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アバウトな国オーストラリア

ユッケは好きでよく食べていましたが、食中毒で死者が出たニュースで、もう食べるのはやめようかなとちょっと思っています。

日本の焼き肉チェーン店での食中毒事件は、その後も広がりを見せていて、大きな問題になっています。日本のみならず、台湾でもユッケ(生肉)を出さないお店も出ています。

原発事故による放射能の危険が言われている中、今度は生肉食中毒と来ましたか。

事件の様相が次第に明らかとなってきて、日本では生肉が出回っていないということが分かりました。すべて加熱用肉なんですね。行政はお肉を生で食べさせる責任をそれぞれのお店に押し付けていたわけです。

結構いい加減な食品衛生行政だなと思いつつ、オーストラリアの現状はどうなのかなと不安になりました。それでも時々ニュースに出る、非常に不衛生で摘発されたレストランの記事や、知り合いのレストランオーナーが話していた抜き打ち検査の実態などを聞くと、まあそれなりに厳しく取り調べているようです。

日本の焼肉店での食中毒事件を思いだしたのは、先日、シドニーに移住している日本人の方数人と話し合う機会があった席でした。

その中の一人が「オーストラリアはアバウトな国ね」と言ったのです。私を含め、ほかの人全員が、「そりゃそうよ、オーストラリアはアバウトよね。いいかげんだもの」「そこが良いところでもあるのよね」などと話したのですが、当の本人は、「いいや、アバウト過ぎて、嫌になってきたの」と言います。

とにかく最近は、そのアバウトさが嫌になって、すぐにでも日本に帰りたいと言います。オーストラリアに来てまだ日が浅いのかなと思ったら、20数年住んでいる方です。

「だって、約束は守らないし、工事の人なんてみんないい加減だし、役所にしても問い合わせにみんな答えが違っているし…」。「そりゃそうよ。それがオーストラリアじゃない」とみな言ったのですが、最初はそんなものかと思っていたのが、次第に最近では、非常にストレスを感じるようになってきて、ついつい日本と比較して、日本に帰りたくなってきたそうです。

私たちは、みな、そのアバウトさが最初は確かに驚いて、常に日本と比較したりしていたけれど、結局そのアバウトさが肌に合うのか、居心地が良くなって、オーストラリアは快適だと思ってしまい、何十年と暮らしています。

「結局私たちって、もともとアバウトだからオーストラリアに来ることになって、しっかり根付いているのね」という結論に達したのですが、そこで食中毒事件が話題になりました。

「日本はしっかりしているようで、実はいい加減な国で、オーストラリアはいい加減なようで実はしっかりしている国なんだと思う」と一人の人が本質的なことを言いました。確かにそうかもしれません。今回の食中毒事件にしても、政府はこれまで全国にたくさんある焼肉店を検査して回るなんてことはできないということで、生肉調理の基準を決めて罰則もない指針として通達するだけでした。

「オーストラリアはいい加減なようでいて、人の生死に関わるようなことは結構厳しく取り締まっているのよ」ほかの人がこうも言いました。「消防法だかで、各ユニットに火災報知器の設置や消火器の設置などを定めているし、ちゃんと検査に来るわ」「食品衛生法も厳しいし、第一、検疫基準は世界一厳しいんじゃない」。

そう言われてみると確かにそうですね。一見アバウト、いい加減なようでいて、生命(いのち)に関係する点に関しては厳しい定めがあるようです。

子どもについてもさまざまな法律や規則で守っています。背景には子どもを一人の人間としてとらえる姿勢がありますし、子どもの人権を考えて親の行動を規制している部分があります。

なんだかこの日の話しは、「アバウトの国」を皆で見直す機会になってしまいました。

いま私たちは、「いい加減なようで実はしっかりしている国」のオーストラリアに暮らしている幸せを噛みしめながら、被災国日本を見つめています。

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