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プードル部門最優秀賞のドッグトリマー/高山結可(ゆいか)さん(26歳)

ワーホリお仕事図鑑

「ワーホリだから、限られた業種でしか働けないだろう」なんとなくそう思っていませんか? どんな仕事でもできるのが ワーキングホリデービザのいいところ。オーストラリアでさまざまな 仕事をしているワーキングホリデーメーカーたちに注目してみましょう!

――現在の仕事をはじめるまでの経緯を教えてください。

日本では犬の看護とトリミングを学べる専門学校を卒業し、動物病院に勤めていました。昔から犬が好きで、動物に関係する仕事がしたいと思っていて。実家で犬も飼っていましたが、フィラリア症に感染して亡くなりました。注射や投薬で予防できていた病気なのに、私の犬についての知識が足りなかったばかりに……。そうした経験から、犬の命を助ける看護と、衛生面できれいにするトリマーの両方を学び始めたんです。

専門学校時代、オーストラリアまで研修旅行で来たことがありました。ゴールドコーストで1日目にドッグサロンを訪問する機会があって、その時オージーに囲まれて楽しそうに働いている日本人を見かけて。その方がワーキングホリデーで滞在中と知った時に、「私、オーストラリアに行く」ってもう決心したんです。専門学校卒業後も「3年間社会人経験を積んでから行く」と決めて動物病院に就職したので、すごく計画的でしたね(笑)。

渡豪してすぐにケアンズのファームの仕事でセカンドビザを取り、トリマーの仕事をするためにシドニーに移りました。最初は、スタンモアにある「Maru-Maru Pet Service」(現「マルマルグローバルグルーミング」)という日本人経営のドッグサロンと、そこで紹介していただいた他のローカルドッグサロン2件と、合計3店舗で働きました。現在働いているドッグサロンも紹介ですが、日本人トリマーは技術レベルが高いと言われていてオーストラリアでは需要がありますね。

――オーストラリアを渡航先に選んだ理由は何ですか?

私は自然も大好きだし、動物も大好き。「もともと海外に住んでみたかったし、オーストラリアなら海の近くで生活できるし、自分の好きな仕事ができたら夢がいっぱい叶う」と思って。今はシェアメイトが犬を飼っているので、一日中犬といっしょにいます。

オーストラリアには「ノーリードエリア」というリードを外していい区画がありますが、囲いがあるわけでもないのに犬たちは飼い主に付いて行ったり、子犬の頃からデイケアに通っている子も多いからか犬同士の遊び方も知っていたり、犬たちがとても幸せに生活しているように見えます。日本には「座敷犬」っていう言葉があるじゃないですか。この国にはそういう概念がありませんよね。

――仕事を始めてみての感想を教えてください。

今働いているドッグサロンはオージーのスタッフばかりで、私の中では日系コミュニティを離れての初めての挑戦でした。日本のトリマーの仕事というと、受付をして犬を洗ってカットを終えるまで、すべての行程を自分でやりますが、オーストラリアでは分担されているので、トリマーは犬のカットに集中できます。

カットの仕方も日本はハサミ重視。ハサミで丸く顔の形を作って足は長くブーツカット、というようにオシャレにすることが多いですが、オーストラリアの犬はほぼバリカン仕上げ。体も足も同じ長さで、求められるのはスピードなんです。日本だと1匹に2、3時間かけることもありますが、今のサロンでは必ず1時間半で仕上げると決められていて。手早く仕上げることが大事。そうやって1人5匹くらいの犬を担当するので、サロン全体だと毎日12、13匹の犬をカットしていることになりますね。最初はそのスピードにまったくついていけなくて、本当に苦労しました。終わらなくて先輩に手伝ってもらったことも。毎日が時間との戦いです。

預かった犬が入って来るとまず「今日のカット」フォームを確認して、毛玉があるとカットの時間が長引いたり、ひどい場合だと刈ったりする必要があるので、それを受付に伝えます。次に犬を洗いますが、シャンプーにもいろいろ種類があって、脂っぽい子はクレンジングシャンプーとか、白い子はホワイトニングシャンプーとか。ちょっと洗濯物みたいな感じですね(笑)。洗い終わると、掃除機のように強いジェットドライヤーで水と毛を飛ばして、顔はスタンド式のドライヤーで優しく乾かします。その後、台の上に乗せてハサミとバリカンを駆使してトリミング。ハサミはオーストラリアに来てから買い揃えました。大型犬が多いので、日本より大きいハサミの方が早くカットできるんです。バリカンも日本より大きくて重いから、肩が痛くなることも。終わり次第、受付にフォームを持って行き、飼い主さんに電話をして犬を迎えに来てもらいます。

仕事を始めて2、3カ月で、オーナーから「自分のやりたいようにやってほしい」と言われるようになりました。熱意と技術を認めてもらえたのかなと、信頼されてうれしかったです。

――仕事をする上での苦労を、どのように乗り越えていますか?

最初は英語も慣れていないので、受付との連携がうまくいかないことがありましたが、オージーのスタッフはゆっくり話してくれるし、分かりやすく説明してくれます。空き時間に他のスタッフから英語を教えてもらい、聞き取ったフレーズを壁に貼ってもいます。分からない時は分かるまでお互いがんばります。私もがんばるし、相手も理解しようとくれる。それって大事ですよね。トリマー同士で世間話もしますし、楽しく働いています。

トリミングに関しては、日本でやって来なかったカットがむずかしい。オーストラリアには本当にさまざまな犬種がいるので、日本では見たことのなかった犬もたくさん来るんですね。例えば、エアデールテリア。毛を切るんじゃなくて“抜く”んです。ちょっと痛そうな響きですが、そういう長く硬い毛を持つ犬種で。専門学校で習わなかったことは、先輩から教えてもらったり本を読んだりして勉強しました。

日本人のトリマーコミュニティがあって、そこに先輩がたくさんいるんです。だから仕事の相談もできるし、いろいろ教えてもらえます。時々「トリマーごはんの会」があって、他のお店の様子や日本との違いも聞けるので、とても助かっています。

――現在の仕事を通じてよかったこと、成長したと思うことはありますか?

仕事のかたわら、トリマー兼プードルのハンドラー(ドッグコンテストなどに出場する犬の調教師)として活躍している日本人の先生が開催しているプードルのトリミングのセミナーに通って、毎年「Sydney Royal Easter Show」の中で開催される「PIAA Grooming Competition」のトイプードル部門に、2016年に初出場しました。ワーホリの最後の思い出にと思ってがんばりましたが、伝統的なカットや体型補正の出来を審査された結果、何も取れなかったのが悔しくて……。学生ビザに切り替えてもオーストラリアに残ることを決めました。その後また1年間、仕事の合間にセミナーに通い続けて、1匹のトイプードルをカットする日々。「次回は絶対に賞を獲るぞ!」と意気込んで今回(2017年)の大会に挑んだ結果、トイプードル部門と「Novice Encouragement Award」部門の2つで最優秀賞を獲ることができました! 先生にも「成長した」と言ってもらえて、本当にいい経験でした。

日本では自分1人でトリミングをしていて、毎日必死、自分で調べてやることが多かったけど、オーストラリアに来てからいろいろなトリマーさんと出会い、各国のトリミング事情も聞いている内に、トリマーとしての価値観が広がったというか、「知らないことがたくさんあったんだ、もっと勉強したい」という気持ちになりました。この国を選んで本当によかった。オーストラリアにはハッピーでオープンな人が多くて、私自身もポジティブになったと感じます。毎日忙しいけど、みんなが楽しく仕事をしているから私も楽しい。プライベートも充実していて、自分は本当に変わったと思います。英語の勉強は計画的じゃないんですけど(笑)犬関係ならものすごく話せます。好きだから!

――最後に、今後の目標を教えてください!

トリマーは技術が求められる職業。向上心を忘れずに勉強し続けて、飼い主さんから「あなたにカットしてほしい」と言われるようなトリマーに、スタッフから「あなたと働きたい」と言われるような人間になりたいです。オシャレなカットは日本の方が進んでいるので、丸く仕上げるとか流行りのカットとか、日本からヘアカタログを仕入れて両国のいいところを取り入れていきたい。日本とオーストラリアの技術を掛け合わせて、日本のきれいなカットとオーストラリアのスピードを合わせたら最強だと思います。来年もドッググルーミングコンテストに挑戦したいですね、今度は上のクラスで!

 

★Camperdown近くにお住いで、ワンちゃんをデイケアに預けたい方やグルーミングしてほしい方、ドッグケアのPows Of Funに相談してみましょう!

★ドッグトリミングサロンやスクール、トリマー向けワーホリプログラムを提供しているマルマルグローバルグルーミング

  

 

取材・文:武田彩愛(写真は一部ご本人より提供)

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