ワーホリお仕事図鑑
「ワーホリだから、限られた業種でしか働けないだろう」なんとなくそう思っていませんか? どんな仕事でもできるのが ワーキングホリデービザのいいところ。オーストラリアでさまざまな 仕事をしているワーキングホリデーメーカーたちに注目してみましょう!
――現在の仕事をはじめるまでの経緯を教えてください。
私は日本の大学生で本来なら卒業の年ですが、昨年の就活中に自分のやりたい仕事とご縁がなくて……。出版取次の販売をマネージメントする仕事をしたいんです。自分の希望する企業に入るためには、スキルアップが必要だと思い、1年間休学して今年1月、ワーキングホリデーでオーストラリアのシドニーに来ました。もともと11カ月間の滞在で自分がひと回り成長できるようなことをすると決めていて、帰国後は来年の就活に向けて準備をする予定です。最初の1カ月は語学学校に通いましたが、そのあいだに住む場所と仕事を探していた頃は、やっぱり焦りましたね。
そんな時に街を歩いていて、よく「テツおじさんのチーズケーキ」*のバッグを持っている人々を見かけることに気づいたんです。英語を勉強したかったので最初は日系のお店ということで抵抗があったものの、Regent Placeというちゃんとしたビルに入っているし、変なお店じゃないだろうと思って求人に応募することに。本当はお菓子を作る工場スタッフを希望していましたが、ちょうど「AGS102」**の前リーダーが日本に帰国する時期だったこと、私が大学4年間K-POPの完全コピーサークルで踊っていたことから、「新リーダーを探している。店内のメイドカフェのサーブとAGS102のリーダーをやってみないか」と提案いただいたのが、このお仕事を始めたきっかけです。
ベースのお仕事は、カフェのサーバーのリーダーとしてお客様を迎えながら、クレーム対応や新人の教育、ホールの衛生管理などをしています。メインのお仕事では、AGS102でもリーダーとして各ステージのセットリスト、パフォーマンス中のライトやマイクの調整、グループの新曲、ダンスの振り付けとステージのすべてをアレンジしています。AGS102のイベント企画もしていて、例えば今年の「SMASH!」(日本ポップカルチャーの祭典)でもパフォーマンスを披露しました。
* てつおじさんのチーズケーキ
素朴な味わいが特徴の福岡発祥のエアーチーズケーキ。現在は「Uncle Tetsu」として日本以外にも北米、オセアニア、アジア各地に店舗を展開している。シドニーの店舗の地下には、メイドカフェ「Uncle Tetsu’s Angel Garden」が併設。
http://www.uncletetsu.com
** AGS102
メイドカフェ「Uncle Tetsu’s Angel Garden」の略。Jポップのダンスグループ。現在9人のメンバーが在籍し、全員が日中はカフェで働く“会いに行ける”アイドルたち。同カフェの特設ステージにて毎週2回各21時からパフォーマンスを開催中。水曜日はミニショー30分($8)、土曜日はメインショー60分($15)。
Facebook:https://www.facebook.com/ags102ut/
Instagram:@ags102_ut
――オーストラリアを渡航先に選んだ理由は何ですか?
治安のよさですね。両親に心配をかけたくないので、安心して滞在できる国がよかったんです。父には「オーストラリアになんか二度と来たくないと思うくらいがんばって、何かをつかみ取ってこい」と、背中を後押しされました(笑)仕事が忙しくて英語の勉強時間はあまりありませんが、今思うと、父に言われたことについては達成できそうかな、と感じています。
――仕事を始めてみての感想を教えてください。
お客様に毎回楽しんでいただけるようにカフェもステージも趣向を凝らしていますが、日中はカフェで働いて夜にステージがあり、閉店後から深夜1時くらいまでダンスの練習やリハーサルをするので、日々1日が終わるのがすごく速くて……。リーダーの私も含めてメインで踊っているメンバーが今年の11月で帰国してしまうので、新人のデビューが決まると、練習しながらどんどん場数を踏ませて慣れてもらい、私たちが帰国した後にはメインメンバーで踊ってもらえるように準備しているところです。
毎週2回のステージは週ごとに違うテーマがあり、第1週はメンバーの日で、例えば「Azusa Day」なら私のエンジェルカラーの青いものを身につけている方には割引サービスがあります。他にも第2週の「Boys Day」なら男装の方、第3週の「Anime Day」ならコスプレイヤーの方に割引サービス。第4週のステージは毎月違うテーマを設けていますが、今月は「Love Live Day」で「ラブライブ!」***の世界観を味わえるように、メンバーがキャラクターの髪型や衣装をまねて「ラブライブ!」の曲を歌いました。9月は第5週まであったので「Matsuri Day」を企画しました。日本のお祭りのようにカフェスペースに屋台を出すんです。とても楽しいですよ。
メンバーと役割分担をしてひとつのステージを作り上げていきますが、メンバーにいろいろとサポートしてもらえるからこそ日々をこなせていると思います。メンバー同士は仲が良くて、私はメンバーの1人と同じシェアハウスに住んでいるくらい(笑)いっしょに過ごす時間が長いので、自然と仲良くなりました。
*** ラブライブ!
学校で結成された架空のアイドルグループの奮闘と成長を描く日本のメディアミックス作品群。
――仕事をする上での苦労を、どのように乗り越えていますか?
ステージが成功しても失敗しても責任はすべて自分にあるので、いつも緊張感を持ってやっています。各ステージで新しい味を出すための企画ミーティングをしますが、毎回アイデアを出すのがむずかしいですね。毎回違うステージなので準備にも追われます。毎週そんな感じですから「先週セットリストを考えたのに、もう今週になってる!」と息をつく暇がないというか(笑)そんな中、メンバーのサポートにすごく感謝しています。サポートを受けながらも、結局自分がしっかり指揮をとって進めていかなければいけませんから、やっぱりプレッシャーはあります。
私がメンバーに入った当初、AGS102の活動は簡単なメイドショーのみでイベントはなく、観客は22人程度という状態でした。「このままじゃいけない。イベントか何かを定期的に開催して、もっとお客様に足を運んでもらえるようにできないかな」と思い、現在のように毎週違ったステージやイベントを設ける形にしたんです。そのかいあってか、観客が増えて最高88人に。客層は日本のアニメが大好きなオーストラリア人の方々。ほとんどオージーの人々で、日本人は今は多分いらっしゃらないと思います。がんばったらがんばった分だけお客様も反応してくださるし、皆さんいい人ばかり。
お客様と英語で話したり、大きなイベントのミーティングはすべて英語なので、それには四苦八苦します。ミーティングでは皆さん分かりやすく話してくださるのですが、私はシンプルな英語しか使えないので、皆さんには直球で響くらしく「言い方強いね」と笑われます(笑)
――現在の仕事を通じてよかったこと、成長したと思うことはありますか?
リーダーという役職を任せてもらって、何をするにも責任はすべて自分という環境で働き、もちろん失敗もしましたが、今ではマネージメント力を培えたかなと思っています。一回り成長するためにオーストラリアへ来たので、こうして自分のやりたかったことができて本当に幸運でした。会長のテツさんから直々にご指導していただけたことや、リーダーに選んでくださった方々に感謝しています。プレッシャーもありますけど、とても幸せです。
特に「SMASH!」のステージには感動しました。「SMASH!」には今まで“アイドル”というジャンルがなかったそうで、日本のアイドルと紹介されても「声援や掛け声なんかしてもらえないんじゃ」と、始まる前は不安だったんです。でも当日ステージに立ってみると、カフェの常連の方々が皆さんでいっしょに座ってくださっていて、ペンライトまで振って一生懸命にAGS102を応援してくださって。3ステージありましたが、どの回も泣いてしまいました(笑)。彼らのおかげで会場内はあふれ返るほど盛り上がり、終了後にスタッフの方から「AGS102はファンが多いから、来年はメインステージで1時間のショーを検討しますね」と言っていただけたんですよ。
――最後に、今後の目標を教えてください!
リーダーとしての仕事を続けながら、AGS102が成長できるように最後まで先頭を切って走り抜いていくというのが、ひとつの目標です。オーストラリアで培ったものをしっかりと活用して、来年の就活でこそ自分のやりたい仕事をつかみ取りたいと思います。
★今年11月にメルボルンで開催される「Medman ANIME」にも出演予定のAGS102! 最新情報はこちら
取材・文:武田彩愛(写真は一部ご本人より提供)
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