シドニーシティにある「ワールドシティ日本語医療・歯科センター」に仲間入りして1年を迎えた、末永華子歯科医(通称:ハナコ先生)。日本語で安心して受診できて「フレンドリーで治療費も良心的」と、患者さんから信頼が高い同クリニックの中でも、日本人の歯医者さんは初めて。
シドニー大学の歯学部の講師でもあるので、クリニックでは毎週火曜日に診察してもらえます。オーストラリア・日本両国の歯科医師免許を持つハナコ先生のところには、「日本と同じような環境でリラックスして日本語の歯科治療を受けたい」日本の患者さんも多く訪れます。
今回は、そんなハナコ先生自身についてJAMSスタッフが話を伺い、さらに先生が専門とする「お口の細菌と身体の健康との関係」を詳しく語ってもらいました! 正しい歯磨きの仕方や口内ケアの大事さまで教えてくれたハナコ先生。JAMSスタッフが歯科検診・クリーニングも体験してきたので、最後までチェックしてみてくださいね♪
「ワールドシティ日本語医療・歯科センター」に非常勤医師として在籍、オーストラリア・日本両国の歯科医師免許を持つハナコ先生。
ハナコ先生の担当日は、毎週火曜日。被せもの(クラウン・ブリッジ)、入れ歯、顎関節症を得意としている他、がん治療や手術を控えている患者に対する口腔ケアも専門とする先生です。
オーストラリアと縁ができたのは、2012年に奨学金でシドニー大学で研究する機会をもらった時です。当時は半年間の滞在でしたが、シドニーでの生活が楽しくて魅了されてしまって、なんとかしてオーストラリアで働きたい、と思うように。その後、元上司から再びチャンスをもらい、2018年に来豪してシドニー大学の研究職に就きました。
そこで3年間ほど働いていましたが、その間に日本の歯科医師免許をオーストラリアの歯科医師免許に移行できる試験を受けて、無事に合格。2021年末にオーストラリアの歯科医籍に登録されたので、晴れて2022年の4月から週一(火曜日)で当院の歯科医としても働いている、という形ですね。
シドニー大学の研究職が本職ですが、今は仕事の内容もちょっと変わりまして、それまでの研究一本に加えてシドニー大学歯学部で学生教育や臨床教育も担当しています。
日本では通常の歯科治療には健康保険が適用されますが、オーストラリアは私費になることから治療方針も変わるところが多いと感じます。例えば、日本のインプラント(人工歯根を埋め込む)は保険適用外で治療費が高くなるのでインプラントをしない、という選択をする患者さんは結構多い。ですが、オーストラリアはインプラントも入れ歯もブリッジも、失った歯を補うための治療はどれも保険外治療なので、インプラントを選択する方が多いです。
それから、最初から治療費が高い分、歯が悪くなる前に検診を受ける患者さんが多くて、定期的な検診が日本よりも普及している印象で、それはすごくいいな、と思います。日本では健康保険でカバーしてもらえますので、何かあっても診察が受けやすい環境ですが、こちらでは治療費を抑えるために残せる歯も抜いて終わり、という選択肢を患者さんが取りやすいケースもあります。
オーストラリアも日本も良いところと悪いところがありますし、本当にケースバイケースなんですけれども。
患者さんによって求められることは国籍によって異なっていて、日本の方や中国の方は「食べる機能を回復したい」「お煎餅を食べられるようになりたい」「硬いものが食べられるようになりたい」、白人の方は「見た目をよくするために歯を入れたい」「発音しやすくなりたい」と希望する方が多いです。ギリシャの方は「とにかく痛くなければいい」とか、オーストラリアにはいろいろな国籍の方が住んでいるので、面白いなと思います。
フッ素の使用に関しては、日本よりもオーストラリアの方が進んでいますね。
また、オーストラリアは水道水にフッ素が含まれています。普段からミネラルウォーターだけでなく水道水を飲んでいる方ですと、歯が強くなります。このフッ素の有無はかなり大きくて、オーストラリアの中でも雨水を溜めたタンクを使っているような地域では、水にフッ素が入っていません。そうした地域と、水道水にフッ素が含まれている地域とを比べた場合、お子さんが虫歯になる確率が違います。
水道水だけでなく家庭で利用できる歯質を強くするような商品も出ています。
虫歯の細菌が歯を溶かす酸を出すのですが、人間の唾はそれを再石灰化させる機能を持っているので、少し歯が溶けたとしても唾の作用で元に戻してくれるんですね。こちら(写真)のメーカーから出ているデンタルケアペーストには、CPP-ACP(リカルデント)が配合されていて、脱灰している部分に使用することで再石灰化を促して、元の色に戻す効果が期待できます。夜寝る前や、特に歯列矯正治療中の方におすすめする場合があります。(使い方は個人によって異なるので歯科医院にご相談ください)
「1500ppm」と表記されている歯磨き粉が、薬局で買ってもらえる濃度になります。そちらはすごく虫歯になりやすい方や、唾を出しにくなってお口の中がとても乾燥している方のための虫歯予防に使う場合があります。
主に若い人に適応されると思いますが、若い時は歯の溝がまだ深くて、生えてきたばかりの永久歯などは虫歯になりやすいんです。そのため、シーラントという予防処置をすることもあります。プラスチックのような樹脂を歯の溝に埋めて、そこに細菌が溜まらないようにした上で、その樹脂からフッ素成分を入れて歯を強くするという、2つの効果で歯の健康を守る処置です。
シーラントは虫歯のリスクが高い方や、歯の溝が深い方には有効な処置だと思います。
元々は仙台にある大学病院・クリニック、それも入れ歯を専門とする科にいたんです。患者さんは高齢者の方が多くて、他にも入院患者さんを診ていました。そのため、お口の状態をケアできる状態ではない方も多くて…。
基本的に私たちが(患者さんに)できることは、お口の健康を回復することによって、普通の生活をよりよくなるようにすること。例えば、歯がない人には入れ歯やインプラントによってきちんと食べやすい機能や喋りやすい機能を回復してあげる。お口周りから受ける見た目の印象も含めて、少しでも皆さんの生活の向上に貢献できたらいいなと思っています。
最近は元々自分の専門だった入れ歯の患者さんが少しずつ増えてきて、入れ歯を入れたことで色々食べれるようになった、と仰っていただけると嬉しいですね。
当院の歯科医は皆専門分野が違うので、他の二人からいつもアドバイスをいただいています。院長のマシュー先生は、どうしたらいいか尋ねるとすぐに回答してくれますし、クリス先生は色々なことが上手なので患者さんを一緒に診てもらうこともあります。すごく優しい先生方です。
オーストラリアでは多くの方が定期的に歯科検診を受けられることが、私はとても好きで、お口の状態が悪くなる前にまずはクリーニングをして悪化しにくい状況をつくること、もし悪化していてもその症状が小さいうちに治療できることができれば、と思います。初期症状なら痛みも少なく治療できますので、半年に一度の頻度で歯科検診を受けていただきたいです。
歯医者さんというと楽しくないと思うのですが、私は今まで高齢の患者さんも多く診てきたこともあり、歯が抜けた後どれだけ食べられなくなってしまうのかを伝えることも大事な仕事だと思っています。
そして歯が1本でも抜けると、その両隣の歯に負荷がかかってどんどん連鎖して悪くなってしまいます。どうしても普通の歯磨きだけでは取りきれない汚れが付いてしまったり、歯の位置的に磨くのが難しいところがあったりしますから、そういう部分をクリーニングするためにも検診は重要なんです。
私自身、英語でお医者さんにかかる時には躊躇ってしまうことがあります。ちゃんと伝わるのかなと毎回ドキドキしたりして、言いたいことをちゃんとメモしてからでないと不安になったりします。その点、ワールドシティ歯科はスタッフたちが多言語者で、日本語が上手な方ばかりなので、日本人の患者さんも日本語で受診ができるから安心かと思います。
普段からお口の中には「口腔内細菌」がたくさんいますが、それら細菌には外敵が入ってきた時のバリアになってくれている役割があります。ただ、増えすぎると虫歯とか歯茎の病気を引き起こしてしまう種類の細菌もいるので、そのバランスが重要になってきます。
普段は1種類の細菌の数だけが多くならないようバランスをとっていますが、風邪を引いてしまったり、疲れていたり、ストレスが溜まっていたりして免疫力が落ちている状態では、元々お口の中にいるある種の細菌が一気に増えてしまい、歯茎の病気を引き起こしたり、口内炎を起こしたりします。
口腔内細菌というのは、歯の表面に粘着性のあるプラーク、バイオフィルムという形で歯にくっ付いてくるので、虫歯や歯周病の原因になってしまいます。それを落とすために毎日の歯磨きがあるんですね。この粘着物を放っておくと石灰化して歯石になり、それを落とすには歯医者にある超音波で振動のような専門器具が必要になります。
この口腔内細菌ですが、お口だけではなく身体の病気とも関係していることが、ここ10年くらい前から判明してきています。
歯周病菌と呼ばれている細菌が多くなりすぎると、その箇所が炎症を起こして歯周病菌が出す毒素などが血管を介して体内に回ってしまいます。すると糖尿病が進行しやすくなってしまうんです。また、心臓の血流が弱いところに付着して、心内膜炎という心臓の感染症・炎症を引き起こしてしまう、ということも明らかになってきました。
私は日本の東北大学病院で入院患者さんのケアを担当していましたが、そこではこれから手術をする前に口腔内ケアをするんです。なぜかというと、糖尿病や心臓病だけでなく術後の感染症にも口腔内細菌が関連しているのではないかと日本では捉えられていて、日本政府が「お口の中を最初にケアしてから手術を受けることで、術後の合併症を減らしましょう」という方針を採っているからです。
私は口腔内の状態と術後の関連性の研究をしているので、オーストラリアに来てからもWestmead病院でその調査をしました。心臓やがんの手術を受ける方の術前にお口の中の状態を調べて、術後の結果がどうだったのか、術後肺炎になってしまったり手術部位が感染してしまったりしたかどうか、など口腔内細菌との関連性を見ると「虫歯がある方ほど術後の感染症になりやすい」という結果でした。
これはシドニー大学での仕事になりますが、お口の中の治療をしてから手術を受けることで、どのくらい術後の合併症を減らせるかを調べていく段階に移っています。
虫歯になりやすいところ、歯周病を進ませやすいところを磨いてもらうのが大事です。「歯と歯の隙間」や「歯と歯茎の境目」。お子さんの場合は、まだ歯が削れていなくて上の溝が深いので、「溝のところ」…この3カ所を、特に注意して磨いていただきたいです。
小さいお子さんの場合、間食は構わないのですがダラダラ食べることがないように、食事と食事の間を何時間かきちんと開けて、虫歯菌によって酸で溶けてしまった歯がちゃんと唾で回復できる時間を持たせてあげてください。夜寝ている間は唾液の量が減ってしまうので、寝る前は特に歯磨きできれいに。
磨くときに大きく動かしてしまうと、歯の側面の出っ張っている部分だけが歯ブラシに当たることになるので、歯の一本一本を少しずつ角度を変えて歯ブラシを入れてもらう。歯の表面だけではなく歯茎に少し触れるような感じで磨いてもらうと違います。
電動ブラシの場合は、そうした細かい運動を自動でやってくれるので、歯ブラシを入れたら動かしてもらわなくても大丈夫です。歯に乗せて角度をちょっと変えていくだけで勝手に振動してくれますから、鏡で見ながら角度を変えてもらって、先ほどお話しした3カ所を中心に、歯ブラシの毛先が当たるように入れてもらう。あとは電動歯ブラシがいい働きをしてくれます。
手動・自動共に、奥歯はお口を開けたままだと頬からの緊張があってなかなか歯ブラシを入れにくいので、歯ブラシを入れた後に一度口を閉じると、お口の中にスペースができるので奥まで磨きやすいですよ。奥歯はプラークが溜まりやすい部分なので、お子さんの場合は奥だけ小さめの歯ブラシを使っていただくといいと思います。
奥歯用に特化した、先の小さな歯ブラシもあります。特に親知らずがある方は専用歯ブラシも一つのオプションだと思います。ヘッドだけ取り替えできるタイプの歯ブラシは、歯列矯正治療中で歯に針金を装着されている方でも使いやすいのでおすすめです。
本当に基本的なことになってしまいますが、それこそ「きれいにする」という習慣をつけるのが一番なんですね。
そして、「お口の中をきれいにして健康を保つ」「虫歯や歯周病などがひどくならないように早めに治療をしてもらう」ことが大事なので、まずは「自宅で歯を正しく磨く」「半年に一度は歯科検診を受ける」ことが良いと思います。
終わりに、JAMSスタッフがワールドシティ歯科のハナコ先生から実際に歯科検診とクリーニングを体験してきました!
「オーストラリアに来てから1年半ほど歯医者に行っていない」というJAMSスタッフ。当然、歯医者の雰囲気自体にも慣れておらず、ちょっと緊張している様子が伺えました。前回、別スタッフがマシュー医院長の検診を受けた際と同じく、スタッフの緊張を少しでもほぐせるように、ハナコ先生は日本語で優しく会話をしながら問診を進めてくれます。
徐々にリラックスしていったスタッフは、視診と問診、そしてレントゲン検査を受けたあと、1年半も放ってしまっていたお口の中を、しっかりとクリーニングしてもらえました。長期間まったく歯医者に行っていなくても、怒られたりはしませんから安心してくださいね! むしろ、スタッフはお口の中を「きれいですね」と褒めてもらえました♪
検診の結果、小さな虫歯が数カ所見つかりましたが、すぐに治療はしなくても大丈夫とのこと。その代わり、自宅で気をつけて磨けるようアドバイスをもらい、ほっとひと安心。ちなみに、予防歯科が広く普及しているオーストラリアでは「半年に一度の定期検診(チェックアップ)」が推奨されています。クリーニングでお口の中がすっきりとしたスタッフも、今後はアドバイス通りに歯磨きをして、半年後にまた定期検診を受ける気持ちが湧いたそうです。
ワールドシティ歯科の営業時間は、月~金曜日が午前9時から午後6時。土曜日も午前9時から午後4時まで営業しています。その中で、ハナコ先生の担当は毎週火曜日。それ以外の曜日は、歯科矯正とインプラントに絶大な信頼のあるマシュー歯科院長と日本語が堪能なクリス先生が常勤しています。
どの先生でも安心して日本語で診察してもらえるほか、不安な方には予約の時点で申し出ておけば、日本語通訳を付けることも可能です。オーストラリアで長いこと歯医者に行っていないという方も不安に思わず、お口の健康を守るために歯科検診とクリーニングを受けに行ってくださいね!
シドニーシティ歯科本院
住所:Level 1 & 2 / 722 George Street, Sydney NSW 2000
電話: (02) 9281-0348(日本語ライン)または (02) 9281-6744(歯科)
営業時間:月~金 9:00-18:00/ 土 9:00-16:00
ワールドシティ日本語医療・歯科センターは、シドニー中心部のジョージストリートにある総合医療センターで、院内に歯科、GP、美容医療、パソロジー検査施設があります。女医が担当するGPでは婦人科系やピルの処方など女性の悩みを気兼ねなく相談できます。日本人スタッフ常駐なので、日本語で安心して相談、治療が受けられるのも便利!
一般歯科治療の他に審美・矯正治療を幅広く行っており、高度な技術を要するインプラント、根管治療、ワイヤー歯列矯正、インビザラインの治療を受診できます。気になる歯科治療費も良心的な設定で分割払いも可能で、初診日当日に歯科治療に進めば初診料は実質無料。
各院に最新機器を取り揃えており、マシュー院長率いる優秀な歯科医が、じっくりコンサルテーションを行い症状に合わせて最適な治療法を提供。マシュー院長は経験豊富でインプラントや矯正の技術が高く、他州からも頻繁に出張依頼のある名歯科医です。
日本留学経験もあるクリス歯科医は、駐在員や永住者、留学生、幼い子供と年齢問わず日本人コミュティで幅広く支持を受けています。通訳なしで、診察・治療がしたい!という方はクリス歯科医を指名するのがオススメ!
シドニー大学歯学部卒業、イーストウッド医院を開業して28年。一般歯科歴31年、歯列矯正治療歴26年の経験豊富な歯科医。矯正治療とインプラントの上級臨床インストラクター資格有。オーストラリア歯科学会(ADA)NSW州評議員メンバー。大学や他州各地でのセミナー、日本歯科医師会の海外研修会で講師を務める。幅広い年齢層に対応。
クイーンズランド大学歯学部卒業、本院勤務5年目のマシュー院長の右腕的存在。定期検診、クリーニング、虫歯治療担当のほか、根幹治療 も得意。向上心が高く歯周治療学やインプラントにも熱心に取り組んでいる。マシュー院長が「僕の歯を治療してもらうならクリス歯科医に お願いする」と信頼の厚い先生。東京に留学経験があり日本語堪能。
住所:Level 1 & 2 / 722 George Street, Sydney NSW 2000
電話: (02) 9281-0348(日本語ライン)または (02) 9281-6744(歯科)
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