1月21日(月)チフリープラザ内ジャパンファウンデーション・ギャラリーにて「福田喜重:『刺繍』の世界 – 人間国宝が語る・魅せる「刺繍」の世界 - シドニー日本人会設立50周年記念事業」の一環である文化講演会が行われた。
会場の様子。細かな作業をする手元がディスプレイで映し出された。
司会進行をされる谷脇茂樹氏(日本人会)。
粗信仁総領事によるスピーチ。
会場中心でデモンストレーションを行うあべかずこ先生 。
福田喜重氏のスピーチ。刺繍の歴史や刺繍に使う材料・素材についてなどを語られた。
講演からの一部抜粋と展示会で展示されている刺繍作品
「刺繍は5000年の歴史を持つ文化ですが、制作作業は一本の針を上下するという非常に単純で根気の必要とするものです。発祥は中近東とされています。」
「西洋では主に生活用品・結婚式の装飾品・王侯貴族の衣装など生活を彩るものとして広がりましたが、東洋では仏教やイスラム教などの宗教と深い関わりを持って広まりました。」
「日本での刺繍の歴史は、5世紀に中国から仏教と共に伝来した際に始まります。そして8世紀後半になるとそれまで中国式だった刺繍が日本独自の文化として確立されていきます。」
中国式の刺繍
「日本でも仏教と刺繍は密接な関わりがあり、多くの刺繍による仏画が見つかっています。」
「現在の刺繍技術が開発されたのは1930年ごろです。しかし手作業による刺繍の後継者が年々少なくなっており、刺繍を後世に伝えることが難しくなってきているのが現状です。」
「刺繍に使う針は長さが22ミリから26ミリの特別短いものです。この針を作っている所も現在はたった2軒しかありません。」
「刺繍の大切なポイントは光沢です。私の工房では約2万色の糸を使用しています。」
スピーチの後は福田氏と会場とのQ&Aが行われた。
「手作業を伝える後継者が少ないというお話でしたが、テクノロジーを駆使してコンピューターで作品制作をされるという考えについてどう思われますか?」
との質問に、
「無機質なものには心の輝きは引き出せません。この刺繍というものは女性に向いているんです。女性は男性よりも優れた脳を持っていることから、心の葛藤やフラストレーションを多く持っているのですが、その心が刺繍をすることによって輝くのです。それはコンピューターには出来ないことです。」
と答えられた。
また自身が人間国宝とされていることに関しては、
「人間国宝というのは皮肉なもので、“この人ならきっと生涯現役でやるだろう”という理由で与えられるので、引退出来ないんです。“人間国宝となれば作品が高値で売買されてかなり懐が暖かくなるのだろう”と考える方もいらっしゃいますが、とんでもない!(笑)」
と愛嬌たっぷりに語られた。
会場は人間国宝福田氏の技術と知識、そして福田氏個人の人柄に触れ、大いに盛り上がった。
<展示会情報>
*展示された刺繍の写真は、その糸の素晴らしい光沢からデジタルカメラに写した際に色が実物と異なっているものがあります。ご了承下さい。また素晴らしいその作品の彩りをぜひ会場でご覧頂ければと思います。(JAMS.TV)
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