よく言われますが、シドニーとメルボルンはライバル関係にある都市のようで、なにかにつけ常に比較される運命にあります。東京と大阪のような関係でしょうか。
ご存知のようにオーストラリアは6つの州と二つの特別地域からなる連邦国家です。各州には州都と呼ばれる、いわば首都があります。1901年にオーストラリアがイギリスから独立して連邦国家を形成するまでは、各州はイギリスの自治植民地だったわけですから、その州都は首都の機能を持っていたんですね。
で、連邦結成となったのですが、首都として人口都市キャンベラが出来上がるまでは、暫定首都がメルボルンに置かれていました。その後もメルボルンは経済・金融の中心地として発展してきたのですが、次第にシドニーにその座を奪われてしまいます。
ただ、このような経緯があるために、メルボルンは大きく胸を張ってシドニーなんかに負けないぞ!という意識が強いんですね。
ほかの州都だってそれぞれ言いたいことがあります。シドニーは人口ばかり増えて、汚染がひどいし、雑多な人種が集まり、環境が悪くなっている。その点わが街は…、という意識です。特に西オーストラリア州の州都、パースは、独立の気概が強くて、普段から他州にのけ者扱いされているせいか、我が道を行く意識が強いようです。
このほど発表された「オーストラリアの都市別人気ランキング」によると、全8州都でシドニーは最下位でした。では、オーストラリアのベストシティは?
なんとアデレードでした。次いで、キャンベラ、メルボルン、パース、ホバート、ブリスベン、ダーウィンの順で、最下位はシドニーでした。(「My City: The People's Verdict」Property Council of Australia)
この調査は、各都市の住民に、自分の住む街を17の分野で評価してもらうもので、いわば住民自身が自分の街の居住快適度と政府の政策や都市計画を評価したものです。
居住快適度を100点満点で17項目を評価した8都市の順位は以下の通りです。
アデレード(南オーストラリア州)(63.4)
キャンベラ(首都特別地域)(62.3)
メルボルン(ビクトリア州)(60.9)
パース(西オーストラリア州)(60.6)
ホバート(タスマニア州)(60.5)
ブリスベン(クイーンズランド州)(60.2)
ダーウィン(北部準州)(55.8)
シドニー(ニュー・サウス・ウエールズ州)(55.1)
こうみると、ダーウィンとシドニーがほかの都市に比べて格段と住みづらい街だということが分かります。特にシドニーは、公共交通機関のサービス、交通渋滞、環境整備、住宅供給などで、住民からの支持を得られなかったんですね。
州都シドニーが最下位と聞いたケネーリーNSW州首相は、「だって、アデレードは人口120万人で、シドニーは450万よ。そんなにアデレードが良い街なら、どうしてもっとたくさんの人が住まないのよ」などと文句を言っていますが、ちょっと勘違いしてない。
シドニーは2000年のオリンピック以降、どんどん快適度は下がり続けています。原因は、インフラ整備や交通機関の改善に、政治家の公約がまったく実行されていないからです。電車やバスの公共交通機関のサービスにはほとんどの市民が不満を持っていますね。
シドニーがほかの都市に比べてランクが上だったのは、エンターテインメントと気候のふたつだけ。晴天の下、遊び呆けるだけのシドニーっ子というわけですね。当たっているかもしれません。
全体で評価が高かった項目は、「野外のレクリエーション環境」(平均で79%が満足)、「自然環境」(76%)、「文化・エンターテインメント」(74%)、「学校・教育環境」(69%)の4つです。これらについては各州政府が力を入れているのが分かります。
反対に評価の低かった分野は、「道路整備と交通渋滞」(39%)、「公共交通機関」(36%)、「環境整備・気候変動対策」(33%)、「住宅供給」(31%)です。これらの分野は市民の毎日の暮らしに直接おおきな影響を与えるものですから、評価の目も厳しくなるんでしょうね。
17の各項目で評価がトップの都市は、以下の通りです。
(1)野外のレクリエーション環境は、メルボルン
(2)自然環境は、ホバートとキャンベラ
(3)文化・エンターテインメントは、メルボルン
(4)学校・教育環境は、キャンベラ
(5)気候が良いのは、ブリスベンとパース
(6)バランスの取れた住宅環境は、アデレード
(7)雇用と経済・投資機会は、ダーウィン
(8)クリーンで汚染が低いのは、キャンベラ
(9)多様な人種が調和して暮らしているのは、ダーウィン
(10)アトラクティブな都市計画は、メルボルン
(11)充実した保健サービスは、メルボルン
(12)安全な都市は、ホバートとキャンベラ
(13)ほどよい暮らしを手に入れやすいのは、アデレード
(14)道路が整備され渋滞が少ないのは、ダーウィン
(15)公共交通機関が充実しているのは、ブリスベン
(16)環境整備・気候変動対策に力を入れているのは、アデレードとキャンベラ
(17)質が高くて手に入れやすい住宅を供給しているのは、アデレード
ということは、子どもを産むならメルボルン、行かせる学校はキャンベラで、働く場所はダーウィン、家を持つならアデレードで、安心して暮らすならホバートかな?
さて、みなさんの住む、自分の街の評価はどんなものですか?