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カメムシ風味

♦カメムシ風味♦

私の両親は、どうやら最近海外旅行にはまっているようで、新聞チラシの激安パッケージツアーを見つけては、関空行きのバスに乗り込んでしまうらしいのだ。

そんな私の両親はバリバリの京都弁以外の何語も話すわけも無く、たまたま飛行機で横の席になった外人さんに”ちょと、あんた濡れせんべい食たことあるかぁー?”と突然ジャスコのナイロン袋を取り出し、”これおいしいさけなー、食べてみぃー、 なっ?”と無理やり外人さんの手に濡れせんべいを握らせてやったと自慢げに話す恥ずかしがり屋さんである。

そんな両親が私に会いにシドニーを訪れた時である。 せっかくオーストラリアに来たのだからと、オージービーフのステーキをはじめ、通常お目目にかかる事がないワニのから揚げまで頂いた私の両親は、”でっかい肉ばっかりくてられへんなー”と言うので、あっさりヘルシーなベトナム料理”に連れて行くことにした。

通常ならば7ドル程度のベトナムのスープヌードル"フォー”あたりをチャイナタウンで済ませるのが本当の私であるが、せっかく日本から両親が来ているので、ベトナム料理料理の中でも、テーブルクロスのかかったお上品なレストランに連れて行くことにしたのだ。 

早速レストランに到着した私たちは、”ベトナムの鍋料理”のようなもので、餃子の皮のようなものに、あつあつのチキンや色々な野菜を巻いて食べるベトナムのトラディショナル料理を頼むことにした。以前にも友人の勧めでこの鍋料理を堪能した私は、自信を持って愛想の良いウェイトレスさんにオーダーしたのである。

そんなベトナム料理が初めての私の両親に早速オーダーしたカラフルな食材がてんこ盛りの鍋が運ばれてきた。お洒落さんな花の形をしたニンジンさんや、鳥の形をしたきゅうりさんまで添えてあって、”これぞアジアンビューティー”とどこかのフレーズを口ずさみたくなる飾り付けである。

私の母はそんな飾りつけに目を向けるとも無く、早速ぐつぐつと煮える鍋からチキン、白菜、えのき、竹の子を取り出し、薬草ハーブのコリアンダーをまいて口に入れた瞬間事件は起こったのである。

母が突然「ぎゃぁーーーーーーーっ!か、カメムシ食てもーたぁーー!! ゲェーーーッ!!!」とのおたけびをあげて、口の中のものを一気に吐き出したのである。 あまりの大きな声と突然の出来事に私と父までも「ひぇーーーーっ!!」とおたけび返しをし、発狂した猛牛に化した母にコップ一杯のお水を手渡すと、彼女はそれを一気に飲み干した。

どうやら母はコリアンダーが初体験の”コリアンダーバージン”で、食べた生春巻きにカメムシがくっついていてそれを口の中で噛んだと勘違いしたようで、「こんなもん食べれるかぁー!おっそろしーもん食いよんなぁー韓国人はー・・・」と静かに箸をおいたのである。

コリアンダーの名前の由来は、”韓国のコリアン”からきているものだと勝手に解釈した母をそのまま放置した私は罪人である。

それから母は一切ベトナム料理に手をつける事もなく、”ベトナム=難民”のシンプルなイメージから、”ベトナム=カメムシ”の方程式が永久に彼女の脳裏に組み込まれる事になったのである。

今頃京都の実家では、「ベトナムではコリアンって言うカメムシの葉っぱ食べはるねんでー!びっくりしたわー!」などといったガセネタをご近所さんにながし、新たに激安海外パッケージの広告とにらめっこしているのであろうか。

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