【ACT30日】 1日、オーストラリアは世界で初めて人工大理石を禁止する。人工大理石はキッチンや浴室でよく使われるが、珪肺(けいはい)症や肺がんを発症する職人が多いとして禁止の動きとなった。
VIC州のディーン・モリスさん(44)は、2019年に珪肺症の診断を受けた。それまで20年間人工大理石を扱っていた。珪肺症はシリカ粉塵の吸入によって発症し、治ることはない。珪肺症患者の命は平均で11.6年短くなると言われる。
10歳と6歳の娘2人を持つモリスさんは、診断される5年前の2014年11月から体調がすぐれなかった。石工業の仕事が好きだったが、診断後は働けないでいる。座っている以外は常に息切れし、ベッドメイクやシャワー後に身体を拭くのですら大変だ。「常に疲れている。くしゃみをすれば胸が痛い。関節や膝もひどく痛む。午後は特にひどくなる」と話す。モリスさんの医療チームは、最悪のシナリオは肺移植だとして現状維持を目指す。
毎年、国内の職人最大60万人がシリカ粉塵にさらされ、数百人が肺疾患の診断を受けると見積もられる。カーティン大学が行った研究では、最大で10万3,000人が珪肺症と診断されると見積もられた。
建設作業員10万人以上を抱える建設・林業・鉱山エネルギー労組(CFMEU)は、人工大理石の輸入・製造・使用の全面禁止を長年呼び掛けてきた。ホームセンターのバニングスとスウェーデン家具大手のイケアは昨年、人工大理石の販売を段階的に廃止すると発表した。CFMEUのザック・スミス書記長は「人工大理石の禁止は職人の命を救い、友人家族が無意味な死に苦しむのを防ぐ」「作業者の死によって利益を得る企業らに組合員らは立ちはだかり、勝利した」と話し、アスベストの後遺症同様、向こう数年は人工大理石を扱った職人らと連携していく意向を示した。
オーストラリアは世界で初めて、7月1日から人工大理石を禁止した。モリスさんは国としての禁止を歓迎しつつ、「多くの人にかかわる深刻な問題にもかかわらず、時間がかかりすぎた」と話した。
アスベストや粉塵に関わる身体障害を専門とするロジャー・シング弁護士は、「若い勤勉な男性たちが、命を短くされた」と話す。2015年から珪肺症で診断される石工業の職人が現れ始め、州・連邦の両政府に警告した。患者の共通点は人工大理石で、90~95パーセントがシリカ粉塵によるものとわかった。シング弁護士は2018年に人工石材の禁止を呼び掛けたが、施行まで6年かかった。同氏はまた、人口石材の最大の影響が分かるのに今後数十年かかる可能性があると警告する。
ソース:news.com.au -‘Lives destroyed’: Killer engineered stone ban ‘too late’