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古い移民と新しい観光客

移民の国オーストラリアには、特に1940年代以降、世界各国から移住者がやってきて、今日のオーストラリアを作り上げてきました。

シドニーでは、マリックビルやニュータウンにギリシャ人が、ライカートやハバーフィールド、フェアフィールドにはイタリア人が、カブラマッタにはベトナム人が、バンクスタウンにはレバノン人が多く住み、彼らの特色ある街を作ってきました。最近では韓国人や中国人がケンプシーやチャツウッドなどに数多く見られます。

その結果最近では、植民開拓以来の宗主国としての地位を保持してきた英国人はもちろん、オーストラリアの移民の歴史を担ってきたアイルランド人やギリシャ人の影が薄くなり、人口に占める割合も小さくなってきています。こうなると、近い将来、オーストラリアはアジア人によって占拠されてしまうのではないかと思うほどです。

ところが、そんな杞憂を打ち消すような現象も現れています。なんと、アイルランドやギリシャからの移民がまた増えてきているのです。

そうです、ここ最近のユーロ危機が原因です。ほとんど経済破綻しているアイルランドやギリシャの国を捨てて、なんだか景気のいいオーストラリア目指して、伝統的な移民国から人々がやってきているんです。

昨年度17万人の移民を受け入れたオーストラリアですが、今年は18万5000人を受け入れる予定です。さらに加えて、毎年1万4000人の難民を受け入れています。

このままユーロの経済危機が深まっていくと、当然、国外に出て行く人が増えます。他国に移住する人も増えるでしょう。なかには経済難民として溢れ出てしまう人たちもいます。

オーストラリアがそんな人たちの受け皿として広く門戸を開くということはないにしても、如何せん、古くからの移民の国として、ヨーロッパの国々から多くの移民を受け入れてきました。オーストラリアに住むその人たちが、母国の親戚・友人・知人を呼び寄せるのは自然なことです。

こうしてしばらくはヨーロッパからの移民数が増加するのではないかと思われます。

その一方、アジアからの移民が増加しているのも事実です。やはり経済的に大きく成長して、オーストラリアに投資やビジネスでやってくる中国人が勢い増えているのは、皆さん感じていることでしょう。まさにアジアにおけるオーストラリアブームです。

街を歩いていて、数多くの中国人観光客を目にしますが、経済的に余裕のある中国のミドルクラスが大挙としてやってきているのです。

昨年度の中国人観光客による経済効果は、約31億ドルだといいます。これが2020年には60億ドルにまでなると予想されています。昨年度、オーストラリアを訪れた海外からの観光客は前年度比4.4%増加の約590万人で、そのうち4人に1人が中国人です。

こうなるとオーストラリアの政府観光局もアジア市場に期待を寄せるのは当然です。昨年は台湾のポップスターを起用して、観光キャンペーン用のDVDを制作しました。

いまや中国をはじめ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、そしてインドがオーストラリア観光のメインターゲットなんです。

さて、ヨーロッパからの古い移民者の復活と、躍進著しいアジアからの新しい観光客…。ますます多文化、多民族化していくオーストラリアにあって、私たち日本人の影は非常に薄くなっている気がします。そしてその影も、今回の日本の捕鯨船とシーシェパードの騒動で、ますます日本への非難が高まって一挙に吹き飛ばされてしまった感がします。

(水越)

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