はもう3ヵ月間働いたので、ガトンにいる必要はない。私がセカンドを取るまで待っていっしょに行くと言ってくれたが、ここにいる必要もないし、大魔人がいつA子を襲ってくるかもわからない。そんな危険もあったので、まずはA子に先にメルボルンに行ってもらうことにした。さっそく私たちはA子の3ヵ月の就労証明書をもらいに大魔人の家に向かった。彼は愛人とけんかしてご機嫌ななめらしく、いつもに増して不機嫌そうだ。目がギョロッとしているので、目を合わせるとまるで催眠術にかかったように動けなくなってしまうほどの威圧感がある。そんな空気を察知したので出直そうかとA子に耳打ちしたが、私より天然な彼女は『なんで? 』という感じ。A子は、3ヵ月の就労を終えたのでビザ取得のための証明がほしいということを告げた。そのあとは想像したとおりだった。大魔人の一人劇が始まってしまった。最初のうちはA子に対しここに残ってくれと泣きそうな顔で懇願していたのだが、A子が頑なに拒否し続けていると今度は顔を真っ赤にして怒りだした。 『こんなに言っても言うことを聞かないのなら、おまえには就労証明は渡さない』 こうなったら止まらない。『今すぐここを出て行け! もう顔も見たくない』と言い出したのだ。さらになぜか隣にいた私にも『お前も今日中に出て行け』と言われてしまった。いったい何なんだ、このオッサンは(怒)。A子のことを本気で好きになってしまい感情的になったのかもしれないが、こっちもセカンドをもらうために今までせっせと働いてきたのだ。これでビザが貰えないのならここに来た意味がまったくないではないか。2人とも大魔人に反論したいのだが、彼の怒りは半端ではなく、まわりにいたワーカーたちも驚いている。今は何を言っても無理そうだと思い、私たちは家を出た。A子は彼の迫力に泣き出してしまい、私も慰めることができないくらい動転していた。もうメルボルンでのんびり過ごしたいどころではない。これから他のファームで3ヵ月間仕事をしても、タイミング的にもうセカンドをゲットできない。強制送還なのだろうか…。シェアハウスに戻った私たちは怒りの矛先も見つけられないまま荷づくりを始めたのだった。

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