昨年末にワーキングホリデーで渡豪し、12月にグランドオープンした日本発のリラクゼーションスペース「Raffine Tokyo」で活躍する木村久美子さん。
日本の確かな技術とおもてなし、そして伝統とモダンな雰囲気を融合させた、新たなブランドデザインコンセプトを持つ店舗のセラピストとして、よりよいサービスが提供できるように日々奮闘中。
英語力ゼロからのスタートにも関わらず、仕事もオーストラリア生活もポジティブに楽しむ彼女の秘訣に迫ってみた。
――自己紹介をお願いします。
昨年12月にオープンしたRaffine Tokyoで、マスターセラピストとして働いているNami(木村久美子)です。シドニーに店舗を構えるRaffine Tokyoでは、オーストラリアのお客様にセラピストの名前を覚えてもらえるようにイングリッシュネームがあり、私は「新しい波に乗る」や「サーフィンに挑戦してみたい!」、「漫画『ONE PIECE』のナミが好き」という理由から、Namiという名前を選びました。
――日本でもセラピストとして働いていたのですか?
はい、セラピストとして5年半の勤務経験があります。銀座の店舗で働いていて、帝国ホテルのすぐ近くということもあり、外国人のお客様の割合がかなり多かったですね。
当時の私はまったく英語を話せなかったのですが、とにかく一生懸命に施術をして、笑顔でお客様を送り出すサービスを心がけていました。私が英語を話せないにも関わらず、多くのお客様がオーバーなくらいに喜んでくださって、なかには「国に連れて帰って施術してもらいたい」とおっしゃる方もいました(笑)。
毎日のように外国人のお客様の施術をしていると、「もっと英語が話せれば、あんなことや、こんなこともできるのに」といった思いがどんどん募っていき、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアに渡る決心をしました。
――オーストラリア生活の部分で苦労したことはありますか?
やはり英語ですね。オーストラリア渡航までの準備期間が短かったこともあり、”ゼロ英語”からのスタートだったので、シドニーでも未だに苦労する日々を送っています。はじめはレストランやカフェでの注文もできないレベルでした。その他にも、電車の運行が急に変わってしまい、アナウンスの内容がまったく聞き取れなくて、なかなか店舗に辿り着けずパニックになったこともありますが、今となってはいい思い出です。
ただそれでも、意外となんとかなるんだなって。オーストラリアでの生活は想像していたよりもストレスがなくてびっくりしています。「こんなにも英語を話せないのに大丈夫かな?」と、自分自身いつも思うのですが、最終的にはなんとかなるんですよね(笑)。
――オーストラリアで仕事を始めてみての感想を教えてください。
私はRaffine Tokyoのグランドオープンスタッフとして働いていますが、最初の1カ月間は本当に大変でした。日本人セラピストの他にローカルスタッフが3名いるので、彼らと何度も話し合いを重ねて試行錯誤を繰り返し、みんなで協力しながらお店を立ち上げたという感じですね。
日本とオーストラリアでの違いもあります。例えば、日本だとお店の前で店内の様子を伺っていたり、ポスターを見ていたりする方を見かければ話しかけに行きますが、オーストラリアだとそれが一般的ではないようです。他にも、体格のいいオーストラリア人は強めのプレッシャーでしっかりと揉みほぐす施術を好む傾向があったり、施術に使用するオイルもはっきりとした香りのものが人気だったりと、日本とはまた違ったニーズがあります。
英語での接客も、片言ながらなんとかやっています。絶対に訊かないといけないことや専門用語などは、ローカルスタッフとの勉強会で覚えました。接客をする中で言葉が通じない時もありますが、自分の口からお客様へ話す努力をしています。
――オーストラリアで英語の壁を乗り越えて仕事をするコツはありますか?
本当に基本的なことになりますが、まずは笑顔を絶やさないということですね。そして声のトーンを1段階あげるということ。こちらからテンションをあげてお客様を迎え入れると、自然とそのテンションに釣られていい雰囲気のなか、コミュニケーションが取れることが多いと思います。
あとはあまり深く考えないということ。そもそも英語力がないことは日本にいた時から分かっていたので、うまく話せなくて当たり前というか。恥を忍び、ジェスチャーでもなんでも使えるものは使って、自分自身でコミュニケーションを取ることを大事にしています。
オーストラリアの国民性なのか、お客様は穏やかな方が多くて、言葉が通じないことでトラブルになったことは今のところありません。私が少し焦っている時でも「大丈夫だよ」と、逆に優しく声をかけてくださることさえあります。
――Namiさんの施術の特徴やこだわりを教えてください。
施術中はお客様の体から絶対に手を離さないようにしています。揉みほぐしている時以外でも、常にお客様の体に触れて、自分のパワーを送り続けることを意識しています。施術が終わった後にお客様に必ず笑顔になってもらうことが大事ですね。「癒されたよ」という言葉もうれしいのですが、「楽しかったよ」と言ってもらえることが、私の理想です。
――現在の仕事を通じてよかったこと、オーストラリアに来てから成長したと思うことはありますか?
日本にいた頃よりも、積極的になんでも取り組むようになりました。考え方もプラス思考になったと思います。もともとあまりネガティブな性格ではありませんが、今の環境だとやるしかないって状況に常に追い込まれているので、迷いなくなんでもチャンレンジできますね。
一緒に働いているメンバーとの出会いも、私自身を成長させてくれました。みんな出身も経歴もバラバラですが、仲が良いだけじゃなくて、お互いに刺激し合えるいい関係性を築けています。
――最後に、今後の目標を教えてください!
外国人のお客様ともっと深いコミュニケーションが取れるようになりたいですね。日本人同士だと多くの言葉を交わさなくても、お互いのことを理解しあえると思いますが、外国人のお客様相手にでも、そのレベルのサービスが提供できるようになりたいです。
それと、Raffine Tokyoには案外日本人のお客様もたくさんいらっしゃるんです。たまたま店舗の前を通りかかった時に発見して「待ってたんだよー」とおっしゃってくれる方もいてうれしく思いましたし、日本が恋しいという気持ちを抱いている方に、“日本”を感じることができるような、丁寧で行き届いたサービスを提供していくことが目標です。
国境や国籍を超え、Raffine Tokyoが人々の癒しのオアシスになれるように、みんなで協力して頑張っていきたいと思います。
取材・文・写真:德田 直大
掲載内容は公開当時のものであり、最新情報と異なる場合があります。
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