どこから申し込めばいい?どんなプランがある?オーストラリアへ...
いざオーストラリアへ留学しようと思っても、どうやって申し込めばいいかわからない方も多いのではないでしょうか。この記事で…
♦姥捨てガイドのシドニーツアー♦
先日、 学生時代の友人が新婚旅行でシドニーとエアーズロックに来る事となった為、早朝から空港にお迎えに行く事になった。
二人は高校生の時からのお付き合いを始め、まだ33歳というのに17年もの間、お付き合いをしている稀に見ない純愛カップルである。
そんな彼らがシドニーへの新婚旅行を決めた時には「今更、新婚旅行なんて恥ずかしいねぇ・・」と、まるで老夫婦が銀婚式か町内会の温泉旅行にでも参加する気分だという二人は、今回のシドニー旅行が初の海外旅行となった。
そんな彼らのフライト到着時間の約30分程前から空港で待機し、混雑する到着ゲートのイスに腰掛け、人間ウォッチングでもしながら、彼らの到着を待つ事にした。
そんな中に某企業の日本人女性ガイドさんが大きな声を張り上げ、平均年齢が60歳位の団体旅行客をまとめているのが見えた。
”ベテランガイド”と言わんばかりの流暢な大阪弁の彼女は”本日皆様のガイド担当の〇〇です!今私の説明をしっかり聞いておかないと、捨てていきますよっ!”と、ツアーガイドさんの紹介なのか、それとも姥捨て山へのオプション説明なのか分からない説明から始まった。
彼女の脅しが聞いたのか、ガイドブックを見ていたおばさんも、タバコを取り出そうとしていたおじさんも、まるで蛇に睨まれたカエルのようにピクリとも動かなくなり、皆姥捨てガイドの方にしっかりと目をやっていた。 こうして姥捨てガイドの脅し作戦は大成功に始まった。なれたものである。
その後も姥捨てガイドの説明は続いた。
”ホテルのお部屋にチェックインしたら、まずパスポートをセーフティーボックスに入れて下さい。ここ大事ですよー!いいですかぁ?パスポートがなくなるとー、日本に帰れませんよーっ!”とまた脅し始めたのだ。
パスポートが無いと日本に帰れないのは、とてもあたりまえの事なのだが、彼女が説明すると、まるで”パスポートを無くすと、一生日本には帰れなくなってしまい、その間は牢獄で暮らす事になりますよ!いいですね!”と言う風に聞こえるのは、彼女の説得力のある話し方なのか、それともただの脅しなのかは謎だが、団体客がピクリとも動かないところを見ると、後者のほうに近い気がしてきた。
その後も姥捨てガイドの説明は永遠と続き、”ウェルカムランチの飲茶は、全て食べるようにして下さいねー!”という、優しそうな彼女の心がけも、”全部食べないと、料金を倍にして払ってもらいますからね”という風に聞こえたのは、どうやら私だけではなかったようで、たまたま私の横に座っていらっしゃった日本人女性の方と目が合った瞬間”なんか朝からすごいですねぇ・・”と、姥捨て山オプショナル参加の皆様に同情の念を立て苦笑した。
ようやく空港での説明が終了したようで、”以上、何か質問無いですか?無いですよね!”と”まさか、あるとは言わせません!”と言わんばかりの口調で姥捨てガイドが息を切ったところ、”あのぉー・・”と一人の泉ピン子似のおばさんが手を挙げ、”ブルーマウンテンでは、コーヒーの青山の豆って買えるのよね?おいくらくらいかしら?”と真顔で質問した。早朝からオオボケである。
私は助けを求めるべく、”なんかえらい事になってますねぇ・・ あのオバサンわざと挑発ですかねぇ?”と隣の女性に話し掛けてみると、”実は私も以前ガイドだったので分かるのですが、あの質問結構多いんですよ”とピン子の挑発を否定した。
”まぁ・・・”と言葉を無くした私に、休む間もなく”これから行きますブルーマウンテンには、コーヒー豆は売ってませんー!ブルーマウンテンとコーヒーの青山はベッコです!ベッコーーッ!”と繰り返した。
”あら、そうなの・・?じゃ、何しに行くのかしら?”とますますオオボケのピン子の対処法に困った姥捨てガイドは、”ブルーマウンテンの事は全てこのガイドブックに載ってますからー、ここをー見てくださいー!ここーっ!”と、ガイドブックの右上をパンパンと指差し、どうやら説明する気力さえ失ってしまったようだった。
”こんな程度のオオボケ婆さんに負けるものか”と言わんばかりに姥捨てガイドは”もう質問無いですねー?”と切り替えようとしたところ、またピン子が手を挙げてこう言った。
”じゃ、免税店だったら買えるのー?青山のコーヒー豆??”
一瞬にして辺りに重い空気が流れ、団体グループの皆が一斉におそるおそる姥捨てガイドの方に目をやった。
”だーーかーーらーー!青山もー、コーヒー豆も忘れて下さいーって!”と、まるで闘牛の鼻にトウバンジャンでも塗ったような勢いで、姥捨てガイドは発狂し始めたのである。
”いいですかー!青山のコーヒー豆はシドニーでは買えませんー!もういいませんよー!間違わないようにして下さいー”と鼻をブルルッと鳴らして、ピン子をギッと睨んだ。
「ないんだってー、せっかくブルーマウンテン行くのにー、青山のコーヒー豆・・」と旦那らしき白髪の男性にボソッと言って、チェッと舌を鳴らした。
”では質問が他に無ければ送迎バスはこちらですので、皆さん2列に並んでピッタリついてきて下さーい!”という姥捨てガイドの指示に従い、トボトボついていく年配グループ客が、ますますブルーマウンテン姥捨てツアーご一行様に見えて、私はとても複雑な気持ちになった。
そんな彼らが去っていくのを目でおっていたら、また突如ピン子が叫んだ。「ちょっとガイドーさーん!パスポートのコピーをセーフティーボックスに入れるのよねー?じゃ、パスポートはカバンに入れとくのねー?」
”・・・・・・・・・・・・・・・・・”
その瞬間姥捨てツアーご一行様の先頭付近で、トウバンジャンのビンが割れた音が聞こえた気がした。(完)
♦シドニー・クリエイティブフォトグラフィー♦
http://www.sydneyphoto.com.au/jp/
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