日本で おなじみの読み聞かせ絵本と言えば、何を思い浮かべますか?
年代にもよると思いますが、今現在 子育て真っ最中の 20代後半~40代の方を対象に考えてみると、
「ぐりとぐら」シリーズ 中川 李枝子 作/ 山脇 百合子 絵 福音館書店
「いない いないばあ」 松谷 みよこ 作/ 瀬川 康男 絵 童心社
「だるまちゃん」シリーズ 加古 里子 作/絵 福音館書店
「ねないこ だれだ」 せな けいこ 作/絵 福音館書店
などでしょうか? これらは 大体 1960年代に出版され、現在でも重版されている ロングセラーの絵本たちです。
Wikipedia には、ミリオンセラー絵本一覧 というページがあり、その解説によると 絵本は読者人口が限られており、
マスメディアに取り上げられたりして、ベストセラーになるという形態よりも、年数をかけてじわじわと売れていき、
ミリオンセラーになるケースが多いそうです。 世代を超えて売れ続けている絵本とは、本当の意味での良書なのかも
知れません。 親が自分の子ども時代を思い出して、自分が好きだった本を子どもや孫の為にまた手に取る、それが
良い絵本が末長く愛される所以だと思います。
さて、そういった 世代を超えて愛されている絵本(ロングセラーの絵本)は もちろん世界各地に存在しています。
今回 お薦めする ”原書で読みたい絵本” は、そんな ロングセラー絵本の一つ
『Where the Wild Things Are』 by Maurice Sendak 邦題は 『かいじゅうたちのいるところ』 訳 神宮 輝夫 です。
この絵本も 1963年にアメリカで出版されて以来、世界各地で評価され、愛されてきました。1964年にはアメリカの優れた
児童書に贈られる コルデット賞を獲得しています。 しかし、作者のモーリス・センダックによれば、、、賞のことよりも
子どもがその絵本を好きか、どうかが大切なので、賞を取った絵本に固執するべきではないと語っています。
以下、作者のセンダックと ある母親との間で交わされたというこんな会話を引用します。
Mother: "Every time I read the book to my daughter, she screams."
(母: この絵本を読むたびに、娘は怖がるんですが・・・)
Sendak: "Then why did you continue reading it to her when she does not like it?"
(センダック: じゃあ なぜ、あなたは読み続けているんですか? 娘さんが好きではないのに。)
Mother: "She ought to, it’s a Caldecott book."
(母: 読むべきですよ! コルデット賞をとった本なんですから)
Sendak: "if a child does not like a book, throw it in the trash."
(センダック: もし子どもがその本を好きではないのだったら、、、ゴミ箱に捨ててください。)
そんな、はっきりとしたスタンスを持ったセンダック氏は この本でそれまでの絵本の概念を打ち破ることに成功したと
言えるかも知れません。 それまで 子ども向けの絵本というと、かわいい挿絵・やわらかい色調・教訓的なストーリー展開
が一般的でしたが、この本は違うのです。挿絵に出てくる怪獣たちはかわいくないし、色調もダーク、ストーリーと言えば、、
やんちゃな男の子が大暴れして、とうとう怪獣の国の王様に! という型破りな展開で、見事に子ども達の心をつかみ、
そして 親たちの共感を得ることにも成功しています。
ある書評によれば、この絵本は 子どもの怒りの感情に対して 精神分析的によく練られた素晴らしい作品の一つと
言われています。 私も 子どもの 大暴れしたい!という欲求を絵本の中で昇華させながらも 母親の優しさに戻って
くる安心感をうまく表現しているなぁと感じています。
神宮 輝夫さんによる翻訳版も素晴らしいのですが、やはり 原書で 声に出して読んでみることをお薦めします。
お薦めの絵本、知りたい絵本、その他 なんでも ehon@live.com.au まで(直美)