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3.11以来、東京電力に対する非難の嵐が吹き荒れています。かつては東京電力といえばあこがれの就職先で、高給なエリート社員の集まりという職場でした。
今から14年前、「東電OL殺害事件」という世間を騒がした事件がありました。東京電力のエリート・キャリアウーマンが、仕事を終えた後、街に出て売春をしていたというのです。そして絞殺死体で見つかったのですが、東電エリート社員の夜の顔ということで週刊誌ネタとなって大きく騒がれました。
これも被害者が東京電力のエリート社員だったからこそ大きなニュースになったわけです。
ところで、この事件ではネパール人が逮捕されました。被告は一貫して無実を訴え、一審の東京地裁は無罪判決を出したのですが、控訴審の東京高裁では逆転して無期懲役の判決が下りました。
ところが、今年、被害者の体から採取された精液のDNA鑑定の結果、精液はこのネパール人男性のものではなく、そのDNA型が殺害現場に残された体毛と一致したことがわかり、ほかに犯人がいる可能性が高くなりました。
当時の鑑定技術では微量な精液のDNA鑑定が難しく、今日まで分析できませんでした。以前、米国で次々と服役囚が無実の罪で収監されていたことが明らかになり、釈放されるということが続きましたが、これも最新のDNA鑑定技術のおかげでした。
ところで、あなたは99.9%と1600分の1の違いを答えられますか?
6年前に元恋人を殺害したとしてトルコ系オーストラリア人が逮捕された殺人事件で、陪審員は有罪の評決を下しました。逮捕の決めては被害者の爪に残された髪の毛から採取されたミトコンドリアDNAの鑑定でした。
鑑定の結果、1,600人に一人の確率で同型のミトコンドリアDNAが存在するということでした。逆にいうと、犯人の可能性は、1600分の1つまり99.9%だということです。
同じ数字なのですが、「1600分の1」と聞く場合と、「99.9%」と聞く場合では、その印象は大きく異なります。99.9%なんてほとんど明白に犯人だと決めつけられる数字ですね。
被告の弁護人もそのことを強調して、特に陪審員に与える印象が大きいということで、「99.9%」という数字を使わず、使うなら「1600分の1」とすべきだと主張したのです。
オーストラリアの法廷ではこれまで「パーセンテージ」を使うのが慣例でしたが、今回の主張を受けて、裁判所が判決の見直しや控訴を認めるのかどうか注目されています。
技術の進展で、過去の犯罪がえん罪事件として認定されて、無実の人が救われるのは大事なことですが、DNA鑑定に潜む判定の難しさ、科学を万能だと決めつけることの危険性も、同時に知っておかないと、思わぬ結果を生むことにもなりかねません。
いまではDNAスプレーを使って、他人のDNAに成り済ますこともできるようです。こうなるとDNA万能神話に頼っていては大変なことになります。ほかにもさまざまな物証などを検討して全体的な判断が必要になるのでしょうが、陪審員に課された役割も非常に大きくなってきますね。
(水越)
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