心理療法のいろいろな考え方や技法にも潮流があり、ここ十年から二十年くらいは「認知療法」という、物事の見方を気分を落ち込ませたり不安にならないように調整する療法が、大流行りです。これに最近は、自分の心の中の考え事や現象に飲み込まれてばかりいずにどう付き合うかという、集中力の持って生き方に工夫を加える「マインドフルネス」という考え方を織り交ぜた療法が流行りになっています。
認知療法的には、日本人には典型的な認知(物事のとらえ方)の癖として、以下のようなことがあげられるように思います。
1。合理的に頭で考えるようにする。日本では強調される「情」や感情にばかり流されない。
2。証拠のないことは思い込んで行き過ぎない。空気を読むことを強調される日本社会で過ごしていると、度の過ぎた不安や勘ぐりも育ってしまいがち。まだ言われていないことは考え過ぎず、言われてから心配したり考えることにする。
3。日本では過度の「心配性」がかなり一般的で、それは個人が陥りやすい状態として、結構な程度容認されている。しかしそれは文化や社会のあり方によるもので、例えば西洋社会では過度の心配性は「ナーバス過ぎる」または「子供っぽい」と評価されてしまう。(もちろん西洋社会が良いことばかりではなく長短あることは、住んでいれば良く知っているものだが)。過度の心配性であることを良しとせず、合理的な判断のできる成熟した大人でありたい、というイメージを持つ。
4。合理的な自己主張や話し合い、ネゴシエーションは良し、とする。攻撃的・感情的、または受身的になりすぎないものであれば。角が立つことを心配しすぎて、しなくてはならない話し合いまで避ける必要はない。合理的な大人として話し合い、または提案し、その後の気分的な「お釣り」に関しても合理的に受けとめる。「少し気分が揺れたけれど、だからと言って、言わないという選択肢はあったのか?それでは事態が何も変わらず、結局ストレスをためこんだ。言わないという選択肢はなかったし、言ったことは後悔していない」ととらえられるようにする。
このような認知的な調整を、カウンセリングで行うこともあります。
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