子どもの自分を振り返って見る
インナーチャイルド(自分の中に内在する子どもの自分)についていろんな方とお話する機会があったのですが、ほとんどの方が親との関係に何らかの課題を抱えていて、その原因は子ども時代にさかのぼることが多いようでした。
私自身は、父親とうまくコミュニケーションができないな、父親からの愛情が薄いかなと思っていました。
父は、仕事一筋の人で、ほとんどの時間は家の近くにある作業場で過ごしていました。そして無口です。
余計な事は話しません。怒られる時の常套句は 「母さんを心配させるな」で、結局彼がどう思っているのか、
彼の考えは何なのかさっぱり分からなかった記憶があります。そこから私が持ってしまった考えが「父はあまり私の事には興味がないのかも知れない」でした。
そう思ってしまうと、もう素直に父親に対して甘えたり、自分の事を話したりもできなくなっていました。
その壁のようなものが消えたのは、ずっと後になってから、私が娘を出産するために里帰りした時でした。
無事に生まれてきた孫娘を見て両親は心から喜んでいました。その時にふと母が、私が生まれた時のことを話してくれたのです。
父がどれだけ献身的に母の妊娠を支えてくれたか、
そして私の誕生をどれほど喜んだか。
その時 私はなぜか鮮明に若い父の笑顔を思い浮かべることができ、出産後でもともと感情の波が激しい私の涙腺を刺激しました。
「そうだよね、もちろん、お父さんは 私の誕生を喜んでくれたし、その後もずっと 私や弟の成長を心の支えに仕事をがんばってくれていたんだ。その愛に気付かなくってごめん」。
父のその気持ちに心から感謝することができてからは、だいぶ自分の事を話せるようになりました。相変わらず父からの返事はそっけないのですが。でもそれは、彼が自分の気持ちや考えを表現するのが苦手なだけだったのだと、今は認識できるようになりました。
今回ご紹介する絵本は、3歳になったばかりの女の子が興味深く自分が赤ちゃんだった時のことをお母さんに尋ねて確認していくお話。子どもに読んであげると必ず、「私の時は どうだった?」と聞かれます。そして絵本の女の子と同じようにちょっと照れ笑いをした後、自分がいかに愛されて大きくなったかを感じてとても満たされた気持ちになるようです。
子ども達にとってはつい最近のことでも、成長するのに忙しくて忘れてしまっているんですね。
赤ちゃんだった時なんて、遠い昔だと思っている方もたまには自分が生まれた時の事を振り返ってみませんか? あなたの誕生をご両親はどれほど喜んだか。
私たちは、みんな愛されて生まれてきたのです。愛が分かりやすい形ではなかったとしても、その愛に感謝することができれば、今抱えている親との関係を改善する糸口が見つかるかも知れません。
自分の事をもっと認めてあげられるかも知れません。
そして‥‥
今、起こっている悲しい身内での殺人事件も減ってくるかも知れません。
<今週のお薦め本>
『わたしが あかちゃんだったとき』
キャスリーン・アンホールト 作/絵
角野 栄子 訳 (文化出版局)
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