日本では天下り批判がかまびすしく、役所を辞めて退職金をもらって天下りし、その天下り先を辞めると、また退職金をもらい…と、官僚のうらやましい待遇に批判が集中しています。
官僚に限らず企業でも、会社が何か問題を起こしてトップが引責辞任した場合でも退職金が支払われた、などと週刊誌のネタになってしまいます。
この退職金という制度、オーストラリアではそういう考えがありませんね。年俸いくらということがあるだけで、辞めた時点で勤続年数に応じた退職金が出るということはほとんどありません。
ということは、オーストラリアでは、日本のように退職金制度や定年制度がないので、ひとつの会社に長年勤務するという人はかなり少ないようです。会社に入っても数年で転職したり、キャリアアップや高給を目当てに、会社を替える人がほとんどです。
退職金ではないですが、オーストラリアの雇用制度の中に「Long-service leave」というものがあります。永年勤続報賞のようなもので、その会社に10年間勤務すると、年次有給休暇とは別に、一定期間の有給休暇が与えられるというものです。場合によっては、その休暇の買い上げを会社が行ない、お金で支払われる場合もあります。そうなると、退職金のようなものになります。
この制度、会社としては長年継続して勤務してくれた社員の、いわばロイヤルティーに対してのご褒美という考えです。ですから数年で転職してしまう社員に対しては権利がないことになります。
そこで労働組合では、現実的に今日の労働状況、雇用状況をふまえると、労働者が転職を重ねるのは当たり前で、このような現状にあった制度改革が必要だと主張しています。
現行のLong-service leave制度が導入されたのは1955年です。その当時は多くの労働者がひとつの会社に働き続けるという労働環境だったようです。それがいまでは多くの労働者が数年で転職する状況になっています。調査によると、ニュー・サウス・ウェールズ州では、労働者の約20%が毎年転職しています。また170万人が、頻繁に転職しているため、Long-service leaveが適用にならないといわれています。
そこで、数年で転職しても、年数に応じて日割り計算された有給休暇を保持できるようにして、結果的に数社で勤務したとしても、合計で10年以上勤務になった場合、同様の永年勤続休暇が与えられるようにしようとの案がだされています。
実際に、清掃業界では、雇用主が社員の給与の1.7%を業界のファンドに積み立てて、10年後に8.66週間の有給休暇を取得できるというものです。社員は同じ業界ならどの会社に勤務しても、勤務年数を積み上げることができるので、転職を重ねても問題ないというわけです。
ひとつの会社に長年勤務してその会社に忠誠を誓う…、それに対して会社から社員へのご褒美として、退職金だったり、永年勤続の有給休暇となったりするわけですが、それが雇用環境の変化によって、制度の改正が必要だという声につながっているようです。
オーストラリアでも日本でも非正社員が増えています。もはや永年勤続はきわめてまれなケースになってくるのでしょうね。さて、そうなると、会社への忠誠をどうはかればよいのでしょうか。
(水越)
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