前編に引き続き、
今回は骨盤底筋を強化するための運動療法をご紹介します。
骨盤底筋を効果的にトレーニングするためには、まずその筋肉の位置を正しく把握し、その後意図した通りに動かす訓練から始めます。感覚としては、肛門を締め、陰茎を持ち上げ、さらに膀胱を上部に持ち上げる運動が必要です。これを全て感覚のみで正確に行なうことは難しく、はじめての方はかなり苦戦されます。その際リアルタイム超音波などを用いて、スクリーンに映る筋肉の収縮を患者さんと一緒に確認しながらトレーニングを行なう場合もあります。
骨盤底筋とその周辺筋肉はどのような働きをしているのでしょうか。骨盤底筋は脊椎の基底に位置し、脊椎を安定させる役目を果たしています。おしっこをする時ほっと息を吐くことが多いと思いますが、息を吐くことで骨盤底筋がリラックスし、膀胱が下がるので排尿が可能になります。逆に息を吸う時は骨盤底筋は膀胱を持ち上げ尿管を閉める働きをしています。同様におならを我慢する時は 肛門周辺の骨盤底筋を緊張させます。
以上をふまえて骨盤底筋のトレーニングに使う合図・キュー(感覚)は、2つです。
『おしっこを途中でとめる』感覚と、『おならが出るのをとめる』感覚です。これらの動作を行なう時に使うのが骨盤底筋です。その際、 いつも通りに呼吸し、おなかや臀部の筋肉をリラックスさせることがとても大切です。
それではさっそくトレーニングを始めましょう。この運動はコマ切れの時間に誰にも知られずにとても気軽に行なえます。
A). 立っているとき、上記のキューを用いて骨盤底筋を思いっきり収縮させる。鏡で観察すると陰茎がおへその方向に睾丸とともに持ち上がることが確認できる。
B). 脚を開いて座り、骨盤底筋を思いっきり収縮させ、肛門を引き上げる。この時、腹部&臀部が硬くならないように注意。
A) & B) は、朝&晩、各10秒間収縮を3−5回。
C).仰向けに寝てヒザを曲げて脚を肩幅に広げ、 骨盤底筋を思いっきり収縮させる。この時も、腹部&臀部が硬くならないように注意。
D).歩行時ーA)~C)の時の50%の力で骨盤底筋を収縮させそれを維持した状態で歩く。
E).排尿をすませたら骨盤底筋を思いっきり収縮させ、尿道内の残尿を出し切る。
ある有名なイギリスの 研究では70%以上の被験者に改善が認められました。残念ながら30%の被験者には改善が認められなかったわけですがその要因には、生活習慣疾患、循環器疾患、動脈硬化、糖尿病、そして過度のアルコール摂取があげられたということでした。
トレーニングを行なうと同時に、日々の生活習慣、運動不足、食生活など気をつけていきたいものですね。