こころの相談室で総務を担当しているキャルです。
今回は少しこ難しい話を書こうと思います。お付き合い頂ければ幸いです。
宜しければ音楽を聴きながらお読みください。
http://www.youtube.com/watch?v=1XEsIFObhrY&feature=relmfu
色は匂へど散りぬるを、わが世誰ぞ常ならむ、有為(うゐ)の奥山今日越えて、浅き夢見じ酔ひもせず
原典 : 著者不詳『金光明最勝王経音義』1079?
とても有名な「いろは歌」。昔の子供達が手習い歌として書き写したり、全ての仮名を使って作られた詩なので、かなの練習として中世~近世の辞書類等に広く利用されたようです。この仏教的な無常観、日本人にはこの詩を知らなくても身についているものです。
その代表的なのが、挨拶。
――さようなら。さよなら。
なんてあっさりした別れをするのは、日本人特有のことです。
この辺りのことは、竹内整一著『日本人はなぜ「さようなら」とわかれるのか』に詳しく記してあります。以下引用します。
世界の別れの表現別む葉を眺めてみますとそれらはおおよそ次の三つのタイプに分類することができます。
①“Good-bye” ”Adieu“ ”Adios“ “Addio”
②“Seeyouagain” “Au revoir” ”再見“ “Auf Wiedersehen”
③“Farewell” “安寧(アンニョン・ヒ・ゲセヨ)”
①の“Good-bye"というのは、“Good be with you”が約まったとされるもので、「神があなたとともにあらんことを祈る」という意味合いの別れ言葉です。
フランス語の”Adieu“は、”dieu:“が神、”a”、が「~へ」とか「~において」という意味の前置詞ですので、「神の御許に」という意味です。スペイン語の”Adios“あるいはイタリア語の.“Addio”も同様の言葉で、別れに際して、神のような存在の、ご加護を願うという別れ方です。
②は、“Seeyouagain”、「再び会いましょう」というタイプの別れ言葉です。フランス語
“Au revoir”.は、“re”「もう一度」、“voir”「会う」、という意味がこめられています。中国語の、“再見”は、文字通り、「再び見(まみ)えましょう」ですし、ドイツ語の“Auf Wiedersehen”も“Wieder”「再び」、“sehen”.「会う」です。その他、スペイン語の“Hasta la vista”も、イタリア語の.“Arrrivederci”も、ロシア語の、“Do svidania”も、みな「再会まで」という言葉です。
③“Farewell”は、“wel”「うまく」、“fare”、「やつて行って下さい」という別れ言葉です。朝鮮語の、アンニヨンヒ、ゲセヨ(ケセヨ)の「アンニョン」は漢字で書くと「安寧」で「安らかに行って下さい」「お元気で」の意味がこめられています。ラテン語の“Salve”と“Vale”も、ともに「お元気で」の意味です。
世界の別れ言葉は、だいたいこの三つのタイプに大別されます。日本人の場合、①の「神の御許に」とか、あるいは「仏の御加護を」といったような言い方で別れることはあまり一般的ではありません。②では、「またね」とか「じやあ、また」と言って別れますし、③でも「御機嫌よう」とか「お元気で」というような別れ方はごく一般的に使われています。
竹内整一著『日本人はなぜ「さようなら」とわかれるのか』(2009年1月 ちくま新書)
関西人の私にとっては「ほな、また」が一番身近に感じられるのですが、次の約束も、お元気での意味もない「さようなら」は、あっさりとして、日本人らしい無常観が感じられます。一方「See you」をよく聞くAustralia、「See you later」とおっしゃる方も多々。
こんな所にも、人と人との垣根が低いことが現れているなぁと感じます。
(続く)
St. James Trust Building, Suite 219, Level 2, 185 Elizabeth Steet, Sydney 2000
TEL:0416-006-835