JETプログラムという外国青年派遣事業があります。日本の地方自治体に主に語学指導で派遣される外国の青年招致事業です。今回の東日本大震災でも多くのJETにより派遣された外国人が被災しました。2011年5月30日(月)に、日本に派遣された現役JETの眼から見た大震災の様子と仙台市の現状についての話を聞く会が、自治体国際化協会シドニー事務所(CLAIR Sydney)で行われました。
当日は、クライストチャーチ出身で仙台市のCIR国際交流員であるケイレブ・ウーリケさんが現地で体験した震災の様子をスライドを交えて話してくれました。彼は地震後も仙台市内に残り、市内のJETのアドバイザーとして、また、仙台国際センターのコーディネーターとしても在住外国人への相談・支援等に携わってきました。
話しの中で興味深かったのが2点あります。ひとつは「お金」です。
被災者支援としてさまざまな支援物資が送られてきます。もちろんありがたいことですが、なかには十分足りているものが続々と送られてきたり、余ったり、必要なものがなかったり、被災者のニーズと合わない現実がありました。そこで彼はこういう場合はなんといっても「お金」が一番と感じたと話してくれました。また、千羽鶴やカードが送られてくるけれど、はっきり言ってその処理に困ってしまうと言います。
もうひとつは「お役所仕事」でした。とにかく日本の役所はペーパーワークが多いと言います。支援の手続きをするにもいくつも部署を回って、難しい書類に記入するよう言われ、とにかく簡単にはいかないと言います。
会場からは、今年はじめのクイーンズランド州の洪水被害でのブリスベンでの実態が紹介されていました。政府の補助を受けるのに、避難所にセンターリンクと政府の機関の窓口が並び、住民はその場で必要な手続きがすぐできたというのです。書類にしても係員が全て記入してくれたり、非常に助かったようです。
それに引き換え日本の現実は…。
世界からは日本人の避難所での統制のとれた行動やガマンする精神に称賛の声が挙がりました。その後、原発事故の波紋が広がり、世界に迷惑をかける日本人になってしまいましたが、それでも日本人特有の集団主義の良い面が「さすが日本人だ」と世界の人たちに言わしめたということで、ちょっと誇らしくもありました。
ところが、その日本人特有の気質、集団心理、メダカ症候群としての民族性が、震災対応の足を引っ張っているという事実が浮かび上がってきたわけです。
例えば震災後、消防・警察・救急車両を優先的に通すために交通規制が行われました。そのために支援物資を運ぶ車両は、わざわざ通行許可証を得るために警察署まで取りに行かなければなりませんでした。すぐに改善されましたが、当初は遅れが生じてしまいました。
また、せっかく避難所で炊事ができるようになったのに保健所から衛生面で問題が起こると困るのでお湯を沸かすだけにせよとお達しがありカップヌードル生活に戻ってしまったり、米国からの支援に対して薬事法の規制が障害になったり、つまりこれまで万が一のことを考えて規制をどんどん作ってきたのが、今回のような危機的状況に際して逆に足を引っ張るようなことになっているのです。
実に日本的というか、臨機応変な対応ができていないのが現状です。全国、いや世界から集まった義捐金も被災者の手に渡っていないのです。全員に公平に分配するために、まず被災者がどこに何人いるか把握して、現金の受け取りには印鑑が必要と、実にお笑いのお役所仕事がされています。
従順、几帳面、集団行動の日本人が、危機的状況に際しては、ある面では統制のとれたパニックを起こさない行動をとるのですが、しかしその一方では、融通が利かず責任の所在が不明で、物事がたらい回しにされることが明らかになりました。
オーストラリアに住んでいて、そのいい加減さというか、融通が利くというか、結構アバウトな社会性は、こんな事態に直面するとその有り難さが改めて認識されて仕方がありません。
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