騙され続けた私　

私は幼い頃、色々な場面で実母に騙されて育ったものである。

母が私を騙した事は苦肉の策だったと言えよう。

 例えばどんな風に騙されたかと言うと、私が幼い頃、指先にさかむけが出来る度に、

半強制的に私の嫌いだったネギをどっさり食べさせられたり、　“牛乳を飲まないと池野めだかと同じ身長になるんだって”　などと、関西風に脅迫された事まであった。

他にも“スイカの種を食べたら、胃の中でスイカが育って、口からスイカのクルクルしたツタが出てくる”　とか、

“オージーよりは早く暗算が出来る”というくらいで、このご時世では“一番使えない資格”を保持しているんじゃないかと、今も悔いている。

 ちなみに私が初めてシドニーにやって来た時に、数少ない資格を履歴書に書こうと“そろばん２級取得”

私の７年間はあっさり無駄になったと言っても過言では無い。

当時の私は、”電卓があるのに、なんでこんなもの習うのかね？“と疑問視していたものだが、

そして何よりも、不良になる事だけは避けたかったと言うのが、正直なところだったかも知れない。

当時そろばん塾に通う事は、善人への登竜門だったのだ。

こうして私は幼少の頃から母に騙され続けたおかげで、”振り込め詐欺”などにあわない用心深いタイプに育ったんじゃないかと、一応母には感謝している。

それに加えて、当時私が大嫌いだったネギも食べれるようになったし、お好み焼きを頼む時は“ネギは多めね！“

などと言う様にまでなった。

ただ残念ながら“ネギの大量摂取の結果”はいまいちのようで、“やっぱりこれは騙されたのかね？”

とネギと母を疑う気持ちだけは病まないアラフォーの私である。

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