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「ワンコの保育園」犬のデイケア/中谷雄介さん(23歳)

ワーホリお仕事図鑑

「ワーホリだから、限られた業種でしか働けないだろう」なんとなくそう思っていませんか? どんな仕事でもできるのが ワーキングホリデービザのいいところ。オーストラリアでさまざまな 仕事をしているワーキングホリデーメーカーたちに注目してみましょう!

――現在の仕事をはじめるまでの経緯を教えてください。

約11カ月前に来豪して、最初はアデレードとシドニーの語学学校に各1カ月間ずつ通いました。卒業後はジャパレスを2件ほど転々として働いていましたが、ドッグケアの店のグルーマーを担当している日本人の知人から、犬を洗うウォッシャーの仕事を紹介してもらって。ジャパレス自体に特に不満はなかったものの、やっぱり英語を勉強するならローカルの環境に身を置くべきだし、何より犬が大好きなので「犬と一緒にいて仕事ができるなら楽しそうだな」という思いから雇ってもらい、カジュアルスタッフとして週一で働きました。

働いている内に、同じ店のデイケアのフルタイムスタッフに欠員が出たという話を耳にして。その空きに応募するメールをオーナー宛に送ったんです。最初はきっぱり断られました。「受付の仕事もあるから英語ネイティヴを探している」と言われて……。それでもオーナーが店に立ち寄った時、もう一度「一所懸命やるのでデイケアをやらせてもらえませんか」と直談判頼してみたところ、今度は「わかった、考えてみるよ」と。ちょっと勇気は要りましたが、それで結果的にウォッシャーの仕事を続けつつ、デイケアの仕事も始めることになりました。

――オーストラリアを渡航先に選んだ理由は何ですか?

じつはオーストラリアに来る前は、フィリピンでも英語を勉強していて。「もっと英語力を伸ばしたい、勉強だけじゃなくて仕事をしてお金を稼いでみたい」と思い、ワーキングホリデーを選びました。オーストラリアは時差も少なく、中でもアデレードは勉強するのにいい環境、シドニーは仕事が多くあると聞いたので、学校に行きつつ職探しをすることにしました。

――仕事を始めてみての感想を教えてください。

僕が働くドッグケアの店は、デイケアルームとグルーミングルームが併設されていて、ウォッシャーはグルーマーのいる場所で仕事をします。そこに日本人のグルーマーがいてくれたので、覚えることは多かったけれど大きな戸惑いは少なく、「前より給料が少しいいかな」という印象。犬を洗っていると腰に負担はきますが、やっぱり犬好きなんで(笑)。いろいろな種類の犬に触れるし、楽しかったですね。

デイケアの主な仕事は、飼い主さんが連れてきた犬を預かって世話をすること。人に説明すると大抵「犬と遊んでお金も稼げるなんてうらやましい」と言われます(笑)。実際のところ単に遊ぶだけじゃないので、楽しい分だけ苦労もあります。例えば、朝一番に犬たちの排泄物のお世話をするとか。

近所迷惑にならないよう午前9時まで犬たちは屋内にいて、その後に裏庭へ放してあげます。僕らスタッフがボールやロープで遊んであげることもありますが、人間が犬と遊んでいるより犬同士が遊んでいる方が理想的。スタッフは犬同士が仲良くできる最初の架け橋というか、手助けをしてあげるんです。じゃれていた犬たちがちょっと乱暴になってきたら仲裁したり、この2匹は仲が良くないなと思ったら少し離してあげたり。人間の子どもを預かっているのと同じで、仕事中ずっと気を抜けません。オーナーにも「動物としてじゃなく個々の犬として見るように」と言われています。

午前中と午後に1回ずつ散歩をさせてあげます。僕は今では3、4匹の犬を一度に連れて行きます。小さい子と大きい子が混じっているとリールがもつれる危険もあるので、同じくらいのサイズで同じくらいのアクティブさの子を一緒に連れて行きます。大きい子はコントロールが大変!

他にも誕生日の犬にはケーキやお肉も用意してあげたり、飼い主さんが「ウチの子どうなってる?」と心配しないように、「こんな感じで遊んでいますよ」と預かっている犬の写真をSNS上にアップしたりします。午後6時の閉店時間までに飼い主さんが引き取りに来ますが、宿泊する場合はスタッフが自宅に連れて帰って世話もします。日本だと犬は自宅でお留守番させておく飼い主さんが多いと思いますが、オーストラリアでは「1匹でお家に残しておくのはかわいそう」という考えから、デイケアに飼い犬を預けて他の犬たちと遊ばせてあげるんです。犬の社交性を育てることにも積極的で、ケージに入れて分けることはしません。

――仕事をする上での苦労を、どのように乗り越えていますか?

ジャパレスや犬のウォッシャーと比べて、オージーのスタッフたちとのコミュニケーションに苦労しました。英語で何か教えてもらうにしても、なんとなく聞き取って間違ったことをしてしまうと仕事としてダメじゃないですか。できるだけ自分からコミュニケーションをとるように心がけましたが、一度で聞き取れないことが多くて聞き直したり、相手がゆっくり話してくれることに「気を遣わせてるなあ」とか「申し訳ないなあ」とか思ったりして、初めはしんどかった……。

世話する犬の名前を覚えるのも、慣れない内は大変でした。同じ種類の犬だと「みんな一緒やん!どう違うんや」って(笑)どの子も名前で呼ばないと言うことを聞いてくれないんですよ。多い時には50匹くらい預かりますし、発音しにくい名前もあります。それにデイケアは躾もしっかりするので、ダメなことはダメということを根気よく伝えて、どこまでが遊びの範疇で、どの線を越えたら止めるべきかという見極めも必要。本当に人間の子どもと一緒なんですけど、それ以上にはっきり伝えないと伝わりません。しっかり目を見て「ノー」ってやると「あ、ヤバイ」って、犬も分かってくれます(笑)。先輩スタッフのやり方を見ながら、積極的に質問をして解決していきました。

――現在の仕事を通じてよかったこと、成長したと思うことはありますか?

最初は僕もずっと避けられていた誰にも懐かないシャイなイタリアングレーハウンドがいたのですが、徐々に距離を縮めていったらある日急に懐いてくれたことがありました。その時はうれしかったですね。お世話する犬は、どの子もかわいいし、僕にも懐いてくれるから楽しくて。他のスタッフから「この子は君のことが好きだよね」と言われて「やっぱりそう思う?」なんて返したり(笑)。いろいろな種類の犬と出会いますが、特に白くてふわふわのサモエドがお気に入り。カブードル(キャバリアとプードルのクロス犬種)やボーダーコリーも好きです。

もちろん完璧じゃないけれど、環境のおかげで英語力は伸びましたし、積極的に行動するという部分が自分の中で成長したかなと思います。

――最後に、今後の目標を教えてください!

日本に帰国すると寂しくなりますね。もうすでに寂しい……。人なら訪ねに行けますけど、デイケアの犬たちは、ここでしか会えませんから。将来は犬を飼いたい。サモエドは毛が抜けまくるので飼うってむずかしいと思いますが(笑)

カナダやイギリスなど他の国へも行きたいとは思いつつ、帰国したらとりあえず就職を考えています。英語をサブ的なツールとして使っていける仕事が希望。まだまだいろんなことに挑戦していきたいです。

 

★Camperdown近くにお住いで、ワンちゃんをデイケアに預けたい方やグルーミングしてほしい方、ドッグケアのPows Of Funに相談してみましょう!

 

取材・文:武田彩愛(写真は一部ご本人より提供)

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