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党首が決まっても、続く確執?

労働党の内紛再燃。最終決着になるのか?

オーストラリア政府与党の労働党の党首選が、今日、27日(月)10時に行なわれます。与党労働党の党首ですから、連邦首相選びでもあります。

今回、ジュリア・ギラード首相が、前首相のケビン・ラッド氏を支持する勢力に対して、党首選挙を実施して決着をつけようとしたわけです。

そもそも5年前、2007年11月の総選挙で大勝して、それまでのジョン・ハワード保守連合政権を打ち負かしたラッド氏に対しては、多くの国民が支持して、労働党の政権返り咲きの立役者として人気を不動のものにしたわけです。

ところが、当初は京都議定書の批准や、アボリジニの“盗まれた世代”への謝罪など、その明確な改革姿勢が、2010年4月の地球温暖化対策での公約だった排出量取引制度の先送りや、唐突な資源超過利潤税導入の発表など、その政策姿勢や政権運営に党内からも疑問が生じてきて、ついに2010年6月の党内クーデターによって党首(首相)の座を引きずりおろされてしまいました。

そこで新党首に就任したギラード氏は、オーストラリア史上初の女性首相として華々しく登場したのですが、直後の8月に行なった総選挙では過半数をとれず、労働党も保守連合も単独過半数を得られずに、70年ぶりの“ハング・パーラメント”(宙ぶらりんの議会)となってしまいました。

その後ギラード政権は、グリーンズ(緑の党)や無所属議員の協力を得てなんとか政権運営を行なっていますが、数的優位にあるわけではなく、常にグリーンズや無所属議員の意向を気にしながら法案提出をせざるを得ない状況が続いています。

再燃してきた確執

そんな中、2011年11月から、ラッド前首相を支持する議員によるギラード首相批判や、逆に、ラッド氏に対する中傷などが公然とささやかれるようになってきました。その中で、2010年6月の党内クーデターの真相や、ギラード首相支持の閣僚など党の重鎮からラッド氏を批判する声が高まり、加えて、ポーカーマシン規制法案の提案でギラード首相に協力していた無所属議員が、法案が骨抜きにされたことで支持を撤回し、ラッド氏を支持するなど、さまざまな動きが出てきていました。

こんな党内での批判の動きがお互いの陣営を中傷する騒ぎにまでなり、これまで外務大臣として閣内に入り、ギラード首相に協力してきたラッド氏ですが、党内の批判に対してこれ以上黙っていられないとばかりに、突然、外相を辞任すると発表しました。すかさずギラード首相は党首選挙を発表して、これでお互い決着を付けようとしたわけです。

はたして決着がつくの

さて、これで党内クーデター以来の確執にけりがつくことになるのでしょうか?

世論調査では、労働党の党首としてふさわしいのは、ラッド氏(58%)、ギラード氏(34%)と、圧倒的にラッド人気が高いのです。また、ギラード氏の首相としての資質に対しては、36%がふさわしいと答え、60%が不適としています。

ところが、労働党は党首交代すべきか?という質問には、ラッド氏にすべきが48%で、ギラード氏のままで良いが47%と、拮抗しています。

なお、労働党の上下両院議員は103人いるのですが、一人、出産直後のために欠席ですので、102人による投票で党首選が行なわれます。いまのところ新聞報道によると、68人がギラード支持、30人がラッド支持、5人が未定ということです。ギラード首相としては、ラッド氏が1/3の35人以上の議員の支持を得ないように多数派工作をしたいところです。1/3の議員がラッド氏を支持すると、今後の党や政権運営に支障を来し、来年予定されている総選挙前に、また党首選びが起きるのではないかと懸念しているからです。

ギラード陣営としては、なんとか今回の党首選でラッド氏を負かして、再びクーデター騒ぎが起きないようにしたいわけです。

ただし、世論調査では、労働党と保守連合の支持率は、労働党(43%)、保守連合(57%)と、このところ労働党の支持が落ちていて、このままギラード氏が首相を続けていては、次回総選挙では負けるのではないかという懸念があるのも確かです。

はたして、各議員がどう判断するのか、注目されます。

今後の政権運営は?

一応、ギラード氏が選出されて引き続き首相を続けるだろうと予想されていますが、どちらにしても労働党の内紛劇は、今後の労働党の評判を落とす形になって、総選挙は厳しい戦いになるだろうと見られています。

ところで、投票議員数が102となったことで、結果として51対51になる可能性も生じてきました。この場合議長が決めるというわけにはいかず、そうなった場合はくじ引きだそうです。仮にそうなると選ばれた首相はいつまでも「くじ引きで選ばれた首相」なんて言われてしまい、可哀想ですね。

国民は、もちろん注目して今日の党首選にくじ付けになると思いますが、どうやら政治への関心の高まりではなく、どちらが党首に選ばれるかの賭けに注目しているようです。

オッズはいまのところ、ジュリア・ギラード($1.02)、ケビン・ラッド($11.00)です。そのほか、何票獲得できるか? ラッドは当日どの色のネクタイを締めてくるか? ギラードは当日どんな色のジャケットを着てくるか? なんていう賭けもあるそうです。

ギャンブル好きのオーストラリアらしい党首選ですね。

(水越)

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