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オーストラリアは移民で成り立っているという事実

移民の国オーストラリアは世界中から移民の人たちを受け入れてきましたが、差別がないかというとそんなことはなく、これまでも大きな反移民運動が起きています。

戦後、オーストラリア政府が移民の受け入れを始めてしばらくした頃、東欧からの移民に対して反対運動が起きましたし、その後、ベトナム戦争が終わって大量のボートピープルが生まれた際は、反ベトナム移民の運動が起きました。それから反アジア人移民の論争も二度起きています。

2001年の米国での同時多発テロからはイスラム系の移民に対する反対運動が起こっています。

先日も、亡命者を乗せた船が座礁して多くの亡命者が亡くなり、その葬儀の際に、野党自由党の影の移民大臣が、政府は葬儀参列者の費用を負担するなど、難民に対してお金をかけすぎていると批判しました。(その後、選挙民対策からか、すぐに自分の発言を謝罪しましたが…)

ここ最近、亡命者の乗せた船の接近や、難民収容施設の拡充など、ボートピープルの動きが大きく注目を受けています。さらに世界では中東での民主化を求める運動の拡大や、未だに終わらないアフガニスタンでの戦争や、世界各地での自爆テロなど、イスラム系の人たちが注目を集めたり、また槍玉に挙がることが非常に多くなっています。

そのため、どうしてもイスラム系の移民者に対する見方が厳しいものとなり、いきおい移民の受け入れに反対する論調が高まっています。

そんなおり、本日、移民省は新しい政府の多文化政策を発表しました。

The People of AUSTRALIA – Australia's Multicultural Policy」と題したガイドでは、改めてオーストラリア政府として多文化・多民族の共生社会を目指すということを確認しています。(参照サイト→ここをクリック

よく言われる、イスラムはテロリストだという誤った見方を捨て、たとえ一部にそのような過激な人がいたとしても、オーストラリア政府は差別のない開かれた移民政策を堅持していく、ということを主張しています。

二大政党政治の歴史の中で、与野党が互いに反対するのではなく、協調して同じ方向で政策を進めていくものがいくつかありますが、移民政策もそのひとつで、伝統的に与野党協調の移民政策が行なわれてきました。

今回の影の移民大臣の発言に対しても、同じ自由党の中から、差別的な移民政策はとるべきではないと反対する声が上がっています。

単純に、イスラムだからとか、……人だからとか、そんなステレオタイプな見方がいかに間違っているのかは、これまでアジア人として、また、古くは戦争で対立したものとして、日本人自身が差別を受けてきた体験から、はっきりと言えると思うのですが、「そうはいってもやっぱりイスラムの人たちは…」などと言ってしまうのが人間の悲しい性でしょうか。

政府の今回の新政策では、社会の結びつきと多様性の価値を深め、新たな諮問会議を設置して、全国的な反差別戦略の策定と「マルチカルチュラル(multicultural)」の言葉の再定義を行うとしています。

ハワード政権下では「マルチカルチュラル」の言葉を封印し、触らぬ神に祟りなし、という状況が続いてきました。前回、マルチカルチュラルに関しての政府見解が出されたのは2003年です。

はたして今回の政府見解の発表が、国民の間にある移民者に対する感情的な反発を和らげることができるのでしょうか。さまざまな意見があるのは確かですが、オーストラリアは移民の国として、これからも多民族・多文化の共生社会を目指さなければ、世界の中で存在感を示していくことができないのは確かだと思うのですが。

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