♦あかすりダイエット♦
先日、東京の明治神宮にて、おごそかにウェディング撮影が終了した日の事である。
まるで”マネキン人形”のようなつるつるの肌のモデルさんを起用しての撮影だったので、撮影終了後に私は”つるつるお肌の秘訣は何ですか?”とモデルさんに尋ねてみた。
そうるするとモデルさんは、一瞬の間をおかずに、こう答えた。 ”韓国のあかすりですかねぇー”
その瞬間、どうにもこうにも”韓国式あかすり”を体験したくてたまらない衝動にかられた私は、プロダクションコーディネーターの山中君がお勧めの韓国式あかすりハウスに直行した。
韓国式あかすりハウスは、撮影現場から15分程度の徒歩圏内で、7000円で40分のあかすりと、入浴、ボディシャンプーが含まれていて、経験豊富なあかすり職人がゴシゴシやってくれるとの事だった。
早速私は受付で料金を払い、こじんまりした温泉につかって、山中君お勧めのあかすり職人の登場を待つことにした。
20分ほど体をふやかした私に、”あかすりぃーーっ!!!こちぃーー!”と、不機嫌そうな顔をしたおばさんが、あかすりルームの方向に指をさして、私をじっと見た。
”こちぃーー!あなただよぉ、もぉーーっ!”とモタモタしている私に手首を上下に振って”おいでおいで”のジェスチャーをした。 どうやら韓国人のおばさんのようである。
”はやくぅ、こちねてぇー!うぅーつぶせぇーーー!もぉーーっ!”と、つたない日本語で、私を完全支配し、ベッドの横に置いてあったあかすりタオルをバケツにつけて、ジャブジャブ洗った。
”へっ・・・・?あかすり職人って、このおばちゃん・・・・? お、おっさんはおらんの・・・・?山中・・・。”
そんな私の疑問を解決する暇もなく、このおばちゃんは、タオル1枚を腰に巻いた私にこう言った。
”あぁーた、はじめてのぉ?もぉーーー!いっぱい、あかでるだよぉーー!もぉーーー!”
と不機嫌そうにコメントした。
彼女はとにかく語尾に、”もぉーーっ!”をつけるのが癖らしく、とりあえず私は彼女を”もーもー職人”と呼ぶ事にした。
もーもー職人は、”もぉーー!あーた、初めてのー?何歳なのぉー?えぇ??35おぉーー?まだ若いだなぁー!もぉーーー!”
と、私の体を汚いキュウリでも洗うかのようにゴシゴシとこすりながら、もーもー言い続けた。
タオル一枚を腰に巻き、完全に不利な立場な私は、”うっかり彼女を怒らすまい・・・” と得意のカスタマーサービスで応答する事にした。
”日本語お上手ですねぇー”
無難な会話と言えよう私のコメントに、彼女はこう言った。
”うまくないよぉーー もぉーー!18年いるだけどぉーー、もぉーーーへたぁーー! もぉーー!”
どうやら憤慨させてしまったようである・・。
”あ、そ、そうですか・・・・。 このあかすりのお仕事は長いのですかー?”
これまた無難な質問のように思えたが、もーもー職人はこう答えた。
”あたりまえよーー!もー35年してるよこれーー これしか出来ないよーーあたしはぁーー!もぉーーーっ!”
どうやら、余計な事を聞いてしまったようである。
こうして、もーもー職人との会話は中途半端に途絶え、暫くの間沈黙が続いた。
30分ほど経過しただろうか、”もぉーー!終わただよぉーー!の一言で、バケツに入ったぬるま湯をドバーーーッとかけられた私は、あかすりで出た汚物を見て驚愕した。
”ひぇーーーーっ!”と心の中で叫ぶ私に、
”もぉーー!あなたあかいっぱいよーー! もぉーー!あかすりで5キロやせたよー!冗談だよぉーーー! ダハハハーー! また来月きてよぉー もぉーー!”
と私の尻をピシャリと叩いて、去っていった。
私はこうして、全身がつるつるとなり、5キロ痩せたかはわからないが、最低でも300gくらいはやせた気がした。
私は、とりあえずぬるめのシャワーで体を流し、これでもかと言わんかのように、サウナと水風呂の往復を繰り返し、掃除のおばちゃんがうろうろする中、さっと着替えて、あかすりハウスを退室した。
外の空気がとても気持ち良かった私は、私のつるつる&300g減量を祝して、大好きなおでんを買いに、コンビニに直行した。
日本滞在中に食べまくった、から揚げやとんかつでメタボぎみな私は、約30分間ベッドでダラダラしているだけで、即席ダイエットに成功したことは、エステの大御所たかの友梨さんも頭があがらないであろう。
こうして私はシドニーにもどり、”ほら、触ってみて、つるつるでしょ??ねっ?ね??”と、周りの友人にむやみに私のつるつる感を体感させる日々が続き、シドニーの友人に無理やりあかすりを強制し、遂に友人のA子には、”あ、あんた、あかすり大使でもやれば・・?”と異名を得たのである。
ちなみに、私が落とした300g(?)は、帰りの機内で暴飲したビールとワインで確実に取り戻した事は言うまでもない。
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