豪州最大の日本酒イベントと商談会、メルボルンに続きシドニーで...
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先日、朝のニュースでクリケットオーストラリア代表の現チームドクターで、スポーツ医学の臨床医兼研究者のピーター・ブルクナーさんが新刊宣伝のインタビューに答えていました。
ドクターは「ここ40年も脂肪が肥満や不健康のもとだと世間にまかり通っているが、そもそも原因は砂糖にある! 砂糖をやめて脂肪に切り替えて! 無加工の食品を摂るんだ!」と力説していました。ドクターによると、新刊『A Fat Lot of Good』にも書いた通り以下の5項目が健康生活の黄金律だとか。
「アレ、なんか当たり前のこと言ってる?」と思ったのは、私だけでしょうか。
ドクターはオーストラリアで参考書として広く使われている『Clinical Sports Medicine』の共著者でもあるそうで、過去に国際大会に出場したラグビーやサッカー、スイミングなどのアスリートたちのドクター経験もある、かなり偉い人なのです。日本人にしたら、わりと今さらな言及だと思うのですが……。
意外にも、オーストラリアは世界第3位の砂糖生産国だそうなんです。
そこで思い出したのが、オーストラリアでドキュメンタリー部門の映画史上No.1の興行収入を記録した2015年の映画『あまくない砂糖の話(原題:That Sugar Film)』。お気に入りの俳優スティーブン・フライが出演しているということで、内容は特に気にもせず日本の劇場で観た覚えがあります。ここシドニーのテレビでも先月くらいに再放送されていたので、ハウスメイトと一緒に観ました。
常日頃からパートナーと自然派食品生活をしている俳優デイモン・ガモー。身の回りの低脂肪ヨーグルト、穀物バー、フルーツジュースといった加工食品や飲料に砂糖がたくさん含まれていることに注目した彼は、
「自分の身体を実験台にして医師や専門家の指導のもと、オーストラリア人男性の1日の平均糖質摂取量を含む食事を毎日摂り続ける。60日後、健康への影響はどうなるのか?」
という実験結果を記録しました。『あまくない砂糖の話』は、デイモンが主演と監督を務めて、その60日間を記録したドキュメンタリー映画です。
実験のルールは単純、
「1日の食事で、スプーン40杯分の砂糖(オーストラリア人男性の1日の平均糖質摂取量160gに相当)を毎日摂取すること」!
過去に「マクドナルドの食事を1カ月間毎日食べ続けてみる」というドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー(原題:Super Size Me)』(2004)がありましたが、大きな違いとして以下の5項目。
要するに、これまでの食事から「脂肪」を減らした分を「糖質」に変更して「高脂肪低糖質の食事から、低脂肪高糖質の食事に変える」。「ダイエットに重要なのはカロリー量であって食べ物の種類は関係ない」という考え方や、「ヘルシーフードや健康補助食品と銘打った食品なら食べても大丈夫」との考え方にもメスを刺すように設計された実験なのです。
実際のスプーン40杯分の砂糖は吐き気のする量ですが、加工食品に入っている糖質の量を換算すると、オーストラリア人はその程度の砂糖を軽く摂っているようなんです。スーパーマーケットから糖質が入っているものをなくすと、約8割の食品が棚から消えるほど、あらゆるものに糖質は含まれていますからね。
1日に160gの砂糖を摂り、1日の摂取カロリーは実験前と同じ2,300kgカロリー。食事内容は一見ヘルシー。
普段は砂糖を大量に含んだ食べ物を口にすることがあまりなかったデイモンですが、実験開始12日目には、体重が3.2kg増加、顔色はくすみ、もう明らかに元気がなさそうな面相に……。
最初の1カ月でALT(血中トリセグリド)と呼ばれる血中の脂肪を示す数値が、実験開始前の20(正常値)から倍の40近くにまで跳ね上がり、危険水域に達してしまいました。さらに、悪玉コレステロールも増加……。
ちなみに実験中、デイモンたち撮影クルーは、オーストラリアの原住民を訪ねて食生活について調べたり、「アメリカのフードジァイアント」と呼ばれる大手食品業界や企業と科学者の献金などによる癒着や隠蔽などについてのインタビューも敢行しています。
アメリカではジャンクフードが多数あり、オーストラリアよりさらに簡単に糖質を摂取する環境ができあがっているようです。また、アメリカの作付面積の30%は加工用コーン畑と言われていて、加工食品に入っている糖質も大体これらが主原料になると思っていいでしょう。安価な加工用コーンは甘味料や家畜の飼料に重宝されている現状です。
マクドナルドの製品を食べ続けていたり、マウンテンデューなどの糖質飲料を飲み続けていたりするアメリカの地方の低所得層に当たる子どもたちは、肥満と虫歯が深刻な問題に。出張歯科医が治療をしても懲りずに歯をボロボロにしてしまうのは、安価な加工食品しか手に入らない経済状況や、砂糖の中毒性、さらに親の食に対するリテラシーの欠如などが挙げられます。
さて、医師と専門家の忠告を振り切って実験を60日間継続した結果……
(ある程度予想はしていましたが)ひどい。
特に多量の内蔵脂肪で脂肪肝に近い状態になってしまいました……。通常、男性の方が女性よりも内蔵脂肪はつきやすいそうですが、デイモンの場合、砂糖の摂取による急激な血糖値の上昇による影響とのこと。
撮影終了後の食生活をもとの食生活に戻すにあたり、デイモンは最初の1週間、頭痛や眠気、情緒不安定に悩まされ、「甘いものを食べたい!」という強力な欲求にも襲われたようです。
『あまくない砂糖の話』は、こうした砂糖の甘くない現実を描いていますが、堅苦しくなりすぎないようポップなミュージカルシーンなどを交えていたり、スティーブン・フライの他にもヒュー・ジャックマンがちょこっと出演していたり、お説教臭さもあるけれど娯楽性の高い映画なので、未見の方はオススメです。
「砂糖の摂りすぎは健康に良くない」ということは周知の事実ですが、ほとんどの人はそのことに実感が持てないのが現実ではないでしょうか。
「糖分の過剰摂取が心疾患のリスクを上げること」は、現在で広く知られるところとなりましたが、ほんの数十年前までは「脂肪の摂取こそが心疾患のリスクを上げる」と考えられていました。この勘違いを引き起こしたのは「研究上のミス」ではなく、「砂糖に悪いイメージを持ってほしくない」という製糖業界からの圧力だったそう。
砂糖の摂取を減らしたからといって翌日から体調が顕著に改善するわけでもないでしょうし、「今まで甘いものを毎日食べているけど元気だもん」という人も多いでしょう。私もその1人ですが、この映画を観た後はしばらく糖分を減らす努力だけはしました! 現在でも続いているのが
意外にもずっと覚えています。
とはいえ、普通にマフィンとかブラウニーとか食べちゃっていますが(笑)。米や小麦などの炭水化物も食べたらすぐに消化分解、そのまま糖分になります。ということは、身体にとっては砂糖も炭水化物も糖質という点で基本的にあまり変わりないことになります。
しかし、実際にデイモンのような食生活は経済的に余裕がある人しかできないと思うんです……。だから、
結論:砂糖も脂肪も何事もほどほどが大事だよね
……そういうことです!
作品中にさまざまな目線で描かれている「糖質」ですが、決して糖質そのものが悪というわけではありません。被験者のデイモンも、普段の食事では加工食品を食べないというだけで、自然食品を中心に食べていますから、そこには必ず糖質が含まれているはずです。
前時代の砂糖は自然界において貴重な栄養源だったので、人間の身体も他の動物と同じように摂取した貴重な栄養源をきちんと使おうとしているだけ。人類の歴史上、これほど安定的に糖質が摂れるようになったのはここ数十年の話ですから、単純に「糖質の摂取量が多すぎる」というだけの話。
市場にあふれている糖質ですが、やっぱり何より大事なのは、自分で取捨選択して健康的な食事を摂ること。オーストラリア生活を楽しむためにも、金銭的に余裕がある限り、健康は心がけたいものですね。
文:武田彩愛、写真一部:©︎あまくない砂糖の話公式サイト
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