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女は強し、されどいまだに男社会の現実が

オーストラリアに来て驚いたことのひとつに、バスの運転手が女性だったことがあります。また、騎馬警官にきれいな女性がいたことも鮮明な記憶となっています。

女性の社会参加は、その当時の日本ではまだまだ少なく、女性は家庭にという男性中心の社会でしたし、さまざまな分野に女性が働く姿を見ていなかったものですから、オーストラリアで見た女性の姿にちょっとビックリした覚えがあります。

もちろんいまでは日本でも女性が働く姿は当たり前で、逆に女性が元気がよくて男性が頼りないほどですね。

今日は「国際婦人デー」(International Women's Day)です。「国際女性デー」、「国際女性の日」などとも呼ばれ、男女平等と女性の社会参加を促進するという日です。1904年3月8日にニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を要求してデモを起こしたのが起源とされています。その後、国連が「国際婦人年」の1975年3月8日にこの日を「国際婦人デー」と定めました。

オーストラリアは世界で最初に一日8時間労働の制度を導入したり、いち早く婦人参政権を採用するなど、民主的、進歩的な政策を実施してきました。そのため、女性の社会参加に関しても積極的に推進してきたようなイメージがありますが、意外とそうでもなく、植民地開拓という時代背景の中、男性中心の社会が形成されてきました。「マイトシップ」やパブ文化が象徴していますね。

そのためかどうか、女性が男性と同じ給与を求めて立ち上がってから100年になりますが、100年後の今でも男女の給与格差は無くなっていないのが現実です。フルタイムの女性は男性に比べて83%の金額しかもらっていませんし、パートタイムでは男性の3分の2でしかありません。

もちろん女性の社会参加は着実に進んできました。1979年には45歳〜54歳の女性の就労率は47%(男性は92%)だったのが、30年後の2009年には78%に増加。男性の88%に比べてもそれほど差がなくなって来ています。この年代の女性は子どもも大きくなって学校に通ったり家を出たりと、母親が職場に復帰できる状況になっているのが要因で、ほかの年代に比べて、平均勤務時間数が一番多いのが特徴です。

オーストラリアは熟練世代の女性の就労率ではOECD諸国の平均以上ですが、ニュージーランド(82%)や英国(80%)より低く、加盟33カ国のうち18位となっています。それでもその結果、女性社長や取締役の数も増えてきました。

今日のニュースでは、オーストラリアは女性が上級管理職に就く割合が世界の平均を上回っていると報じています。

オーストラリア国内の民間企業で上級管理職に就く女性の数が、2009年以来4%増加し、世界平均の20%を超える27%で、16位ということです。しかし、まだまだ改善の余地があり、チャイルドケアのサービス拡充と利用料金の値下げが女性の仕事復帰を促進し、上級管理職に就く女性の数を増やすとしています。

2010年の統計では、オーストラリア証券取引所に上場している200社のうち、女性のCEOは全体の3%、女性取締役は8.4%です。まだまだ少ないと言えますね。

そんななか、ブライス連邦総督が「国際婦人デー」を前に記者会見し、長年にわたる男性中心の社会はかなり強固で、なかなかその地位と特権を自ら手放そうとはしないと語り、「差別是正の運動を支持する」と話しました。また、是正のために企業は取締役に女性を一定数登用するという割当制の導入に賛成するとも述べました。

連邦総督自ら政治的な発言をするというのは異例なことです。それほど深刻でかつ重要な問題だということですね。連邦総督をはじめ、首相や3人の州首相が女性というオーストラリアは、かなり女性の社会参加が進んでいるとは言えます。

社会的に見てもこの100年で確かに女性の地位は向上してきましたが、まだまだ十分ではなく、ほんの少しの前進でしかないようです。例えば、子どもが9歳までの家庭では父親が家計の3分の2の収入を提供しています。そのため母親と比べて子どもと過ごす時間が少なくなります。また、赤ちゃんのおむつを取り替える父親は全体の4割で、6割はその時間がないのが現状です。(したがらない父親が多いのかもしれませんが…)  結果として、母親は父親の2倍の時間を育児や家事に費やしています。

この背景には、男性が一家の稼ぎ手だと考える男性が、2001年には30%だったのが、2005年には41%に増加しているという実態があります。女性も、専業主婦は子どもにとって良いことだと信じている率は、2001年には57%だったのが、2005年には74%にまで増加しています。

その結果、パートタイムの母親と長時間労働の父親という現実が生まれているんです。女性が大学まで進み、弁護士や会計士など専門職になれる現実がある一方で、それが子どもができるまでのつかの間の夢でしかないのもまた現実です。こうなると社会制度自体の変革が求められているのでしょうか。

連邦総督のいう「割当制」の導入も、その解決のひとつの方策かもしれませんね。

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