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ぴあの休刊とネット情報の時代

「ぴあ」がついに最終号を出して休刊することになりました。「ぴあ」って何?という人もいるでしょうね。むかしむかし、若い人たちを中心に人気のあった情報誌です。

1972年の創刊当初はミニコミ誌的な薄っぺらい体裁で、お世辞にも今日一般的な情報誌とはいえない代物でした。最近では部数の減少に歯止めがかからず、ついに39年の歴史を閉じました。ニュースでは、「昔はお世話になった」と懐かしむ声が伝えられ、また、いわば青春のシンボル雑誌の感があった「ぴあ」を惜しむ人が多いようです。

「ぴあ」は、映画、演劇、コンサート、スポーツなどのイベント情報を提供する情報誌として、創刊当時そのような専門情報誌のない中、若者たちに人気を得た雑誌です。それにイラストレーターの及川正通氏による表紙が人気でした。

その当時、映画やコンサート情報は新聞を通じて得ていましたが、新聞紙面に掲載されるような情報は大手や有名人のものばかりで、70年代当時、若者文化が勃興してきて、カウンターカルチャーやアングラ、ミニコミ、小劇場、ライブハウスなどが台頭する時代でした。そんな時代背景に生まれるべくして生まれてきたのが「ぴあ」だったというわけです。

いわば、ぴあのおかげで若者たちは、ジャンジャンや銀巴里、紅テントや黒テント、ATGや日活ロマンポルノ、などの情報を入手して、イソイソと出かけたものです。

休刊の背景には部数減がありますが、その原因はもちろんインターネットの普及です。さまざまなイベント情報がネットで簡単に手に入れられるようになり、情報誌を買って読むという時代ではなくなったということでしょうか。

このインターネットの隆盛は、ぴあのような情報誌に限らず、さまざまな活字媒体の廃刊・休刊の原因となっています。昨年2010年には情報誌では「東京ウォーカー」の姉妹誌、「千葉ウォーカー」や「神戸ウォーカー」が休刊。ぴあの中部版や関西版も休刊しました。そのほか「学習」「科学」「フォーサイト」「格闘技通信」「スコラ」などがなくなりました。

2009年には、「マミイ」「英語青年」「就職ジャーナル」「広告批評」「エスクァイア日本版」「諸君!」「Cawaii!」「マネージャパン」「DOLL」「スタジオボイス」「マリ・クレール」「フォーブス」「小学五年生」「小学六年生」が、2008年には、「週刊ヤングサンデー」「論座」「ロードショー」「月刊PLAYBOY日本版」「月刊現代」「読売ウイークリー」が、2007年には「ダカーポ」というように、ここ数年で懐かしい雑誌がなくなっていきました。

「活字媒体からネットの時代」というわけでしょうか。なんだか寂しい気持ちがありますが、雑誌の消滅とともにその時代の文化や社会がなくなっていくような気がするからでしょうね。

「ぴあ」は、私はそんなに好きな雑誌ではありませんでした。どうしてかというと、さまざまな情報が横並びに一覧されていたからです。そこには大小や有名無名にかかわらず、何でも一緒にずらっと情報が並んでいたので、情報の強弱がなかったのです。

それはもちろんメリットでもありました。小劇場やテント公演にしてみれば、大劇場の有名演目と一緒に並んでいるわけですから、なんだか同じ地位に立っているような気分でよかったのでしょう。私にしてみれば、多少の強弱がなければ何をどう見ればいいのか分からなくなってしまうので、ちょっと不満でした。

でもこれって、今日のインターネットの世界と相通じるものがありますね。スクリーン上に並ぶさまざまな情報はみな同じように並んで閲覧でき、そこには情報の強弱が感じられません。誌面による一覧性から、スクリーン上の一覧性へと、その簡便さは時代とともにネットの世界に移行してきました。

でも、同じ一覧性でも、前者には総覧性があります。異なるジャンルでもページをめくる毎、同じジャンルでも情報毎に異なる情報が書かれていて、好むと好まざるとにかかわらず、目にしてしまうことになります。でも後者には総覧性がありません。最初からグーグル検索で一挙に好みの情報に飛び込むわけですから、そりゃそうです。異なる情報といってもかなり同質、同類の情報ばかりが目に入ります。

こうなるとネットの世界はかなり狭い範囲での情報のやり取りということになりますね。そんな特徴がこの先どういう展開を見せてくれるのか興味があります。

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