細い絹糸を張り巡らせて空間を作り出す現代アーティスト・池内晶子氏の個展「Akiko Ikeuchi Silk Thread Installation」のオープニングセレモニーが、6月3日(金)にジャパン・ファウンデーション(JPF)にて行われた。絹糸の性質を熟知して制作され、国内外から高い評価を受ける彼女の作品を一目見ようと、100名余の招待客が集まった。
個展についてはこちらから。
セレモニーが始まるまで、琴奏者の大野唱子さんが演奏で参加者をおもてなし。参加者は歓談も忘れその見事な音色に聞き入った。
ちなみに大野氏は25日(土)に、琴の演奏会とワークショップを開催する予定。詳しくはこちらから。
和田好宏・ジャパン・ファウンデーション・シドニー所長 Phoebe Rathmell氏
先月新しく着任したばかりの和田好宏JPF所長(左)と、同展を企画したMCA(Museum of Contemporary Art )のキュレーター、Phoebe Rathmell氏(右)が冒頭にまず挨拶に立ち、それぞれ、同じ言語を交わさなくても通じ合えるアートの魅力や参加者への感謝の意を述べた。
次いで行われた池内氏のスピーチでは、1988年から絹糸を考究し続ける興味深い話を披露。
今回は彼女が2年をかけて作り上げた3つのインスタレーションが展示されている。
「私の作品は絹糸を結んで、切って、結んで、という行為を繰り返してできている作品です。それぞれ重力と磁力と張力のバランスによって形作られており、その結び目には時間が刻み込まれているのだと私は考えています」
「絹糸は人のたんぱく質の構造と似ていて第二の皮膚とも呼ばれる非常に柔らかい素材です。そのため、人の呼吸や空気中から湿気を帯びて伸縮します。人が作品に近づくと風が起きて作品が揺れます。近づいて見る人の口に含まれる水分でも糸が伸縮するので、人が増えれば増えるほど湿気で糸が緩み作品全体が下に下がり、人が離れれば湿気がなくなり元の緊張感を取り戻して静かに静止します。この絹糸の性質から起こる現象を利用して、人が作品に関わるというのはどういうことなのかを表現しています」
「2011年3月11日に東日本大震災が起き、大地が常に動いているということをまざまざと感じました。安定していない足元の上で私たちの生がどのように成立するのか、ということを意識しています。
また作品を天井からつるしている4点は、東西南北に合わせています。そしてこの3つのインスタレーション自体も東西南北、つまり磁力を基準として設置しています。磁力というのは常に安定せず変動しているものなんですね。その中で3つの作品ひとつひとつが独立せずそれぞれ関連している。世界というのは色々なものがバランスを取り合って成り立っており、もしその糸が切れてしまえばバランスを崩して壊れてしまう可能性を持っている、という概念を基に制作しました」
最後に、「楽しんでいただければ幸いです、ありがとうございました」と池内氏がスピーチを締めくくると、会場は大きな拍手に包まれた。
セレモニー後は鑑賞に戻る人や、池内氏に直接質問をする熱心な参加者なども見受けられた。
和田所長と池内氏の歓談 池内氏に質問する参加者
なお、この「Akiko Ikeuchi Silk Thread Installation」は、7月1日(金)まで開催。ぜひお見逃しなく!
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